人材育成。ロシア現地法人で働くにあたって、駐在員に課せられた重要な任務の一つ。私にとって衝撃的だったのは、
「本人が成長したいと思っていても成長できない人がいる」この事実。
人は自分に意思があれって努力すれば成長できる、この信念を持っていただけにこれは衝撃的でした。
ロシアに来る前に勤めていた会社の総務スタッフにいた先輩男性社員。業務に関する質問1つを別部署の男性に電話で尋ねたあと、1時間もだらだらと仕事に関係の無い話を続ける男性。「別にいいじゃないですか~」「しょうもないっすね~」「なんで明日できるのに今日やんなきゃいけないんですか?」を口癖のように連発する人でした。その会話が終わったあとに「1時間も電話で会話する内容ですか?」とだけ一言発言したものの、当時はまだ強く言える勇気もなく会話途中で口を挟むことができませんでした。職場を離れる最後の時、タイトル「仕事の心得」と銘打ち、A4で3枚ほどの彼宛に書きました。封筒に入れて「これを読んでください」と言って渡しました。私の一方的な主張であり効果はなかったはず。もう随分昔の話です。この男性には、明らかに成長したい、との意思はありませんでした。あのときに「人を変えようと思ってはダメなんだ。逆に自分が人を変えられないことのストレスで病んでしまう…」と学習し、周りの友人からも諭されて納得した真実。ここロシアでは、成長したい、と本人が望んでいるのにできない。こんな真実があるのか、と。それを否定しようと一生懸命に取り組んできたのですが、どうやら真実のようです。
成長の阻害要因
・その人には硬い硬い信念が根付いており、それから外れることをアドバイスされても聞く耳をもたない
・その信念が自分の成長阻害の原因である自身の変えるべき点を認めたくない、認められない頑固さ(自分が何かしら人よりも上であることを認めさせたい)
・周りからのアドバイスに対して、その正しさよりも、その中の細かい点の誤りを逐一見つけては反論し、まったく先に進まない(アドバイスを行う側の私について言えば、完璧ではないので細かい部分でのいい間違いや不明確な点はあります。といっても伝えたい芯にゆらぎはないので、主要ポイントを掴んでくれればよいだけなのですが・・・)
・かといって自分の力だけでは成長するために何をしてよいのか分からず途方にくれる
・周りの人間も関わりを持ちたくないゆえにその本人の改善すべき点を伝えることを止めてしまう。本人は周りから指摘がないために自分に問題はないのだ、と思い込んでいる(周囲の中での自分の立ち位置や自分が回りとのコミュニケーションにおいて問題を抱えているとの自覚力の欠如)
あるいは
・ほんとうの馬鹿、
それとも
・「私は成長したい」と口だけで言っている、本心は別に成長しなくても、なんて思っている
のかもしれません。
大切なのは必要なポジションに必要な能力を備えた適切な人材を据えること
会社がポジションに任命したスタッフが必要な能力を持っているのかを判断するのは、かなり難しい。口で言うほど、頭で分かっているほどに簡単ではありません。日々起こる種々の課題への取り組みと結果を見る中で分かってくるもので、試用期間3ヶ月(マネジメント層、経理責任者は除く※彼らの試用期間は6ヶ月)の中ではっきりと分かるものではない、というのが私の結論です。だからこそ、試用期間中は出来る限りスタッフの能力を見極めるために深く関わってゆくことが大切なのだな、と過去の採用の痛い失敗経験を踏まえて学んでいます。
成長できるレベルは人それぞれに応じて違う – その判断を正確に、迅速に
同じ時間が皆に平等に与えられているのに人によって成長の度合いが異なる。これは事実。ただ、せめて各自のできるところで日々成長目指そうよ、って思います。でも、毎日オフィスに来て同じ仕事のパターンを繰り返し、お昼にみんなで楽しく笑って過ごし、終業時間がきたら“Пока~(パカ~:またね~)”といって帰っていく。みんな若いんだし、もっと自分の可能性を信じようよ、って思います。ただ、きっと皆持っているパイの大きさは同じとすると、そのような人は仕事以外のことにより多くの情熱を捧げていて、私の見えない部分で、その分野では飛び切りの成果を出しているのかもしれません。そうはいっても、昼食時間の1時間も含めると9時間も会社に人生を捧げるわけです。その取り返しのつかない時間を毎日何かしら1つでも新しいことを学ぼうという思いで過ごせればもっと充実した時間を過ごせるだろうに…と。
マネジメントに必要なことは、それぞれの部下の強さと弱さ、能力の限界に対する正しい判断力。それに応じて業務配分を行うこと。そして、その判断に至るまでの時間をいかに最小限にできるか。これが大切なスキルなんだと考えています。