私がロシアに来て人事を経験してみて、決して多くはありませんが自分なりに手にとってよかったと思う本をいくつかあげてみました。
戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ(八木洋介 金井壽宏)
人事という仕事の全体の概要と人事として取り組むべき仕事を掴むにあたり大変勉強になりました。この本にも出てきますが、GEで大変有名であったナインブロックの評価制度が今では廃止されています。そんな風に、過去には多くの方が高く評価していた制度が時代と共にその地位を失っていくという事実も人事制度の面白い部分だと感じています。
ワーク・ルールズ! / WORK RULES! (Google人事担当上級副社長 Laszlo Bock)
数年前に一時帰国して本屋に入った時、棚積みされているsyい本が目に飛び込んできました。手に取ってパラパラとめくってみて…。まだ人事とはなんぞや?という初歩の初歩であった私には衝撃を受けた内容でした。その後もロシアに戻ってからもどれだけ読み返したことでしょうか。この本がどれだけ良かったかを人に説明すると、「でもそれはGoogleのような会社だから昨日するのではないの?」と指摘されました。それも確かかもしれません。それでもこの本にある幾つかの内容を実際に実務に取り入れたことは良い経験tのなりました。
人を動かす / How to win Friends and Influence people (Dale Carnegie)
この本はビジネスパーソンにとっては誰しもが聞いたことがある一冊でしょうか。
ずっと昔に読んだきり、すっかり忘れてしまっていましたが、今の自宅隔離が始まる前にオフィスの棚を見返して見つけました。これを機会に改めて読み返しています。人としてありたい姿でいるための原則が載っていて、このジャンルの本はありふれていますが、この本一冊で十分ではないでしょうか。
戦略人事マネジャー / Roadmap to strategic HR: Turning a Great idea into a business reality ( Ralph Christensen)
この本の通りに出来て入れば、何も言うことはありません…人事の役割の在り方と将来的な目標を見据えるうえで勉強になりました。私の勤める会社は戦略人事なんていう以前に従業員の出社時間の管理、社内の書類の整備、身の回りの整頓をすること…そんな初歩的なレベルからスタートですが。 モスクワの多くの日系企業は設立十周年を越えたくらいの若い、小中規模のものが中心です。大企業から駐在員としてやって来ると日本にいた時の感覚で物事を考えてしまう危険があるかもしれません。どんなに本社の制度は立派でも、現実のいまここにいるモスクワの会社はあくまで中小企業であることに変わりはありません。その規模に応じたその会社の成長度合いに応じた人事制度を取り入れることが重要である。それを失敗から学んできました。人事制度は同じことであっても、この会社では正しい。しかし別の会社では間違いというケースが生じます。本に書かれている”正解”をただ受け止めるのでなく、まずは自分の会社の実態をよく把握し、その成熟度合いに応じた相応しい制度が何かを理解すること。それを取り入れて段階的に向上させてゆくこと、この取り組みが重要だな、と。この本について言えば、人事精度のベースが確立された大企業の人事担当者に一層必要な内容であって、私が働くモスクワのような小さな会社には程遠い内容でした。ただし、将来、このような人事制度をこの会社に作ってもらいたい、それがあなたたちの任務ですよ、という願いを込めてロシア人スタッフにも訴えてきましたが、まだまだこれからです。
MBAの人材戦略 / HUMAN RESOURCE CHAMPIONS (by David Ulrich)
(なぜ、この英語のタイトルがこのような日本語のタイトルとなるのか分かりませんでした)
具体的な会社事例が取り上げられている点が有益でした。この本に対する印象も上記の本に対するものと同じです。
なぜか、「仕事がうまくいく人」の習慣4.0 / The Personal Efficiency Program 4th Edition (Kerry Gleeson) これまたひどい日本語訳…と思うのは私だけでしょうか。といってもこれに惹かれて購入したのが私なのですが…
数多くの技術的なノウハウ本を買っては全く身につかず無駄にしてきた私ですが、この本はずっと昔に購入し、その内容を気に入っていて今でも時々目を通しています。ロシア語の翻訳版もモスクワで見つけたので、マネジャーの数だけ購入して全員にプレゼントをしました。きっと役立ってくれていれば嬉しいです。
計画を立てるもののそれに満足しているだけであった私にとって「とにかくすぐやる」ということをこの本を読んで学びました。つべこべ言わずとにかくやること。今でこそ改善されていますが、昔はひどいものでした。他にも週ごとの計画を立てること、他人とのコミュニケーションの取り方。新しいことでも21日間続けるとそれが習慣となること。今こうやって書きながら見返していても改めて学ぶことがあります。書いてあることは決して特別なことではなく原理原則ですが、これを実行し継続することが難しいですね。また、ここでは詳しくは書きませんが、仕事スキルとして他に重要なこととして、このような原則を学んだ後は日々自分のやり方を見つけるために変化を付けて改善してゆくこと、自分の業務に要する時間の見積精度能力を高めること、その仕事をやると決めたらやりきること。これらが仕事をする上で大切だな、と考えています。
HR в борьбе за конкурентное преимуществе (Дейв Ульрих и Уэйн Брокбэнк)
この本David Ulrich氏の本の翻訳版で、中身は大企業向けのような印象です。戦略的な人事部を作り上げてゆく上で必要な内容がぎっしりとロシア語で書かれています。本屋で色々人事に関する書類を漁ってみたなかで、非常に硬い内容ですがこのような本もあってはよいではないかと思いロシア人スタッフにプレゼントしたものの誰も読んでくれませんでした、いまのところは。
Год с Питером Друкером 52 недели тренировки эффективного лидера (Джозеф Мачиариелло)
この本は、ピーター・ドラッカーの教えを毎週1つずつ学習し、1年かけてリーダーとして成長しよう、という試みの本です。コンセプトが面白くて購入してみました。スタッフにぜひやろうよ、と言ったのですが…。いつかは必ず、ロシア人スタッフの力によって取り組んでくれる日がくることを願っています。
ずっとロシアに長いこといるために日本の書店の様子を深く知りませんが、私が思うに現在出版される人事関連の本は技術的な部分に特化しているものが多く、どれだけたくさんの本を読んでも、お金と時間をかける割に得られるものが少ないのではないか、というのが私の考えです。むしろ、古くから存在する古典的なビジネス書に絞り、その内容を反芻するほうが効果的であろう、と私は考えています。
また”人事”という仕事は決して人事部に所属しているから、人事部の人間の仕事です、というのは誤りで、どこにいて働こうが必ず仕事は人があって回るもの。一対一の関係が始まるところから人事という仕事はスタートするのであり、決して人事部のみが担う仕事ではないということです。しかし、人事部は会社全体の仕組み作りを整える上で大きなイニシアチブが取れる部署であり、全体を巻き込んでいく上で重要な要であるということは事実です。私の経験からすれば、ロシアで長いこと人事の仕事に携わってきましたが、全体を巻き込む力や意欲を持ったスタッフに出会えることはなかなかそう多くありませんでした(それは会社が採用できる給与のレベルや採用を決定した会社側の問題でもあるのですが)。人事部としてロシアの細かな手間暇のかかる書類作り、最低限の制度作りをやるものの、それを運用していくのは各部門のマネジャーの仕事であって私の仕事ではない、私は人事であるから他の部門の仕事を把握することまでは仕事ではないです、といった線引きをするスタッフが多い印象です。といっても決して拒絶するわけではなく、線引きがある状況から徐々に意識を解いてゆく過程を経て、ようやく戦略的人事、といえる分野のスタートラインに立てるのかもしれません。他の部署が何で困っていて、どんなことをしてあげればより貢献できるだろうか?それは各部門の人や仕事内容をある程度理解できないことには提案できないものですから…。
ロシアは、日本でも同様ですが、会社の人材に関する本は先進的な欧米からの本が多いです。日本は多くの日本人による著書が選択肢として豊富に用意されていますが、ロシア人著者による人材関係の本はずいぶん遅れをとっています。そんなことから、ロシアで人材関係の良書を探そうとすると数が限られること、そもそもこの分野の本自体が少ない。結果として、ロシア人スタッフと人事に関する情報共有、議論をするとなると、英語の文献をオンラインで購入する、Youtubeにある動画をロシア人スタッフと共有することも大切だと思います。母国語ではないため英語で説明する言葉は完全に各人の心に届かないものです。ですから、ロシア人の人事スタッフがどれだけ成長し、周りと共に会社の人事制度を作り上げていけるか、そして全従業員に母国語のロシア語浸透させて行けるか、これが本当の意味でのこれからのチャレンジです。