”Onliner” https://www.youtube.com/user/onlinerby
最近お気に入りのYoutubeチャンネルです。チャンネルの説明文にはこうあります。「こんにちは、これはOnlinerチャンネルです。 「小さな」人の運命について物語る映画を作っています。 群衆の中に隠れてしまって見えないかもしれないけれど、彼らのストーリーは常に痛々しいほど自分たちに親しみやすく、近しいもの。 私たちはそのことについて考えたことや、切望したこと、問題にぶつかったり、克服してきたり、できれば避けたいと思っていることがあります。 これらすべては私たちの映画にあります。
このチャンネルでは上記のテーマに相応しい登場人物が取り上げられていて、その内容は重くも感じられます。しかし、そこで話される話を聞いていると、単にロシアと聞いて全く異なる世界、外国の人々というイメージが変わって、私たちは皆同じ人間で同じようなことを感じ、考え、同じように悲しみを感じ、それを乗り越えて今を生きている。そんな姿を見るとロシアが今までよりもずっと近い世界に感じるかもしれません。
駐在している頃は、職場のロシア人スタッフとは仕事の話がメインで、なかなかお互いの本音を語り合う機会は少なかったのですが、仕事の利害関係とは離れて付き合う友人や旅先で出会うタクシードライバー、地元の人々とのとりとめのない会話。そんな会話の中に仕事とはまた別に、人としての重要な学びがあったと感じています。これこそ日本を離れて海外で生活し、人々と触れ合うことから得られる醍醐味かもしれません。
冒頭に貼付されているシベリア鉄道の旅物語。そこで働く女性たちや乗客たちの言葉。一人ひとりがいろんなものを抱えて列車に乗っている様子が映し出されています。学生時代に初めて訪れたロシアは、富山県から船でウラジオストクへ渡り、ウラジオストクからモスクワまでのシベリア鉄道でした。行きのモスクワまでの道は一週間ノンストップの旅。帰りは途中下車しながらの旅となりましたが、合計2週間のシベリア鉄道の旅は楽しく、あっという間に過ぎてゆく時間。ロシア語単語を一つ一つ教えてもらったり、子供たちとトランプをして遊んだり。ウォッカを飲んで盛り上がる夜の時間。出会っては別れを繰り返して目的地までの過ごす日々はあっという間でした。この動画を見ると、すっかり車両は新しくなっているようで、当時のおんぼろな鉄道と比べたらずっと快適そうな様子。一週間シャワーを浴びないためにツーンと鼻にくるロシア人のあの独特の匂い…さすがにそこまでは画面からは感じられませんが、あの匂いが少し思い出されました。
ここに登場するシベリア鉄道で働く女性の言葉によれば、給与は決して多いものではなく、2週間の勤務で20,000ルーブルの収入(現時点の為替レートで日本円に換算すると約3万円)。そこから2週間分の食事など必要なものを差し引くと手元に残るのは約14,000ルーブル(約2万円)。「年金は17,000ルーブル(約2万5千円)、アパートの家賃を支払い、少し他に必要なものを購入すれば…お金は足りたものではない。働かないと。人に何かをあげたり、欲しいものを買いたいじゃない」と。別の女性は、「息子を亡くしてしまい家には自分ひとり。鉄道で働くと家から遠く離れることができて、出会う人たちと談笑できる」という。さらに別の女性の話では、「今はどこもかしこもお金お金お金…(笑いながら)プーチン大統領のせいで物価が上がっている」と。「問題はお金が足りないこと。家族を置いて働きに出ないといけない、家には奥さんや子供が置いてゆかれ、彼らは寂しがっている、これが問題だ」と。
友人曰く「人は生まれた時の環境ですでにその将来が左右される」と言います。確かにその通りだと思います。たまたま自分自身は日本に生まれたけれど、もしかしたら、例えば北朝鮮に生まれていたかもしれない。自分ではどうしようもできない枠組みの中で自分の人生が閉じ込められていたかもしれない。動画にも出てくる若者が言っているように、(ロシアにはネガティブな部分もたくさんあると思いますが)「我々ロシアの人々は素晴らしい。ロシアは世界で一番大きな国、豊かな歴史を持つ国。詩もあれば偉大な作曲家もいてバレエもある。人々はお互いに助け合いながら生活している。」良い面を観察して、そんな風にポジティブな見方をする人もいれば、自分の国や環境を悲観的に見る人もいる。そもそも人は皆平等で、不公平さが無い世界で生きることが本来の姿であるはず、と思いますが、今の世界ではどうしようもできないことが多くある。そんなことよりも、自分でコントロール可能なところに目を留めることの大切さ。今の自分が得ているものを当たり前と思わずに感謝できる気持ちを大切にしたり。また、家族との絆を強くしたり、いざという時に頼れる友人を持つこと。自分自身が没頭できる好きなことを持つこと。そのように自分のすぐ周りにこそ、ー その規模は決して大きくないとしても ー 自分で物事を何とか好転させることができる要素がまだまだあるのかもしれない。そんなことをモスクワでの生活を通して、またこのような動画から感じることができました。