部門責任者として各課の業務に責任を持つ者としては、各スタッフの働きぶり、仕事の進捗状況がとても気になるものです。どうしてもやってしまう過ちは、各課のロシア人マネジャーを飛び越えて末端の部下と業務進捗を直接確認し、指示を出してしまうことです。会社規模も小さいがゆえすべてが見えること、自ら動いて指示を出すことが安心でもあるゆえ、課にはマネジャーがいることが分かっていてもその上に立つ者として、マネジャーの気持ちを考えずに行動してしまいかねない。そんな過ちをしばしば犯してしまいました。
課のマネジャーからすると、「私の部下なのに、なぜXXXさんは私に言わずに直接指示をするのかしら?私のことを信用していないのだろうか」と。マネジャーと私の間の関係の雲行きが怪しくなる瞬間です。
課のマネジャーとの会議で「じゃあ、あとは課の中で話し合って報告してね」「はい、分かりました」と。そう言ったあとで、よかれと思ってその課全体にマネジャーにお願いした内容を改めて私がメールで書き出します。そうすると「さっきは私に部下と話し合って報告してね、と言って合意したのに、なぜXXXさんは私の部下にも含めてメールをだすのかしら?」とマネジャーは疑問を持ってしまいます。
今年春にあったことです。スペシャリストの女性スタッフの給与昇給とポジションタイトルを変更することになりました。課のマネジャーには、この女性に給与とポジションの変更を一緒に伝えよう、と予め会話をしていました。このスペシャリストの女性はアウトソース契約であるため、彼女のポジションタイトルが変更すること自体、社内の人事に大きな影響を与えるものではありません。アウトソース、という認識が強く、私自身が深く考えていなかったことが原因ですが、彼女が私の席に別の用事でやってきた時に「ちょっと時間ある?話したいことがあるんだ」といって彼女と会議室に行き、待遇の変更を伝えました。課のマネジャーと私のスケジュールの調整がなかなか出来ず、頭の中では「はやくスペシャリストの彼女に待遇変更を連絡しないと、しなければ」という焦りの気持ちもありました。そんな時に彼女と話す機会が生まれ、咄嗟に「ちょっと時間ある?話したいことがあるんだ」となったわけです。それを後から知ったマネジャーは激怒。
「あなたは私との約束を裏切った。あなたは私が同席のもとで彼女に待遇の変更を伝えると約束したじゃないの。そんなことをする人だなんて思わなかった。失望しました」とのメール。「申し訳なかった、今さっきの話だから、まだやり直せる。もう一度あなたも入れて面談をさせて」と。「今更そんなことやっても無駄。あなたがすべて伝えてしまったのだから、今になって私が同席して同じ内容を繰り返しても意味がない。ひどすぎる」と続きます。あとはごめん、もう一度面談を設定しようよ、と言っても頑なに「あなたはすべてを台無しにした。」と返ってきます。マネジャーの彼女としては、自身の評価によってスペシャリストの彼女の昇給とポジション変更が叶ったことを本人の前で伝えてもらいたかったようです。そして、いくらアウトソース契約だからといって、マネジャーにとっては毎日接している部下で、日々自らが彼女の成長のために教育をしている身です。そんな彼女にとっては自らの提言によりマネジメントからの承諾を経て、自分の部下が昇給し、ポジションタイトルも上がることを大変誇りに思っている。それを伝える貴重な機会に自分が不在であった、自分に約束したことが反故にされたこと。それに深い失望を覚えたようです。マネジャーの彼女の気持ちを汲み取っていなかったことをその日は深く反省しました。
そのあとしばらくその彼女とのコミュニケーションが途絶えたのはご想像の通りです。後日、マネジャーの彼女からメールが届きました。「もし本当に先日のことを申し訳なかったと思っているのであれば、今日、ぜひ一緒に彼女に再度伝える場を設定しましょう」と。しっかりとマネジャーの彼女に絞られてしまいました。「今日の面談はどうだった?」と聞いたら「Не плохо(ネ、プローハ)悪くなかったわよ」と合格点をいただきました。これでも一応部門のトップなんですけど…と内心思ったのですが、人によってこの考えは千差万別とは思いますが、私は時に部下のマネジャーから怒られること、いじられること、そんなスキを与えることも円滑に部門を束ねるために必要な点なのだろうな、と考えているところです。