[給与計算]出張旅費の計算 / Salary calculations : Business trip


前回の有給休暇の計算例に引き続いて、今回は出張旅費の計算式の一例を書き出しました。

出張旅費の計算

計算式は

過去12か月分の所得合計 / 過去12か月の勤務日数(カレンダー日数ではありません)

となります。

分母にあたる日数には、病欠(Sick leave / больничный)や有休休暇、他の出張にでかけていた際の日数はカウントされません。ボーナス取得も含まれる所得合計(分子)と分母の日数変動に応じてこの平均給与金額は毎月変動することになります。

貼付の画像はあくまで計算例です。額面100,000RUBのMonthly salaryをもらっているスタッフが1月に3日間の出張に出かける場合にはこの画像にあるように昨年12か月分のデータを用いて、現時点での一日あたりの平均給与を計算します。

最終的に計算された一日あたりの平均給与に出張日数を掛け合わせ、そこから源泉所得税の13%が差し引かれた金額がスタッフの口座に振り込まれる、というわけです。

日本と社会主義 / Japan and Socialistic state

本日18;30のモスクワ中心部から西側にあるFilyovskiy parkにて。モスクワ川が完全に凍っていました。いつも冬はここにきて市内の喧騒から離れ、遠くに車の行き交う音が聞こえるも静寂の中に身を置き、凍った川の上を歩くのを楽しんでいます。自然の偉大さを感じる瞬間です。

ロシア人の友人、タクシー運転手、ジムや仕事上で出会う方々との会話を通して彼らの持つ日本についての印象はなんだと思いますか。あくまで私の経験上ですが、主に以下の点です。

・原爆投下、そして、なぜ原爆を投下したアメリカとこうも仲良くやっているのか理解ができないという言葉(北方領土については、認識はありますし、日本に返却するなど論外、という思考は感じますが、こちらから訊かない限りほとんど会話にあがることがないように感じます)

・サムライ、Wabisabi(この名前のチェーン店をモスクワ市内を歩いていると見かけます)、天皇、ハラキリ、神道、日本食の美味しさとその健康への良さ、といった日本の伝統文化

・工業製品(車、電化製品)の品質の高さ(「ロシアは宇宙船、武器は作れても、一般市民に必要な車を作る能力がない」と自虐的な言葉も)。最近はSUMSUNG、LG、Hyundaiなどの韓国製品に圧倒されています。

・フクシマ(原子力発電所の爆発)とツナミ(ロシア語でもツナミ(Цунами)と同じ発音の言葉)

・規律を守る基準の高さ(日本に行ったことがあるロシア人の印象として、日本人が電車に乗るための列を必ず守ること、エスカレータやリフトに乗る場合も順番を守ることに驚きを隠しません。フクシマの際にも人が列を守って配給を待っていた、あの様子にも大変感銘を受けている様子をいつも感じます)

・街や公衆トイレの綺麗さ(これもロシア人の旅行者からよく聞きます、もちろんウォッシュレットも高い評価です)

・アニメ、ヤクザ、ムラカミハルキといった現代の日本固有の文化

といったところでしょうか。

今モスクワに住んでいて、今の日本とロシアを比べる時に「日本は世界でもとりわけ成功した社会主義国家だ」という論調に同感してしまうことがあります。日本人の“規律を守る”というのは美徳で大変貴重な特質ですが、あらゆる状況においても全員が規律通りに動いていたとしたら世界での国も企業の競争力もそがれてしまい沈みゆく一方です。間違っても規律を破ろう、というわけではありませんが、過度に規律を作り、それに人々が何が何でも従おう、それから逸脱する人間を排除してゆく社会になった時にその国や企業の将来の危うさを感じます。常に周りに自分を合わせること、目立たないように人と違う行動をすることを躊躇すること、その良さが行き過ぎると害に変わってしまう、そのバランスの難しさ。

日本が誇る“おもてなし”、あるいは年ごとに強化されてゆく内部統制システム。本来の目的を見失っていないのか?おもてなしする側もされる側も、内部統制を強化してゆく側も対応をする側も、両者がなんだか疲弊してしまうような過剰な状況になっていないのか?

そんな観点で日本を観察するよい機会となっています。

さて、ロシア人は会社のスタッフを見ていても抜け道を探り出すことに長けているのでは、と感じます。会社の規律を作っても、そうきたか…ちょっと待て、といいたくなるような行動に出てきて逆に尊敬してしまうことも。そんなしぶとさがあるからこそ国が混沌としていても、RUBの価値が対ドルでかつての半分以下になったとしても国が成長できるのかもしれません。逆に、今の日本はがつがつ行かなくてもそれなりの生活を送れる、まさに理想の社会主義国家となれる土壌が備わった、高いレベルにいるのかもしれません。どれだけその成功が各人の自己犠牲の上に成り立っているのかを考える必要もあるはずですが。

今、もしレーニンが生きていて日本を観たら何という言葉を発するのでしょうかね。それにしても、今のロシア人の若者の間では現在5月9日に戦勝記念日に行っているパレードがかつてはロシア革命記念日の11月7日に行われていたことも知らない人が増えているようです。スタッフに話を分かりやすく伝えようとソヴィエト連邦時代と今のロシアを比較して伝えても「XXXsan、私たちはソ連時代を知らないので何が言いたいことかよく分かりません。」と言われてしまいました。

ロシアの勘定科目一覧 / Russian account chart

ロシア人の経理スタッフと会計仕訳の話をすると、勘定科目名称ではなく、番号で仕訳の説明をされることが多くあります。

「お願いだから勘定科目で話してくれるかな?」といってもどうにもうまく理解し合えないことがあります。結局自分で勘定科目を理解しなければならないようです。そうはいっても、こうしてひも解いてみるとまだ完全に理解できていない部分も実際に多くあります。

今回、自分なりにまとめた主要な勘定科目表(Excel file)をアップロードしました。今後はできる限り詳細についても触れてゆきたいと考えています。

File link:Russian-Accounting-chart

試行錯誤のロシア人マネジャーの育成 / Russian staff managers development – trial and error

最新型モスクワの地下鉄車両にて。週末の朝にパシャリ。ここには写っていませんが、タッチパネル式の所要時間も表示してくれる乗換案内や携帯を充電できるUSB端子まで付いています。


ロシアの会社で駐在員として働くことの任務の一つに、現地スタッフの育成が含まれるはずです。そして、そのためにはロシア人マネジャーの成長がとても重要なファクターになると体感しています。

結果をすぐに求められること、スタッフを大事に時間をかけて育てる余裕がない中で、どこまで自分でやるべきなのか、どこまで口を挟まずに許容できるのか、その加減を見極めることに苦労しています。毎回が試行錯誤の連続です。

例えばロシアに自社商品を輸入して販売するために必要な、EACと呼ばれる認証。どの法律に基づき我々の商品が認証を得ることが要求されているのか、認証を得るためには何をすべきなのか、必要な商品カテゴリーは何か、所要期間はどれくらいか、輸入後に認証期限が切れてしまった商品を販売し続けても問題ないのか、など多くの質問が出てきます。そこで、「EACについて日本側も(ロシア人の)営業スタッフも日頃会話していれば分かる通りチンプンカンプンなので、理解を深めるために勉強会をしよう、そのための説明資料を作ってくれる?」とロシア人マネジャーに話したとします。

全くEACの理解がない日本のことを考えると、こちらはそもそもEACとは何か?というテーマから入って資料を作りたいと考えます。昔はГОСТというロシアの認証取得が必要であったが、今ではEAEUと呼ばれるユーラシア関税同盟が発足し、そこが定める認証が要求されるようになった…といったくだりです。一方、ロシア人マネジャーは、認証を得るために必要となる具体的なオペレーションフローだけに注目した説明書を作成するかもしれません。最初からお互いの考えるストーリーの共有をしておかないと、後で根本的に作業をやり直す必要もあるかもしれません。もちろん、こちらとしては、ロシア人マネジャーにこちらが考えるレベルでの広い視野で、日本側のことも踏まえて資料作成をしてもらいたい、それが普通だろう、と考えかねません。しかし、私の経験上はそう上手くいくことはまずありませんでした。(いや、今もスタッフと「こらっ、お前が何とかしてくれや。頼むで。」と格闘中です)

そのようなわけで、まずこちらで骨組みを作り込み、それに合わせてロシア人スタッフに内容を詰めてもらいます。そうすると、自分の望んでいるレベルに内容が近づきます。それは自分の望んでいるものであり自分もうれしいです。しかし、次に別のテーマでも同様の必要が生じたとき、再びこのプロセスを繰り返したとします。それがまた次も同様です。それは、マネジャーというよりも、ただのオペレーターの育成にすぎません。

XXX san、ドラフトを作成したのだけど見てもらえますか?XXX sanの指摘はいつもありがたく自分の資料内容をよりよくするのに貴重です、ぜひ今回もチェックしてください。」

そんな言葉はうれしいですが、自分の上司が最後はチェックしてくれるので“ある程度”納得できるレベルで作成すれば大丈夫、という意識がロシア人スタッフに根付いてしまうとどうでしょうか、いつまでたってもロシアの会社が自立できない、いつまでも日本人の上司がいるから彼/彼女に任せておけばいいでしょう、となってしまうかもしれません。

私にはロシアに進出している外資系企業での勤務経験がないため比較できませんが、日本の企業ならではの独特の慣習もあるはずです。そのような“ノウハウ”も把握した現地人マネジャーが定着してくれることは現地の会社の成長にとって重要なポイントに違いありません。

どなたかがおっしゃっていたフレーズをいつも思いめぐらしますが、マネジメントはキャンバスのサイズを決めて、そこの絵のドラフトを描き、それを部下に渡すこと。部下(この場合はロシア人マネジャー)はその範囲で自分の好きな色を使って絵を完成させることだ、と。つまりは、我々が何だかきれいな曖昧な言葉で、自分で具体的な完成イメージを持たずに「頼むで。」と言ってもダメなんですね。キャンパスのサイズ、絵の構図を自分で決めること。それは少なくとも駐在員の責務であると。というよりは、今自分がいるポジションの責務であると考え、それが出来るロシア人スタッフがいればその人に取って変わってもらってもよいのでしょうね。

まず、自分自身が具体的な完成形のイメージを持った上で具体的な指示を出すこと。しかし、それをずと続けることは危険であるということ。ロシア人マネジャーが自分の意図通りに動く“オペレーター”となってしまっていないだろうか?と問いただすこと。徐々に彼らのフリーで動ける範囲を広げてゆき、行く行くは自らのアイデアを出し、提案を出し、考えられる解決に向けた現実的な選択肢を持ってきてくれるようになっているか、そうなった時には、彼らの成長が大変微笑ましくなる瞬間になるはずですね。そんな瞬間がどれだけ増えるだろうか、それを目標にして日々ロシア人スタッフとギャーギャーやっています。

自分で決めたスタンダードを守る / Keep own standard

街の至るところで見かけるDeliveryサービス。外に出るのも嫌になることもある?冬の寒さ。Deliveryビジネスがぐんぐん伸びているようです。もちろん冬だからではなく。


毎日ブログ更新を心がけています。今日は時間切れ・・一言だけでも。

自分で決めたスタンダードを守ることの大切さ

以前、予算作成を本社にレポートを出す締め切り最終日、23時を過ぎても一人でオフィスに残り作業をしていました。オフィス外の共有スペースに出るためには正面ドア横にある電子機器に社員証をかざして開ける、あるいは社員証無しでも開けることができるボタンが併設していあります。

その日はトイレに行こうとオフィスドアを開けたとき、社員証を忘れてそのまま出てしまいました。トイレから帰ってきたときには既に時遅し。誰もいないオフィス、貴重品・アパートの鍵もオフィスの中。結局共有スペースにあるソファに横になって眠り、朝に掃除のおばさんが来るまで夜を超すことに。そんな苦い思い出があります。朝いちばんで本社に事情を説明して急いでレポートを提出しました。今となっては笑いながら語れますがその日はつらかった。

 

そんな出来事を人に語った時に、スタンダードを守るというのは、カードを必ずかざしてオフィスのドアを開ける。たとえ日中にオフィスに人がいて、いつでも中から開けてくれるとしても自分のルールを守る。それが標準化、ということなんじゃないかな?というアドバイスをいただきました。今でもこのことは教訓となって思い返すことがあります。

そんな日常ありふれた事柄から学んだ、とても真理をついた言葉でした。

悩んだら声に出してロシア人スタッフ、上司に説明を

海外で駐在員として働くとき、各人の業務範囲、責任が大きるため、どうしても人に頼れずに自分で課題の発見、その問題解決への道筋、こうなるであろう、こうあるべきであろうという結論を自分で決め、それに向かって自ら進んでゆく必要が出てきます。…でも、一人で悩んでもどうしようもないことも多くあります、といって周りのみんなは忙しそうだし、日本とはBusiness Skypeで連絡を取れる状況にあるとはいっても時差もあり、実際に遠く離れているがゆえになかなか気軽に相談したり、理解してもらう難しさも感じています。果たして自分のこのやり方でよいのだろうか?何かおかしくないだろうか?頭の中でそんな疑問が飛び交っています。

とにかく声に出してロシア人スタッフ、上司に説明を

今の自分自身は、悩みにはまってしまったら、まず声に出して人に説明すること、これを心がけています。自分で何でもやらなければ、自分で回答を見つけなければ、と考えに考えて時間が経ってしまう、結局自分の出した結論は誤っていた、上司の要求とは異なっていた、そんなことが何度もありました。

声に出して自分で人に説明をしてゆくと、不思議と自分の理解の誤りや、ロジカルではない部分が見えてきます。また、自分の思ってもみなかった解決策が生まれることもあります。頭の中で考えるだけではなくて、人に“声を出して”説明することがキーです。

ロシアでの駐在員の人数は各社ともに少ないはずです。そんな中、自分で考え抜くも、考えすぎず悩みすぎず。上司を“利用する”くらいの意識で説明をすること、自分の誤りを指摘される時には自分の至らなさにがっかりすること、「(上司に)負けた、悔しい…」という気持ちになることもあるのですが、むしろ間違いが発見できて、その段階で訂正できることに感謝しています。

きっとこの声に出して相手に説明をすること、基本中の基本の所作かもしれません。尾恥ずかしながら、今になって改めてこの基本の大切さを身に染みて実感しています。

今日もありました、締め切りも迫っている中、キャッシュフローとPLBSの連動をさせるのに、どうしてもロシア会計のVAT支払いと法人税の仕組みが分からず、ああでもないこうでもない、でもこうしたいんだ、と。経理スタッフに絵を描き、至らない言葉で何とか説明。すると、彼女の一言で自分では気づかなかった方法を見出せたことに感謝しています。助かりました…。Спасибо.

[給与計算]有給休暇の計算 / Salary calculation : Paid vacation

ロシアの給与計算ロジックを理解するには大変苦労しています。社内のロシア人スタッフに尋ねても詳細に至るまで的確な答えが得られず悶々としてしまうこともあります。ひたすら唸りながら一歩ずつ理解をしようと努力の毎日です。

有給休暇の計算

シンプルに言えば、計算式は

過去12か月分の所得合計 / 過去12か月分日数*休暇日数

となります。

以下の貼付画像はあくまで計算例です。

額面100,000RUBMonthly salaryをもらっているスタッフが1月時点で5日間の有給休暇を取得しようとすると、昨年12か月分の給与所得データを用いて、現時点における一日あたりの平均給与を計算します。この分母に使用する日数を計算するにあたっては、「29.3」という係数がポイントになっており、

・当月のカレンダー日数=スタッフの実働カレンダー日数 > 29.3を使用

・当月のカレンダー日数>スタッフの実働カレンダー日数 > カレンダー日数/当月の実働カレンダー日数*29.3で導き出された日数を採用

というルールに則っています。後者のケースはスタッフが病欠(Sick leave)や別のVacationを取っていた場合に起こります。その場合は実働日数にカウントされないためです。

分子にあたる所得には給与に加え、ボーナス等、立て替え払いで給与で精算された費用も入ってくるので毎月変動する可能性があります。

最終的に計算された一日あたりの平均給与に休暇日数を掛け合わせ、そこから源泉所得税の13%を差し引かれた金額がスタッフの口座に振り込まれる、というわけです。そして、振り込みは休暇の3日前までに送金しなければならない、というルールもあります。

なお、誤りがありましたら訂正をいたします。またご指摘もいただければ嬉しいです。この情報による何らかの害については責任を負いかねます。

スタッフとの距離感。その測り具合の難しさ / Appropriate distance from Russian colleagues

モスクワ中心部のMetro stationでのライブ演奏。周りのみんなもパフォーマーと一緒に笑顔になって少し足元が踊っていました。夏は路上でのライブ演奏をよく見かけますがさすがに冬は誰もいません。公式に認められたパフォーマー達がこうして所定の場所で演奏をしているようです。


管理業務の責任を担う中で、ロシア人スタッフとの距離感の取り方の難しさをどうしても感じることがあります。管理として全体を束ねて働く以上、人に関する情報はいち早く入ってきます。残念だけどXXをクビにするしかない、そんな話も進行し裏で準備も必要です。残念ながらいつスタッフとの関係がどんな状況になるのかも分かりません。一方で、スタッフとの良好な関係を築きたい、あえて踏み込んでいえば、人間ですので相手から好かれていたい、という気持ちはあります。良好な関係を維持するために日頃できる努力を怠らない一方、いつでもどんな状況になっても冷静な判断を下せるように自分と相手との間にふさわしい距離を保っておくこと。日本人としてロシア人と働く管理業務スタッフは、このバランスにいつも配慮する必要があるだろう、と考えています。

すっかりロシア人スタッフに入れ込んでしまって(恋愛感情ではなくあくまで業務上の関係です)、日本人駐在員としての仕事上の遂行に影響を与えかねない影響がでてしまった他社のケースを聞いたことがあります。どんなに部下に好かれたいと思っても、どんなに可愛らしいロシア人スタッフに丸め込まれそうになっても、やはりいつでも正しい判断を下せるように自分の立場を意識しておくこと、そのためにスタッフとの距離感をいつも計測することは欠かせないでしょう。

部下の誕生日

スタッフの誕生日※1はロシアでも重要なイベントです。

※1 ロシア会社の多くが同様の慣習を持つと思いますが、誕生日のスタッフへの周りからのお祝いと祝ってもらったスタッフ自身からみんなへの感謝としてケーキやピザなどを振舞います。スタッフ当人にとっては重要な日です。

同じ部署の親しい間柄の同僚や上司からお祝いの言葉と共にプレゼントを渡します。「私たちのとっても情熱的で、可愛くて、仕事もできて、私たちの太陽のような…(すごい形容の言葉がすらすらと出てくる出てくる)XXX(名前)、あなたと一緒に働けて、毎日あなたの顔が見れてうれしい!誕生日おめでとう!」のようなイメージでお祝いをスタッフがしています。自分の部下のスタッフの誕生日になると、XXXさん、ぜひ一言お願いします、そしてプレゼントを渡してください、と言われることもあります。私はそのような場は一切避けています。スタッフへの感謝の気持ちは山ほどありますが、それを全員の前で言う必要があるのかな、と。後で「XXXさんはあの時そんな言葉を発していたけれど、その数か月後には彼女をクビにした、なんて奴なんだ」なんて言われる可能性があるかもしれません。また、「XXXさんは何でこの人の時にはお祝いのコメントをしていて、別のスタッフの時には会議にこもってお祝いをしないのだ、不公平ではないか」なんて見た事象だけで背景を考えずに勝手な判断を下すスタッフもいるかもしれません。

それであれば自分なりに線引きをして、自分としてすべきこと、しないことをルール化することは大切なんだと考えています。また、人への感謝の伝え方は千差万別。そのスタッフにその都度心から伝えること、旅行に行った時にはスタッフを意識して喜んでもらえそうなお土産をかってみたり、時に仕事中にお菓子を振舞ってあげることなど、そんな場面ごとの気持ちで伝える言葉のほうがずっと大切なのでは、という信条です。

でも考えすぎかもしれませんね。何が正解か分かりません。少なくともこれが自分なりに見出したスタッフとの距離感を保つ方法の一例となっています。

誕生日にまつわる一生忘れない印象的な出来事

誕生日といえば一生忘れることがないであろう経験を時に思い出します。試用期間中※2であったとある女性がいました。

※2 ロシアでは新しい社員を雇う場合には試用期間は3か月(会社責任者、チーフアカウンタントと呼ばれる経理・税務責任者は6か月)となっています。

試用期間の最終日より前に決断をくだし、彼女の採用を見送ることに決定しました。人事スタッフにもその情報を伝えて書類手続きの準備を進めるように指示していたのですが、彼女に試用の終了と結果を伝えるまさにその日が彼女の誕生日でした。

みんなから祝福され、当人もケーキを買ってきて、「みんなありがとう!一緒に働けて嬉しいです、これからもよろしく!ケーキを取ってください」とオフィスのみんなに連絡しているところです。そんな様子を見た時にそれを何でもないかのように眺めている人事スタッフをみて思わず「彼女の試用結果を知っていて彼女が今していることが彼女にとって悲惨なことではないと思わないのか?なんで配慮できなかったの?」と問いただしました。

人事としてすでに彼女の評価結果を知っていて、かつ会社の慣習を知っていれば、この彼女の行動がいかに本人にとって辛いことになるか想像ができて当然ではないだろうか、なぜそこまで配慮できなかったのだろうと悔しくて仕方がなかった、その気持ちは忘れることができません。当時の私はそこまで配慮できるキャパシティもなく、自分自身にも責めるべきところがあったのは認めざるをえません。彼女に残念な結果を伝えたときの悲しい様子、後日彼女に必要な書類を渡す必要があり彼女がオフィスを訪れたときの “XXX sanWhy you didn’t take me ? My work had no mistake, it should be ok. I don’t understand your decision. Now I don’t have job and very hard to live in Moscow with my mother. Why?”という言葉、これも鮮明に覚えています。(会社は慈善団体ではないため能力が我々の要求に適わないスタッフを養えるほどの余裕はなく、その点は仕方のないことですが、自分の試用期間中の彼女へのフィードバックの方法に不足があったことは事実です。この点は別のテーマで書きたいと考えています)

人事として働くのであれば、先を読み、相手のことを配慮して行動してあげるべきではないでしょうか…。私の問いにも「仕方のないことだ」という返答をしてきた、そんな人事スタッフに対する残念さとその人間性の虚しさがその日から自分の心に積もりだしました。

怒りの気持ちは時間を置いて忘れよう / Put aside the feeling of anger 

この週末もどうしても頭にきてしまうことがありました、それはスタッフがやると言っていたことをやらず、かつ進捗の連絡もなく金曜日が終わってしまったこと。

お願いしていたことが木曜日に終わらなかったので、翌日金曜日にやるので待っててください、と。そんなわけで、金曜日にリマインドをして改めてお願いしたにもかかわらず連絡がないのはやはりがっかりします。

終業時間前に進捗確認ができる時間があればよいけれど、会議が続く中で事細かに確認をしている余裕がないのが現実です。

今では、このような自分の感情をそのままメールで書き出すことはしなくなりましたが、かつては
攻撃的なメールを書いて痛い失敗をしたことがあります。自分のマネジメントスタイルがコンプライアンス違反だと訴えられてすべてのメール履歴がオープンにされていました。こちらの言いたいことも理にかなっている反面、自分に余裕も無かったこともあり、苛立ちの様子が分かるメールを書き込み、何の良い結果も得られずスタッフとの関係修復も難しくなる始末。ロシアでもAnger control trainingのテーマはよく聞きますし、我々も必要だろうかと検討中です。

当時、自分がたとえ正しいとしても、自分の正当性を語るのではなく、いかに相手に動いてもらえる仕方で物事を進められるのか、それがいかに大切かを学びました。

また、スタッフが約束通りに出来なかった理由に根拠があるケースも実際に十分起こりえます。自分の把握していないところで急な案件が入ってしまい対応が出来なかったのかもしれません。なかなか人でも足りず、想定外のことが日常的に起こる事情もあり、このような可能性も考慮に入れる必要がありそうです。

メールはただでさえ冷たい道具。それに感情を入れようと思ってもどうにもうまく入れられません。!: )を使ってそれなりに表現はできそうですが難しい気がしています。

そんなわけで、怒りの感情がふっと沸き上がったとしても、それを落ち着けることが重要ですね。メールをバーッと書き出してしまったら「おいおい落ち着け、その文章を送っても大丈夫なのか?」ともう一人の自分に話しかけてもらうこと。そもそも何もしないでしばらく待ってみること。一日寝かせるくらいの気持ちでいるのが結果的によいのだと経験から感じています。

今はできる限りメールは事務的な連絡とし、人の気持ちに影響を与えるようなテーマになると必ずメールの筆は置き、会議室で直接会って会話するように意識しています。表情、声のトーン、身振りなど、直接会って会話をすると言葉だけの要素で相手に気持ちを伝えられますし、とても良いですよね。

発した言葉はある種の契約関係の発効

自分でやります、と言っていたことをしないことが大嫌いなことの一つです。発した言葉はそれがある種話した相手への契約でもあると考えています。それを変更する場合には説明書きが必要です。いかに自分の言葉を守ることが重要なことか…。そして難しいことか…。

少なくとも、金曜までにできなかったことは、出来なかったことを責める気持ちはありませんが、出来なかった事情といつまでに対応するか、たったそれだけが欲しかったな…と思ってなりません。定期的にこの思いを伝えているのですがどうにも時間がかかりそうです。決して悪いスタッフではないので何度も根気よく伝えていくしか解決への方法はないのでしょう。そして、自分自身にも同様のことがないように、とわが身を振り返る機会ともなりました。

1つの事実に対する全く違う見方ー長時間労働 / long working hours – different viewpoint

休日である今日、土曜日、日本時間の月曜日朝必着のレポート作成が昨日までに終わらなかったのを気にしてか、Chief Accountantと経理スタッフの2人が自主的に出勤してきてレポートに取り組んでくれました。あとはこちらでやるので問題ない、と昨日言っておいたのだけど、昨晩メールがきて「明日出社して完成させるからまかせて」と。貴重な週末の時間、かつオフィスまで遠いにも関わらず時間をかけてわざわざ来てくれるのを見ると心が温かくなる。でも…あとできっちり休日出勤の手当を請求されるのだろうか…と心配にもなってきた。

(写真)今朝、マイナス十数度の中寒そうにじっとしている鳩(голубь)の一群。写真を撮ろうと立ち止まると、エサをもらえると思ってかすごい勢いでこちらに走りこんできました。


異なる文化において、一つの事実を全く異なる見方で評価をされることを実体験できること。これは海外で勤務することで得られる収穫の一つだと感じています。

例えば、“長時間勤務は良いことか、悪いことか。”

これは労働内容で判断すべきことなのでこの文章だけを見ても判断はできませんが、日本では長時間働いているほどプラスに見られる傾向があるように思われます。

日本で勤務していた時には、その日の仕事が終わっても周りの先輩、上司がもくもくと仕事をしているのを見て退社するのを気兼ねしていたことをよく覚えています。今日やらなくてもよいのにそれを始めてみたり、ある程度時間が経つのを待ってみたり。今思い出すと笑ってしまいますが、当時はそれが普通になっていました。どうしても同調意識が無意識にでも働いてしまうからなのでしょうか。

朝早くから出社していたので、そうすると遅く残るほどに退社時間が遅くなり、残業対象時間も増えます。しかしながらその通りに残業時間を申請することもなく、申請する退社時間は実際の退社時間よりもだいぶ早くし、残業時間もつけずにいました。遊んでいたわけではないものの、かといって残業時間をつけるには抵抗がある、そんなことが標準となっていた気がします。今となっては自分のポリシーに沿って日々の退社時間をコントロールできるようになりました。それでも、周りに配慮をする、というのは日本で生まれ育ち、身についた美徳だと認識しています。これは大切にしたい点です。

さて、ロシア人スタッフに言わせると、長時間労働=能力が低い人、という認識があるようです。私たちの会社のロシア人スタッフは我々日本人を慕ってくれていて、逆に憐れんでくれていますが…。長時間の会議、細かい資料作り、やたらと多い資料の数、レポートの数、それらの多くが理解できないようです。そしてそれらが長時間労働の元凶とも言えるでしょうか。率直に言わせてもらいますと、長いことロシアで働く中で私にも理解できません。レポートの数を増やし、情報収集をすることが目的化していないでしょうか。大切なのは不確実な状況での意思判断、決断力、行動ではないでしょうか。

長時間労働を改善するにあたっては、自ら改善できることと、自分の力が及ばない2つに分けられますが、後者についてはどうしようもありません。定期的に自分の意見を本社にフィードバックしていますが、それを変えられないことについて考え込んでも意味の無いことであり、前者に集中するのみです。

 

長時間労働解決の第一歩

自分自身の心の中にオフィスを少しでも早く離れるべき理由を持つこと。この動機づけを持つことが長時間労働の第一歩。それが私の結論です。なぜ愛する家族が自分を待っているのにいつまでも仕事をしなくてはいけないのか、自分の趣味にかける時間が欲しいのになぜいつまでも職場に留まっているのか、美味しい晩御飯を食べたいのになぜ2122時までこうして菓子パンをかじって延々と作業を続けなければいけないのか…まず、自分の中に動機づけを持つこと。これがなければ長時間労働という問題提起自体が問題ではなくなり、長時間労働自体が正しいこととなるのではないでしょうか。仕事を効率的にこなす方法、業務内容の見直しなどのテクニカルな部分はその次です。まずは一番大切なのはなぜ長時間働く(オフィスに留まる)ことを改善すべきなのか、ということをよく理解することからなんだと考えています。

仕事が趣味、生きがい、という方の気持ちも分かるつもりです。仕事で得られる達成感、成功、周りから得られる評価に代わるものはなかなかありません。問題を解決してゆく過程をとてもエンジョイしています。それはある意味中毒になります。自分自身、かつては仕事が絶対。そう思っていましたが、ロシアに来てから考え方が変わりました。

仕事は決してオフィスに座っている時にしかできないことではなく、むしろ、違うことをしているとき、例えば友人との会話から、ただ無駄に思えるような時間を街や綺麗な公園を散歩したり、モスクワ川を眺めたりしているとき、ジムで出会う常連の仲間との会話などから得られるヒントが現状を打開するきっかけになることが何度もありました。

マネジャーという役割は目の前のことだけではなく、将来に向けた布石を打つこと。そのために視野を広げてゆくことが大切です。オフィスに座って作業に集中するのは部下の仕事。自分は彼らのことをケアする責任がある中で、会社の先を見て行動することへの責任も担っている。それを考えると、毎日家と職場の行き来を繰り返しているだけの人がマネジャーなのかというと疑問です。

ノウハウ本でも言われていることですが、仕事以外の教養を持つことの大切さ。人間として成長してゆくためには、仕事の成功だけでは不十分だ、ということを実感させられています。今のロシアで流行っていること、世界の動き、街の人々の様子、ホットなトピック…、職場に座っているだけではなかなか手に入りません。スタッフとの雑談、週末にロシア人の友人との団欒、そういった時間がとても貴重になっています。

そう考えると、これらのことはロシアであろうと他国、日本であろうと真実であって、つまりどの国で働いていようと大きな違いはないのだ、原理原則は同じなんですね。この点をすっと理解できた時、肩の荷が軽くなった気がしたのを覚えています。ロシアは複雑、理解が難しい、という点は正しくもあり間違いでもあるような気がします。一つずつかみ砕いてゆくと決して日本のそれと大きな違いはありません。

残念ながら諸事情により定期的に週末もオフィスで残務を行う必要もあるのですが、長時間労働自体はやはり悪だという信条を持っています。慢性的に長時間労働を行う必要がある場合には、仮にその人自身に能力があるとしても、仕事の任せ方が悪かったり、ロシア人スタッフを信じていないがゆえに自分で全てをみないと気が済まない、職務を部下に任せることが下手である自らの責任なのかもしれません。また、そういった人材が育っていないがゆえに駐在員が長時間勤務せざるをえないのかもしれません。いずれにしても何らかの問題があるのは確かです。

長時間労働の理由が自分自身の能力の問題である場合、それは自分なりに努力するしか方法がないでしょうね…。このように書いている自分自身、今でも毎日溜息をつきながら努力中です…。上記の強い動機があるからこそ、努力すべきテクニカルな部分に注目するようになります。メールの短縮入力機能(日本語・英語共に)、タスク管理手法の改善(例えば、エクセルのマクロ機能を勉強して、それを活用して時間短縮、効率性アップを試みる)、部下とのコミュニケーション方法の改善(One on one meetingは絶対に欠かせません、日頃から感謝を示すことも大切です。)、IT関係の情報を入手すること(今の世の中ITの知識無しにビジネス界を生きることは不可能だと知るようになりました)、資料作成の際には今後も使用できる形で整備し、会社制度の中に組み込んでゆくことを意識することで今の作業が2にも3にもなるように意識すること。などなど、難しいことも事実あるのですが、多くの失敗を通じ、今も繰り返す失敗を通じて学んでいるところです。

年をとればとるほどに学習にかける時間が一層多くなっているかもしれません…。でもそんな人生が楽しいです。