ВыとТы / “You” and “You”

色取り取りの野菜、フルーツが並ぶ市場。(注:昨年5月に撮影した写真です。時期によって市場に並ぶ野菜、フルーツ類は異なります)

ロシアに来てから、いまだにВы(遠い関係、敬意のこもった”あなた”)とТы(君、お前、親しい間柄での”あなた”)の正しい使用方法が分からずどうしてよいものか悩んでいます。

市場にでかけたとき、Что ты хочешь?(お真似は何が欲しいんだ?)と乱暴に言われると、きっと下に見られているのだな、と感じます。一方で、Здравтвуйте, что вы хотите?(こんにちは、何を入用ですか?)と丁寧に尋ねられると、あっこの人の教養レベルは高いなぁ、と思ったり。

現在の職場に来て本当に間もない頃、会社のドライバーと会話をしていて「これからあなたのことをТыで読んでもいいですか?」と尋ねた瞬間、これまで勢いよく楽しく会話していたドライバーの顔が一気に硬直して少しの間固まっていたことを思い出します。あれは完全に失敗してしまった。親しい間柄だから、という気持ちからの発言だったのだが、どうもそうは取られなかったのかもしれない。

ロシア人の友人にこのВыとТыの使い分けが自分にとって難しいことを伝えると、彼女も「私もそれは分かる。私もお年寄りの方を呼ぶときに親しいのでТыを使っても良いのか、それでも相手を敬うためにВыを使うべきか、悩むことがある」と言っていました。ロシア人でさえもこうなのだから外国人の自分にとってはもっと難しいに決まっている。

さて、今日、ジムのサウナに入っていたら、よくある会話で「(熱した石に)水をかけてもいいか?」と一人が尋ねると、もう一人が「おぉ、いいね、賛成だ(Да, я за.)А ты?(ところで、お前は?)」とこちらに尋ねてきました。ときに、人によってはその質問がВы?になることもあるので人によって違うのですね。

会社で部下に対してТыを使用して会話したときのこと。頻繁にコミュニケーションを取っているスタッフで決して遠い間柄ではないと思うのですが、「職場ではВыではなしてください」と言われてしまいました。相手にはそんな近い関係とは思われていなかったのだろうか…。あるいは上司と部下の線引きを明確にしておく意図があったのかもしれません。かつていた経理責任者(Главный бухгалтер、英語Chief Accountant)は年齢も60歳に近く他のスタッフと年齢も離れていたが皆とТыでコミュニケーションを取っていました。一方、今の経理責任者は年齢も部下からそこまで離れていないもののお互いにВыで会話している様子です。大変皆仲良くやっているけれど、Выで呼び合うところに一定の距離とお互いに対する敬意が感じられます。

また、業務上の取引先の方にメールを書くときには、文中であってもвыではなく、ВыとВを大文字にして書くことがよい、とロシア人スタッフから習いました。相手への敬意を表すことになるようです。また、通常はТыで呼んでいたのに、Выに変えると二人の間に何かあったのでは、ということもあるようです。こんなちょっとした短い言葉、ВыとТыであっても大変深い意味がある。こんな部分からもロシア語の奥深さを学んでいます。 ロシア語の教科書では紋切型のВыとТыの使用方法が書かれているように感じられるのですが、実際に使用する場面では、相手に応じてその人のキャラクターや雰囲気を感じる会話能力、対人関係の感覚能力をもって相応しい選択肢を掴んでゆく力が大切と考えています。教科書で学んだこととは違うことが世の中多く、それを実践中です。

Kids向けテレビ番組でロシア語学習 / Learning Russian by watching TV for kids

モスクワの地下鉄車両内にて。最近は車内が明かるい新しいモデルの車両が増えていますが、この古いタイプではライトも弱く、乗客の黒基調の色合いも手伝ってより暗い雰囲気を醸し出しています。

ロシア語やロシアカルチャーの勉強にテレビが役立つと感じています。日本でもロシアでもテレビを全く見ない生活をずっと続けていましたが、テレビは今の社会のトレンドを表しているというのはどこの国でも同じでしょうか。テレビを観ると、その言語が持つリズム、音程などの音楽性を感じ取ることができること。さらにどのように感情表現をするのかといった人間性も学べるのがよいですね。

またKids用の番組は健全な内容ですし、言葉も多少は分かりやすく(Nativeではない我々にとってはいずれにしても難しいですが…)、子供向けに世の中のことを教えてくれる内容になっているように思えます。たとえば、今日見ていた番組では、ヘリコプターがなぜ地上から浮かぶのか、その理屈を番組内で説明していました。

参考Link:http://viks.tv/tv_detskie_kanaly

今の子供たちは、自分の子供の頃とは全く異なります。知り合いの家族の子供も誰もかまってくれなくてわめきだすと、親が「カーチャ、これを観ていなさい」と言って親がスマートフォンで子供向けのムービーを再生します。するとカーチャも静かになって、映像を観て一人で楽しんでいる-本当に時代が変わりました。日本のアニメもとても人気です。問題は、ゆっくりとテレビを観ている時間が無く、仕事に追われてしまう毎日ですが、貴重なロシアでの生活なので少しでも素のロシアに触れる機会を増やしてゆけるように毎日の業務改善に励んでいるところです。

ところで、いつも言葉と人の脳の造りについて不思議に思う点があります。「言葉を認識する方法(脳の仕組み)は各言語で異なるのだろうか?ということです。たとえば、Kids向けに”карусель(カルセーリ)”(Merry-go-round)という番組があるのですが、このカルセーリ(ロシア語のアクセントは後半)、独特な響きですのでアクセントの位置が間違っていてもこの言葉を何とか言えれば伝わるでしょう、と思いきや“カールセリ”とロシア人に何度言っても伝わりませんでした。ようやく「あ~カルセーリ!」と最後には分かってもらえたのですが、言葉を認識する脳のプロセスがどうなっているのか?面白いですね。各人の能力にも依るのかもしれませんが…。

日本語で言えば、例えば、柿(хурума)なのか牡蠣(устрица)なのか、辰(дракон)なのか立つ(стоять)なのか、言葉で書けばすぐ分かるのにイントネーションの違いで異なる意味になる、それが間違いなのかは会話の場合は文脈から把握する必要があるような場合と同様の現象なのかもしれません。

また、好き好んで利用しているNetflix。このKids用の番組メニューも多種多様です。ロシア版Netflixではロシア語でセリフを聞くことができます。素晴らしいのはセリフを常に英語・ロシア語字幕で出せること。ロシア語を聞いて英語で確認する、その逆もOK。Netflixもただ鑑賞するだけでなく語学学習に大いに役立っています。

言語学習と音楽 / Language study and Music

ロシアで仕事をする上で言語の問題は避けて通れない。言語ってつくづく音楽だなって思う。リズムがあり、アクセントがあって休止がある。同じ楽器を異なる人が演奏すると出てくる音や音程が異なるように、同じ言語を喋ってはいても人の数だけ奏でる“音楽”も異なってくる。

詰まるところ、言語の習得はどれだけその言語が持っている音楽性を掴むことができるか、これにかかっているのではないだろうか。

欧米のクラシック音楽、日本の雅楽、その他諸々…その土地で生まれた音楽はその土地の言語が持つリズム感や音程と密接な関係があるに違いない。その言語あっての音楽に違いない。語彙を増やすことはもちろんなのだけれども、それ以上にこの“音楽”をどれだけ体得できるかが言語学習の上達に最も影響するポイントなのだろうな、とおぼろげながらに感じている。

言語を学習するといっても、日々仕事に追われてしまっていてまとまった時間を語学学習に充てることは非常に困難。といっても仕事では常に社内公用語の英語、時にはロシア語を読み書きする必要に駆られる。いかに短時間で最大限の結果を得られるか?いつも悩むところ…。幾つか好んで使用しているものを挙げてみました。

 英辞郎 on the WEB Pro(有料)

1年契約で月額297円(税込、執筆時点)

英語で文章を作成する時、単語の次にどの前置詞をつけるのか、of?for?about?はたまた何もいらない?―このようなケースによくぶつかります。そういった時にこのオンライン辞書はたくさんの例文が載っており文法の勉強にもなる、大変心強いです。問題はアクセススピードが遅いこと。会社のネットワークの問題なのか、サーバーが日本にあるのでアクセス自体に時間がかかっているのか、スピードは唯一気になるポイントです。

Reverso Context(Online free)

これは上記アルク社の海外版?英語→ロシア語、ロシア語→英語と容易に確認できます。フレーズの翻訳用にというよりも、単語や前置詞+単語を打ち込んで表示される例文集を確認し、その意味や使い方を把握するのに役立っています。

スマートフォン用のアプリもあります。私は月額129RUBの有料版を使用していて、内容・スピード共に気に入っています。

Все фразы и дталоги английского языка(本)

いろいろな本を購入してみたものの開かずに終わる…そんなことが多いのですが、この本は気に入っており、いつも鞄の中に放っています。短い会話集がひたすら英語とロシア語で記載されておりロシア語の日常会話を勉強でき、かつ英語学習にも役立っています。皮肉だけれど、紙質も悪く軽いので携帯するにも楽です。

Link先の書評を見ると、誤植や使用されないフレーズが載っていることへのクレームがあるけれども、そこは外人の自分にはそもそも難しくて分からないので気にせず。

ロシア語を全くゼロから勉強する場合は、きっと語学の先生について基礎から勉強、語彙も増やしてゆくための毎日の努力が欠かせない。一方、ある程度すでに基礎を終えている場合(そしてなおかつ日常業務の仕事で忙しく勉強時間が十分取れないという状況がポイント)、フレーズの塊を見て語彙と文法のチェック、言語のリズム感を体得するためにNativeとの交流、PodcastやTV、Radioでのニュースなどのリスニング、そんな学習をするのが効率的なのかな、と感じているところです。お気に入りのサイトを見つけ、好きな、気になるニュースをチェックしそれを外国語で毎日チェックする。好きなことであれば継続も可能だから。

語彙数をどのように増やすか?

ひたすら努力しかないのでは…。この努力は何よりもその言語を習得したい、というモチベーションから。そのモチベーションもその言語を学習する目的が明確にある場合に湧きあがるもの。目的があれば毎日少しでもその言語に触れるはずだろうから。目的も意味もなければ無理に勉強する必要はないはず。