相手のことを想っているからこそ、素直に相手に直接フィードバックをする。当たり前のことがなかなか難しくてできない。それは世界共通のことかもしれません。
ロシア人スタッフとの定期的なミーティング ― 1週間に1度の定期的な頻度を保つようにしています ― を行っていると、話の内容がとある特定の人間であったり、とある課全体についての不平不満が聞かれることが幾度とあります。
「試用期間中の —(特定の人物)はひどい。みんな彼女のことをよく思っていません。採用活動を続けてもっとよい 別の人を採用するべきです。XXXさん(わたし)は表面的に彼女のよいところしか見ていないから、もっと周りのの意見を聞いて採用する、しないを判断したほうがよいです。 」
「— 課のみんなはひどい。ディーラーとのコミュニケーションのやり方も分かっていないし、私が手取り足取り教えてあげないといけない。あそこのマネジャーは一体どうしているのかしら。」
そのような感想を率直に伝えてくれることはとてもうれしいことです。わたしにそれを話しても大丈夫、と思ってくれているだろうから…一方で、それを伝えられたわたしは、逆に試されているのかもしれません。わたしに伝えてくれたスタッフはわたしにとって大切な戦力です。その人の信頼を失わないためにもその意見に従うべきなのか。いや、ぶれずにわたし自身の考えを貫くのか。
もちろん後者を選択しますが、その場合でもこのコメントを伝えてくれた本人に対して、相手の感想に感謝を示しつつ、それでもわたしがどう考えているのかを丁寧に説明することの大切さ。それは私自身の課題であって、以前は過度に感情的になってしまって気まずい空気を作り出してしまったこともありますが、どれだけ感情を抑えて、相手の意見を汲み取りながら自分の意見を伝えてゆくこと ― これは決してマニュアル化できないもので、経験を通して、そのケースごとに、その相手ごとに自分の言動を変えてゆけるスキルを培ってゆくことでしか得られないものと考えてます ― そんなことを反省しながら身に着けてゆく終わり無き途上にいます。
さて、そんな感想を言ってくれる人に伝えていることは ― 先週は同じ日に立て続けにこのような面談が連なったもので、素直に相手に私の思いを吐露しました ―
「なぜ、私に言って自分から本人に言わないの?相手のことを想っているのであれば、言葉を選んで率直に伝えることが本当に大切なことなんじゃないの?それが愛でしょう?」ということです。
必ず相手にとって大切と思えることがあれば、必ず私の思いを本人に言葉を選んで伝えること。これをいつまでも守り行ってゆこうと決めています。相手のことを想っているのだから相手にそれを言わずにいたら、それは私の責任に跳ね返ってくる。そのロシア人スタッフがひどい言動を改めずに他社に転職してゆく、その転職後の会社で引き続き相応しくない言動を改めないならば、「一体前の会社ではどんな教育をしていたのか…なんて会社だ…」と言われてしまうかもしれません。(言動を改めるのは本人次第なのでわたしにそれを強制する力はなく、あくまで指摘し続けることしかできませんが、それが自分にできることの最大限なのかな、と考えています。それでも変わらないことについて悩み苦しんだこともありましたが、それは自分を苦しめるだけで意味を成さない。それを実体験で噛み締めました)
伝え方には悩みます。どんな言葉を選んだらよいのだろうか、もしこういってこんな反応が返ってきたどうやって切り換えそうか。自分の想定している言葉が相手の人格否定となってしまうことはないだろうか…帰りの家路では「今にもメールで伝えてしまいたい」という苦々しい思いもありつつ、いや、そんなことしたら過去の二の舞だ。今日は我慢して、明日に直接伝えよう。こんな風に伝えたら本人に響くだろうか、など考えたりしながら。(考えていてもほとんどのケースで自分の予想していたように進むことはなく、その場での切り返し方を実際にその場で学んでゆくことが最善の勉強題材でしょう)
あとは、自らも周りからフィードバックを自然と得られる関係と雰囲気作りを心がけること。相手が何もいわなくとも顔の表情、振る舞いや空気から自らの至らない点を感じ取ろうと努めること。それも大切なことなのではないだろうか、と考えています。日本の文化で育ってきたわたしたちは、これはロシア人と比べて容易にしやすいのではないでしょうか。答えのない人事マネジメント。このやり方がよいのだ、と思ったことが、違うケースではひっくりかえされる。再び違う方法を模索する。この繰り返し。難しくもあり嫌になることもありますが、とてつもなく深い分野でいつも考えに耽ってしまいます。しまいには人間って一体どんな生き物なのだろう…と。
さて、私の気持ちを吐露した二人のロシア人スタッフからは「う~ん…」という納得とも拒否とも言えない反応が返ってきたのみで明確な答えは聞けませんでした。何か考えるきっかけになればよいなぁ、そしてロシア人スタッフ同士の中でお互いに、相手のことを想った温かみのある日常的なフィードバックをする文化が根付くこと、それを願っています。