駐在員としてモスクワにやってくることは、その会社から外に出してもよい、と認めてもらった人。海外でもやってゆけると認められた人たちだからのはずです。周りを見渡していて皆さん仕事人として、一人の人間として立派な方だらけだと思います。(私の場合は、周りの誰からも「まだ早いのでは…?」という目で見られていました。実際にそのように直接言われましたし、そうだったと思います。長い年月がたった今も毎日が闘いの日々です。)
今日のテーマでもある打たれ強さについて書く前に…優秀さの持つ危険さは、「自分のやり方、考え方は正しい」と信じてどこに行ってもそのやり方を部下に強制することです。また、優秀さの持つ別の危険さは、ことごとく周りから自らを否定される経験が少なく過ごしてきたがゆえにいざロシアでそのような場面に直面した時の衝撃が強いことです。
健康であるのは第一条件として、タフで打たれ強いこと、いやロシアで仕事をするうちにタフに成長してゆくのかもしれません、この特質がとても重要だと経験を通してしみじみと感じます。
“No, no, no, I don’t think so.(いやいや、私はそうは思いません)””Why? I don’t understand why I need to do this job(なぜですか?どうして私がこの仕事をする必要があるのか分かりません)” ― 別に何も否定されているわけではなく、ただの会話なのですが日本にいる時にはこのような会話をしたことはありませんでした。ロシア特有なのでしょうか、ロシア人スタッフがこちらによく聞えなかった時に返す言葉は「Aa?(あ~?、トーンが下から上に上がる、まるで「ア~何々、何か文句あるの?」と。こんな相槌が返ってくることも衝撃でした。
日本という国は「待ち」の文化。その一方ロシアは(多くの欧米社会も?)「取りにゆく」文化だと感じています。つまり、待っていても相手からこちらを気遣う、配慮する文化が日本だとすると、ロシアでは自ら動かなければ得られません。自分自身が上司であり立場としては上にいながらもスタッフから無視されてしまう存在になりかねません。一人の人間として自分がどれだけ通用するのかが毎日の職場で試されているようです。プライベートで出かける買い物では、英語も伝わらず、すぐに言葉が出てこないロシア語では自然と声が小さくなってしまうことも。そうすると容赦なく「Что? (シトー?!=何、聞えないわよ!)」が飛んできます。ここでも自分の主張をする訓練の場です。朝、お店の営業時間に入ったのに、「まだ準備できていないの、もう少し後に来て」と。また、時にお店が日中開いていないと思ったら”Техничесий прерыв”とても素晴らしい言葉。本当なんだろうかと疑ってしまいますが。
物理的に業務量と責任範囲が広がる仕事のカバー範囲の広さに加え、スタッフとの日々の「バトル」、そして言葉の問題。日本のようにはいきません…そんな状況を乗り切るためのタフさ、何を言われてもめげない打たれ強さ、誤解を恐れずに言うと、何事も一つ一つを抱え込みすぎない、”いい加減さ”を多少持ち合わせること。きっとこれらがロシアで仕事をし、生活をしてゆくうえで重要なことであることに間違いはなさそうです。