人の成長にもっとも大切な要素は一体何だろう、とロシア人の部下と働いていていつもいつもどこでも考えてしまいます。
素直さ。
これが全てではないか、と。そして、細かいこだわりを持たないこと。これも素直さと繋がっているのだろうと。こだわりを持てば持つほどに自分と周りを苦しめる。自分と異なる価値観を持つ他人の見方を許容できる素直さ。
人にアドバイスされて言われたとおりにやってみる。すぐにやってみる。余計なことを考えずにやってみる。それが出来る人がどれだけ少ないことか。私も年を重ねるにつれてそうなりつつあるなぁ・・・と、時に振り返ってふと思うことがあります。己として、絶対に譲ってはならない芯を持つことは必要ですが、どのレベルでのこだわりなのか。自分として強いこだわりを持つものの、そのこだわりがどれだけ高い次元のものか?マネジメントを担う人間にはその高さが求められているのかもしれない、と。
オフィスの棚を入れ替えたい。そんな意見が部門から届きました。どんなデザイン、どんな大きさにしようか?そんなことでも女の子たちは細かいデザインの違い、サイズ、色にこだわって議論している様子を見て、う~ん・・・自分だったら違うかなぁ、という思いもよぎるのですが、本人たちが納得して購入する、それで仮に失敗してもたいした金額ではなければ、またやり直せばよい。そこに私自身の色やデザインの好みを強く主張する必要はないんだなぁ、と。たとえ自分の家ではこだわりがあるとしてもです。そこにあるべきマネジメントとしてのこだわりは、一人でも多くのスタッフは自由に自分の意見を発言し、議論をして自らで決めてゆくこと。会社の決定の中で、自身の主張が同僚との議論の間で考慮されていることを実感すること、なのかもしれません。
繰り返しになりますが、私ももちろん、人は年齢を重ねるほどに、自分のこだわりが強くなり、素直さを持つことが難しくなってゆくのが自然だと思います。以前にはすんなりと従っていたのに、次第に自分も“賢く”なってきたと感じ、自分のこだわりも増えて、それを他人にも強要し始める。まずい兆候です。
いつまでもどんなことでも受け入れられる素直さを持っておくためには、こだわりをもたないことは非常にプラスだな、と。どんなものでも受け入れられるので、進めてくれる相手から喜ばれるし、自分も新しいことを経験できる。良いことだらけです。
レストランでも、メニューを見ても何に決めてよいのか分からない時。サービススタッフに、「あなたのお薦めは何ですか?」と聞くと、「私はこれをおすすめです!」そう返ってくれば、喜んで「OK!ではそれを持ってきて」。そうすれば相手も喜ぶし、なぜ相手がこのお店でこれを薦めてくれるのか(結果のよしあしに関わらず)分かるものです。
スタッフの中には、経験を積んできて私が何もあなたから教えてもらうことはない、と考えているのか、どれだけアドバイスをしても聞き入れない部下がいます。目の前でノートにすべき仕事をメモしているのに、しばらくして進捗確認をすると全く進んでいない。しまいには” don’t know”ときます。本当の馬鹿なのか(いや決してそうではなさそう)、よほど喧嘩を売っているのか(これも違う)、私自身を単に気に入らずに分かっていてもやらないのか(口論になることは一週間に亜何度かありますが、だからといって決して私を嫌って何もしないわけではない)・・・。人はどんなに言っても変わらない。手を常に差し伸べる努力は欠かしてはならないものの、どこかのタイミングでその手を引っ込める時期があること。この決断が必要なことも感じています。
素直さの大切さを説いたノウハウ本が幾つも世の中には存在すると思われますが、果たしてどれだけの人が口では他人に「さあ素直に、謙虚にいましょう」と発言しても、実際の行動にそれが現れているだろうか ― そう考えると疑問が湧いてくるものです。これだけ世間に同じ内容のノウハウ本がありとあらゆる国に存在するということは、つまりそれだけ需要が絶えないわけなので・・・。いかに頭の中では知識として素直でいることの大切さを理解していても、心に到達していないことか。
素直でいること。簡単なようで非常に難しい、でも自分次第ですね。