ロシアでのビジネスは契約書のなんと多いこと。たとえ数千円程度の取引であっても数枚から成る契約書の作成を要求されることがあります。対策としては、契約書に記載している必要な情報を請求書に記載することで契約書作成を省くこと。重要性の基準から考慮して、契約書のサイン権限を社長から部門責任者に委譲することでしょうか。今は可能な範囲で契約書作成を不要とできるように努力中です。
今回は、日常の取引で頻繁に見かける経理書類について書いています。
Акт(アクト)
これは、約束されたサービスや活動が完了したことを証明する書類全般を指していて、アクトにはあらゆる種類が存在します。在庫品の棚卸しが終わったときに作成するアクト、イベントでホテルの部屋を借りたときに作成するアクト、商品を納品したときの納品手続きが完了したことを証明するアクトなど。権限を持った人がアクトにサインをして、両者がそれぞれ原本を保管します。
Счёт-фактура(ショトゥ・ファクトゥーラ)
この書類はVATに関係する税務上必要とされている書類で、税法で要求されている内容が記載された所定のフォーマットで作成されています。VAT対象の取引には必ず付いてくるものです。この書類をもとに私たち商品購入者、サービス受領者は支払い額のVAT相当額をVAT申告から控除することができます。
ただし、簡易課税方式を適用している業者の場合には、このショトゥ・ファクトゥーラが付いてこないので注意が必要です。「あれっ?この商品ってVAT0%対象商品だっけ?なぜショトゥ・ファクトゥーラが無いのだろう?」と思う場合には、この簡易課税方式の可能性が第一に考えられるかもしれません。あるいは単なる書類の紛失なんてことも・・・。
今回参照したLinkでの説明によれば、「ショトゥ・ファクトゥーラは、実際に商品が出荷されたことやサービスが提供されたことを証明する書類である。このショトゥ・ファクトゥーラは、相手方が最終的に商品やサービスを受領した後に発行されます。そのため、この書類には(VATに関するだけではなく)、注文内容やサービスが適切に提供されて完了したことを証明する目的がある書類です。」とのことでした。この書類についてはVATのことだけを考えていたので、この目的を知ることができて勉強になりました。
Товарная накладная(タヴァールナヤ・ナクラドゥナーヤ)
この書類は、物品を購入した場合についてくる書類です。この書類をもって物品の売買が行われたことを正式に証明することになります。日本でいうところの商品受領書や納品書をイメージしていましたが、その意味も包含した、もう少し大きな意味合いを持つ印象を受けました。このフォーマットは「ТОРГ-12」(トルク-ドゥヴェナッツァツィ)というレポート名称があり、仕事をしているとこの名称がオフィス内でよく耳に入ってくることがあります。販売側と購入者のそれぞれがサイン、社印を押す必要があります。
商品を購入する場合、右側の下にサインをするのですが、”Груз принял”(商品を受け取りました)”Груз получил грузополучатель”(商品受領者が物品を受領しました)という二つのサイン箇所があります。一体何が違うのか?背景について正しく理解できていなかったので調べてみると、(参照Link https://www.audit-it.ru/articles/account/assets/a12/256039.html )
ロシア民法509条によれば、商品は購入者 ― 契約書に記載されている人物(つまり会社責任者)― に届けられる。つまり、後者は発注した商品を間違いなく受領しました、ということを証明するものであり、それはこの条項を解釈するに、受領側の会社責任者にサインできる権限があるということです。通常はその商品発注に責任を持つマネジャーなどに権限を委譲し、彼らがサインをしているのが一般的だと思われます。前者(”Груз принял”)に関しては、その商品を直接受け取ったスタッフがサイン可能です。
トップの社長に権限が集中するのは当たり前ですが、ロシアで仕事をするにあたり、この権限委譲の範囲、管理も重要な仕事の一部となっています。徐々に管理しきれず、どの権限が誰に委任されているのかあやふやとなってしまう危険が多いにあります・・・。