ロシアに駐在するにあたってのストレスとの向き合い方 / How to come to face-to-face with the stress in the work life in Russia

このテーマはロシアで働くから、ではなくどこにいてもぶつかることだと思いますが、ロシアで仕事をする上で、心理的な負担が多いがために精神的なストレスは日本で勤務する以上に高いものがあります。それとどのように向き合えるか、これは駐在員としてロシア生活を上手に過ごす上で大切なことであるに違いありません。

人によってストレスとの向き合い方は異なり、人の数だけあるでしょう。仕事のあとの他社日本人駐在員との交流やクラブ活動を楽しんだり、日本から買い込んできた日本食材や日本食レストランでの食事を楽しんだり。

私は時々こういったことがあるのですが、皆さんはどうでしょうか?「(自転車に乗っていて)今日はやたらと行く先々で赤信号にぶつかるな、何か悪いことがあるのだろうか…」「(通りを歩いていて)何だかすれ違う人と違う方向によけて歩こうと思うのに、今日はやたらと何度も同じ方向にお互いが避けてしまってぶつかってしまう。何で今日はこうもこんなにうまくゆかないのだろう…」「(仕事でExcelを操作していて)何でか今日はこうもフリーズばかりしてせっかく作ったファイルが台無しだ…セーブもしていなかったので自分のこの費やした時間、一体だれが返してくれるんだ?!(誰も返してくれるわけがない)」「(ロシア人のグループやカップルとすれ違ったときに彼らが声を立てて笑い出したのに気が付いて)自分のことを笑われているのだろうか…」

こんなちょっとしたことですが、ちょっとしたことから自らネガティブに考え始めてしまう危険があります。こういった時は、私の経験から言えるのは、大概自分自身の気分が落ちているときです。ロシアで日本以上に感じる生活上、業務上のストレスから、この落ちるタイミングが多くなりがちなのが駐在員生活だと思います。

― 雨ばかりの今年のロシアの夏。夏の日差しをもっと楽しみたいのになぜこうも雨ばかり…でも、それだけ太陽のありがたさを感じることができる機会になります。塵ばかりの空気の悪いモスクワの空気が、雨のおかげで新鮮な気がします。緑の匂いが香ってきます。

― 信号待ち。日頃青信号で通り過ぎている時には目に留まらなかった街の風景や構造に目をやる機会となります。少しぼっとしてちょっとしたことを考える時間ともなります。

仕事の効率化を徹底して追及してゆく日々の中で、果たして生活のすべてにおいて効率化が正しいことなのか?ロシアに来てから疑問を抱くようになりましたし、あえて無駄と思える選択肢を取ることも逆に必要なんだ、と悟りました。

日本は多くのことが整備されており、多くのことが予定通りに進むことが重要視されている気がします。一方のロシアはまだまだ混沌としており、日々とても思い通りに事が運ぶことがありません。ソ連崩壊、ルーブル貨幣の大幅な価値下落などの不安定さをベースとして生活しているがゆえに物事が思った通りに進めば素晴らしい、うまくいかなくても当たり前。そんな感覚を持っているのだと思います。だからこそロシア人のマインドはロシアでの駐在生活を上手に過ごす上で学べる点が多くあります。

ロシアでの勤務を経験することで、かつて日本で抱いていた常識の非常識さ、根本的な考え方の変化など、多くのことをロシアから、ロシア人から学びました。今もロシア人スタッフとの交流を通じて、ロシアでの生活を通してロシア人から学んでいる日々です。

ソフトスキルの重要性 ― ロシアも日本も関係なく / The importance of “Softskill” in Russia, Japan everywhere

観光客、バイカー(biker / байкер)が夏には特に集まるモスクワ市街を一望できる丘、 Воробьевы горы (Sparrow hills)にて。展示されているクラシックカーを懐かしそうにおばあさんが眺めてたたずんでいました。

今の時代、ソフトスキルの重要性がとても重要であると感じていて、さらに、この、目に見えない自身の持っているソフトスキルをどれほど簡便に、分かりやすく、見える化して違うバックグラウンドを持つ世界に住む人に表現、説明できるか?これが一層困難だけれども、これまた重要なテーマだと感じています。こうしてブログで書いているテーマ ― 今日で言えば「ソフトスキル」 ―はまったく新鮮味はなく、インターネット上やビジネス書でよく目にすることだと思いますが、仕事の経験を重ねてゆく中で、なんだかストンっと落ちて納得するタイミングがあるのですが、まさにこのソフトスキルの重要性も、他社の方の客観的な話を聴く中で「あっ、そうなんだ、自分が日ごろ感じていることってソフトスキルのことだったのか」と、知識として知っていることと、真に理解して知恵として自分のものになっているか。この違いは天と地の差です。自分自身が経験してきたことをどうやって他人に伝えることができるか、書き物であっても面談を通してでも、同じ共通土台を持っていない人に伝えることの難しさを感じます。人事の採用面談で彼らがどんな人なのか物語るようなエピソードをロシア人候補者に毎回語ってもらいますが、今のところ、これまで納得のいく形で説明をしてくれた候補者には一度も出会ったことがありません。日ごろから意識していないからこそ、いきなり説明を要求されても相手に納得のゆく形で、例えを用いたり、相手のバックグラウンドを考えずに自分の視点で言葉足らずの表現で語ってしまうことに問題があるのでしょう。以前にアメリカで出会った方は「ソフトスキルを見える化するものとしてMBA資格があるんだ」とのことでした。見える化のテクニックとしてそうなのかもしれませんが、それはMBAはあくまでハードスキルであろうと思います。ソフトスキルを鍛えるために専門課程となっているのがハードスキルのMBA?というところでしょうか。やはりこのハードスキル、というのは目に見えるので分かりやすいために、良くも悪くも働いてしまう部分であって危険な匂いを感じてしまうのです。

ソフトスキルの見える化の方法としては、考えてみるとこのブログで自分自身を表現してゆくことも一つの形なのかな、と。どれだけ自分の体験を自身の体験として書くことができて、それを読者が納得できる形に表現してゆけるか、それをどれだけ頷いていただけて、「役立ちましたよ」と言っていただけるか。定期的にサイトを開いて「どれどれ、新しい記事があったら読んでみてやろうか」と思っていただけるか。

また、その人と一緒に勤務した人からの評判、出来る限り正直なコメントを幅広く拾い上げること。そして、仮に素直な前向きのフィードバックが出てこない場合、(多くの人が本人のことを悪く言わないと思われますが)彼らが発言するコメントの発言や文面ではなく、それらに共通して見出される何かをどれだけ汲み取れるか。そこが大切なんだと感じています。

モスクワの職探し・給与事情 / Job searching, Salary in Moscow

今年の5月に地下歩道にて撮影したマクドナルドの人材募集広告。時給200 RUBです。外資系企業を好んで応募してくる理由として比較的聞くことが多いのは「外資系企業は安定しているから。給与がきちんと支払われるから」だとか。ロシア企業では給与がきちんと支払われないこともある、と聞くこともあります。ただし、それは母数自体が絶対的にロシア企業のほうが多く存在するために、そのような企業は必然的にロシア企業の中に存在するからだとも思われます。それにしても200 RUBといえば、本日のレートで換算すると約326円/時間です。ロシア人の若い人たちが働いています。安すぎると思うのは私だけでしょうか…。

モスクワでの給与構造は今もって理解できません。家族・親戚同士での助け合いがなければモスクワで生活してゆくことは難しいのではないかと感じます。昨年、監査対応のために大学生にアーカイブから書類探しのアルバイトを頼んだ際、とにかく非常に安かったことに驚きを覚えたのを覚えています。確か500円/時間も払っていなったはずです。その学生はその金額でまったく問題ない、とのこと。賃金というのは、単なる市場平均だけではなく、会社が持つ無形価値とそれを認める被雇用者側の合意のもとで成り立つものであり、標準化して語ることができないと思いますので、難しいテーマです。ロシア人スタッフはそんなことお構いなしに、「私の給与は低すぎる。適切に評価されていない!」なんて平気で言ってきます。何も言わずに去ってゆくのではなく、このような話を直接言ってくれる人には感謝しないといけない、なんてアドバイスも受けたことがありますが、どうでしょうか・・いなくなっても困らない人間もいますので。 

 モスクワでの職探しは、概ねインターネットが主流です。多くのリクルートエージェント会社が存在し、その中で複数の会社と契約をして採用活動をするのが一般的ではないでしょうか。

以下に挙げるサイトが主流と思われます。私自身も人材採用を担当する中でよく見るウェブサイトはHeadhunterですが、それ以外のサイトも見聞きすることのあるサイトです。

  • Headhunter (hh.ru) – https://hh.ru/
  • Indeed – https://ru.indeed.com/
  • Avito (avito.ru) – https://www.avito.ru/moskva/rabota
  • «Яндекс Работа» – https://rabota.yandex.ru/
  • Rabota.ru - https://www.rabota.ru/

モスクワの平均給与は直近のデータによれば89,045RUB(参照:ロシア統計局の公式サイトより。なお、ロシアの企業は毎月、毎四半期、毎年とそれぞれ定められた統計を提出することが義務付けられてます。今回のようにデータを調査する中で、定期的に提出しているデータがこのように統計データの一部として集計されているのであろうことを理解できました)

実際、モスクワで生活する者としての感覚では、一般的な給与レベルはこれほど高くありません。どこかのウェブサイトでは、【この平均給与には高い給与を得ているマネジメントクラスの金額が含まれており、その高い給与のために平均が上振れしているのであろう」とのコメントがありました。私も同意見です。食料品購入のために日頃出かけるお店の人材募集を見ていると、店頭スタッフは概ね40,000RUBというのが一つの目安なのかな、と勝手に思ってます。オフィススタッフについては50,000 ~ 60,000 RUBではないかと。その中でもIT業界の平均給与の高騰には目をみはるものがあり、200,000RUBを超えることは珍しくありません。他のスタッフとの給与バランスを考えると、小さな会社ではITスタッフにこれだけ払える会社はそう多くないのではないでしょうか。いかにITスタッフにその他の分野でのベネフィットを感じてもらえるか、いかに本人が葉たらやきやすい環境を作ってあげることができるか、そういったお金以外の分野での福利厚生の整備が重要になってきます。この点はまだ会社規模がまだ決して大きくない日系企業にとっても給与バランスの取り方に苦労する場面であろうと想像します。

参照したリンクでは、職探しをしている信仰心の熱い人は、St. Spyridon(Святой Спиридон Тримифунтский)―  仕事での成功に力のある方だそうです ― へ祈ることもアドバイスされていました。ロシア正教会の国らしい情報です。 祈りも大切でしょうが、それに合わせて行動することが重要ですね。

 今回の記事の参考Link

https://hiterbober.ru/work/kak-ustroitsya-i-gde-najti-rabotu.html

http://moscow.gks.ru/wps/wcm/connect/rosstat_ts/moscow/ru/statistics/indicators/?id=149eea00477480468b81fb6923df9336

自分自身の立ち位置を知ることの大切さ – 実はそんな大したことないもの / Understand own place in the Company (not so big as you imagine)

7月最終日。友人宅に呼ばれて夕食をご馳走になりました。彼らのダーチャで取れた新鮮な野菜と創作料理(そばと卵。うん、美味しかったです)と、そして日本のお酒。昨年、一緒に一週間日本を一緒に旅行した大切なロシア人家族の友人です。今でもいつも昨日のことのように思い出し、「温泉、刺身、富士山… 日本はとっても良かった。 」といつも話してくれます。

自分自身の立ち位置を客観的に意識して行動することの重要性を学んでいます。社内で自分自身のポジションは重要な位置にいる自分自身。本社にいる時とは違って権限の幅も広がり、スタッフにちやほやされることも。なんだか自分自身が偉くなったような錯覚にとらわれることも。可愛らしいロシア人女性スタッフからお願いもされれば心が揺らぐこともあるかもしれません。

自分自身の社内での存在を必要以上に過大に考えないように意識し続けることが必要です。むしろ、いかに自分の存在感を消すことができるか?会社の実務が流れている中で、空気のようになれればなれるほどに現地会社における自分の仕事の成功度合いを測れるのかな、と感じています。

どんなに自分自身で注意をしていても、心のどこかで「自分は日本の本社から派遣されてやってきた人間で、日本の会社のしきたりを知っていて、自分自身も仕事の経験は積んできた。自らがこの企業をよくしてみせるんだ。そのためにもできるだけロシア人スタッフの輪に入ってゆこう」という意気込みがあるかもしれません。少しでもロシア語を喋ってもっとロシア人スタッフと交流し、気に入ってもらうことが第一歩なんだ、なんてかつては思ったりしていました。

仕事を通じて作り出す信頼関係に言葉なんて関係ない

大切なことは必ずしもロシア語を話せることであったり、スタッフに近づいてより親近感を持ってもらうことではないのです。本当の信頼関係や親近感は仕事を通して自らが見せるロシア人スタッフへの誠意から自然と積み上げられるもので、最初から慣れ親しもうとスタッフに近づいて得られるものではないと思っています。駐在としてきた当初は、一生懸命にロシア語でメールを書こうとしたり、ロシア語で話そうとしてスタッフに認めてもらうと努力していたことを思い出します。スタッフを連れて食事をふるまってみたり。あくまでそれは仕事での信頼関係が出来ているからこそ一つの交友のための手段であって、食事そのものだけでどこまで自分自身の評価がスタッフ間で高まるのかは疑問です。食事で楽しく時間を過ごした翌日、何事もなかったかのようにいるスタッフの様子を見てから、日常業務でどれだけ信頼を勝ち得るているか、それには仕事を通じてスタッフから評価されることが重要であること学習しました。ロシア語を使うこと、食事をご馳走すること、日本の文化を伝えようと仕事以外の部分でのロシア人スタッフとの交流にいそしむ、そのような補足的なものが主要部分にきてしまうと失敗です。(表面的には喜んでもらえるし、自分自身も彼らに喜んでもらえるのをみると嬉しくなりますが、これだけでは長続きしないものです)

信頼を得ることができ、個別の会話の中で日本人に対する不満や愚痴も言ってくれるようになればしめたもの。そこからは仕事の進め方も容易になってきます。お願いに対するレスポンスも早く、丁寧に対応してくれる。そのサポート力のもとに自分自身の仕事も進めやすくなってくる。良いスパイラルに入ってくるタイミングです。

会社でのポジションなど大したことない ― 柔軟さと謙遜さ

ロシアで仕事をしていると、たとえ自分がそれなりの立場にいたとしてもスタッフがはっきりと自らの主張を言い張るケースに出会うことが珍しくなく、こちらも自分の意見を持つこと、議論を堂々とすることの当り前さを学べます。その過程を経て、自分自身のポジションには何ら特別なことがないこと ― 自分自身は偉い立場にあるのだから、自分の考えが正しいのだから誰もが俺の言うことを聞くべきだ、という先入観を持つことの危険性 — を教えてくれます。あらゆる考えが正解であることの可能性を認められる柔軟性の大切さ。そのためにはどんな考えも受け入れる姿勢や、最終的なゴールは全体にとって相応しい回答を見つけることで、自分の意見を押し通すことではありません。そうすると柔軟さに加えて謙遜であることも重要な要素になってきます。

どんなにロシアが好きで、どんなにこの会社が好きとしても、大切なのはロシア人スタッフが自らの手で会社を大きくしてゆくこと。日本の会社の子会社だからといっても、ロシアの子会社はロシアの会社。その顧客はロシア人。ロシア人の心を真に掴むのはロシア人スタッフでしかありません。日本人駐在員は現地企業に彩りを与えるアクセントであり、それは、あたかもお寿司に欠かすことのできないガリやワサビのような役割を担っているのではないだろうか、と考えたりするようになりました。