試行錯誤のロシア人マネジャーの育成 / Russian staff managers development – trial and error

最新型モスクワの地下鉄車両にて。週末の朝にパシャリ。ここには写っていませんが、タッチパネル式の所要時間も表示してくれる乗換案内や携帯を充電できるUSB端子まで付いています。


ロシアの会社で駐在員として働くことの任務の一つに、現地スタッフの育成が含まれるはずです。そして、そのためにはロシア人マネジャーの成長がとても重要なファクターになると体感しています。

結果をすぐに求められること、スタッフを大事に時間をかけて育てる余裕がない中で、どこまで自分でやるべきなのか、どこまで口を挟まずに許容できるのか、その加減を見極めることに苦労しています。毎回が試行錯誤の連続です。

例えばロシアに自社商品を輸入して販売するために必要な、EACと呼ばれる認証。どの法律に基づき我々の商品が認証を得ることが要求されているのか、認証を得るためには何をすべきなのか、必要な商品カテゴリーは何か、所要期間はどれくらいか、輸入後に認証期限が切れてしまった商品を販売し続けても問題ないのか、など多くの質問が出てきます。そこで、「EACについて日本側も(ロシア人の)営業スタッフも日頃会話していれば分かる通りチンプンカンプンなので、理解を深めるために勉強会をしよう、そのための説明資料を作ってくれる?」とロシア人マネジャーに話したとします。

全くEACの理解がない日本のことを考えると、こちらはそもそもEACとは何か?というテーマから入って資料を作りたいと考えます。昔はГОСТというロシアの認証取得が必要であったが、今ではEAEUと呼ばれるユーラシア関税同盟が発足し、そこが定める認証が要求されるようになった…といったくだりです。一方、ロシア人マネジャーは、認証を得るために必要となる具体的なオペレーションフローだけに注目した説明書を作成するかもしれません。最初からお互いの考えるストーリーの共有をしておかないと、後で根本的に作業をやり直す必要もあるかもしれません。もちろん、こちらとしては、ロシア人マネジャーにこちらが考えるレベルでの広い視野で、日本側のことも踏まえて資料作成をしてもらいたい、それが普通だろう、と考えかねません。しかし、私の経験上はそう上手くいくことはまずありませんでした。(いや、今もスタッフと「こらっ、お前が何とかしてくれや。頼むで。」と格闘中です)

そのようなわけで、まずこちらで骨組みを作り込み、それに合わせてロシア人スタッフに内容を詰めてもらいます。そうすると、自分の望んでいるレベルに内容が近づきます。それは自分の望んでいるものであり自分もうれしいです。しかし、次に別のテーマでも同様の必要が生じたとき、再びこのプロセスを繰り返したとします。それがまた次も同様です。それは、マネジャーというよりも、ただのオペレーターの育成にすぎません。

XXX san、ドラフトを作成したのだけど見てもらえますか?XXX sanの指摘はいつもありがたく自分の資料内容をよりよくするのに貴重です、ぜひ今回もチェックしてください。」

そんな言葉はうれしいですが、自分の上司が最後はチェックしてくれるので“ある程度”納得できるレベルで作成すれば大丈夫、という意識がロシア人スタッフに根付いてしまうとどうでしょうか、いつまでたってもロシアの会社が自立できない、いつまでも日本人の上司がいるから彼/彼女に任せておけばいいでしょう、となってしまうかもしれません。

私にはロシアに進出している外資系企業での勤務経験がないため比較できませんが、日本の企業ならではの独特の慣習もあるはずです。そのような“ノウハウ”も把握した現地人マネジャーが定着してくれることは現地の会社の成長にとって重要なポイントに違いありません。

どなたかがおっしゃっていたフレーズをいつも思いめぐらしますが、マネジメントはキャンバスのサイズを決めて、そこの絵のドラフトを描き、それを部下に渡すこと。部下(この場合はロシア人マネジャー)はその範囲で自分の好きな色を使って絵を完成させることだ、と。つまりは、我々が何だかきれいな曖昧な言葉で、自分で具体的な完成イメージを持たずに「頼むで。」と言ってもダメなんですね。キャンパスのサイズ、絵の構図を自分で決めること。それは少なくとも駐在員の責務であると。というよりは、今自分がいるポジションの責務であると考え、それが出来るロシア人スタッフがいればその人に取って変わってもらってもよいのでしょうね。

まず、自分自身が具体的な完成形のイメージを持った上で具体的な指示を出すこと。しかし、それをずと続けることは危険であるということ。ロシア人マネジャーが自分の意図通りに動く“オペレーター”となってしまっていないだろうか?と問いただすこと。徐々に彼らのフリーで動ける範囲を広げてゆき、行く行くは自らのアイデアを出し、提案を出し、考えられる解決に向けた現実的な選択肢を持ってきてくれるようになっているか、そうなった時には、彼らの成長が大変微笑ましくなる瞬間になるはずですね。そんな瞬間がどれだけ増えるだろうか、それを目標にして日々ロシア人スタッフとギャーギャーやっています。

Author: Author

ロシアのモスクワにある日系企業の管理部門にて長く勤務した後、現在は日本で働く会社員です。モスクワでロシア人と一緒に激動の日々を過ごした中で当時悩み、もがいていた管理業務の情報、体験談を少しでも多くの方々と共有したい、との思いがきっかけとなりブログを始めました。今はロシア、ウクライナの友人たちと連絡を取りながらロシア語の勉強を続け、ただただ平和な世界が来ることを願う日々です。

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