ロシア人スタッフの息抜きのために / How to release stress from Russian colleagues

私はロシア人スタッフのすぐ近くに席があるので、彼らが何を話しているかが耳に入ってきます。出社してきたばかりの時間帯は「ねえねえ、今朝の地下鉄でこんな変な人がいたの、信じられる?」「昨晩のあのTV番組見た?最高だったよね」「昨日はスメタナをあえて作った料理がおいしくて…今日のお昼はどうしようか?自分で作ってきた?デリバリーを頼む?外に行こうか?」そんな和気あいあいとした定番のテーマが続きます。朝から元気で、もうお昼の話か、なんて幸せそうなんだ、と朝からきりきり舞いのこちらは羨ましく思うばかり。

仕事の時間ともなると色々とトラブルが生じます。お互いにミーティング時に合意していて進んでいると思っていたことが「いや、XXXさんからの情報待ちでした」とか「てっきりこうだと思っていました。」なんてことになるとどうしても気まずくなります。(どこまで部下を信頼して任せておくか、どのように上手にリマインドして正しい方向に向かっているかの確認をするか、いまだに勉強中の毎日です。)突き詰めてゆくとこちらが正しい証拠が残っているケースが多く相手を追及することもできますが、それは長い目でみると避けたほうがよいでしょう。こちらが同様のケースに陥ったときにしっかりとやり返されます。(議事録(протокол)を作成し、お互いに約束したタスクをメールで共有しておくことは有効です)

こちらもふつふつと感じている怒りを抑えて、今後の対応方針をできる限り冷静にスタッフと合意したあとはへこみすぎずに過去は仕方がない、この先で何とかするしかない、と気持ちを切り替え。…遠くのほうで当のスタッフが近くの同僚にこそこそと何かを話し始めたら、きっとそれは「なんで私が悪いのよ、XXXが(こういうときは“さん”があえて(?)省かれる。なによ、あいつは、というスタッフの感情が伝わってきます。なんだかその使い分けがときに愉快でもあります。また、スタッフ同士も冗談で「Maria san」「Elena san」とロシア人スタッフ同士で使いあっていたり。)悪いのよ、ぶつぶつ…」と鬱憤を吐き出しているところ。そのあとまた業務に戻ってくれればOK.そんな光景は見て見ぬふり。むしろストレスを溜めない発散方法のようです。しばらく文句が続いている様子を見る時にはさすがにこちらも「いい加減にしないか!もうその件は話し合ったからそれで十分だろう。」と言ってしまう、いや、言うようにしていますが、そう気持ちのよいものではありません。ただ、自由に発言できることが許されている中にも部下としてのけじめ、制限があることは誰もが覚えていなければなりません。当初は経験もない中での指摘は挑戦でもありましたが、それだけは部下に対して態度で示しています。

さて、他にも重要なことと考えているのはこの点です。スタッフのためにも、会議などが無い日には自分のデスクにいる時間が長くなりそうなとき、あえて自分がいない時間帯を作ってあげて、自由に言いたい放題言える時間を作り出すことがスタッフの息抜きに大切なことだ、ということ。どうしても上司である私が近くにいると思うとスタッフはこそこそと話を始めます。とりわけロシア人女性にとっては話すことが大切。(といってもこれは全世界の女性に共通していることと今では確信していますがいかに。)

思ったことをすぐに口に出す傾向があるロシア人スタッフ。それが口論の原因になることが実際多いのですが、その分ストレスを溜めにくくする効用があるのは確かなんでしょう。(日本人はどうしても我慢しようとする傾向があるので、我慢強いことは美徳ですが、苦しい時には外に吐き出すことは、とりわけストレスがたまりやすい駐在生活では大切なことです。)

採用面接にきたイケメンの男性がいると「見た?あのかっこいい人?(人事スタッフに向かって)どう、面談結果はよかった?(ダメ、との答えに)なんでよ?なんであんなかっこいい人を採用しないのよ?」と盛り上がったり、「給料日いつ?もうお金がない!早く給料日がきますように!」―本当に自由に生きているな…と思うときがあります。

あくまで個人的な感覚でロシアでの経験からしか語れませんが、生活が苦しい環境で暮らす人々ほど、冗談の文化が発展しているような気がしています。ロシアはアネクドート(анекдот)と呼ばれる有名な小話の文化がありますが、インターネットを見ていても現代版の小話が随時更新されているようです。苦しい環境になればなるほど、自虐的に自分のことを笑って楽しむ、他の発展した国のことを滑稽に表現して笑って過ごす、そんな生活上の知恵が大切なのかもしれません。

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ロシアのモスクワにある日系企業の管理部門にて長く勤務した後、現在は日本で働く会社員です。モスクワでロシア人と一緒に激動の日々を過ごした中で当時悩み、もがいていた管理業務の情報、体験談を少しでも多くの方々と共有したい、との思いがきっかけとなりブログを始めました。今はロシア、ウクライナの友人たちと連絡を取りながらロシア語の勉強を続け、ただただ平和な世界が来ることを願う日々です。

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