視点を広げて自分の問題の小ささを知る / Broaden your perspective and realize how small your problems are

今も戦争が続くウクライナ東部。ウクライナの友人からドネツク地方で救助ボランティア活動を行っている人のメッセージを受け取りました。

「私たちの目標は、避難を希望する意思を持つ人たち全員を避難させること。多くの人たちは公共交通機関を利用し、危険な地区から自分たちで避難するための時間があります。それでも、時には間近に爆発や銃撃の音が迫ってきた最後の最後に避難を決断する人たちもいます。そんな時には公共の交通機関はそんな危険な前線に行くことはなく、私たちが彼らのために出かけて行って避難させることにします。避難に必要となる費用は何とかなったとしても、予想外に発生するコストもあります。例えば急いで薬を購入しなきゃいけない、避難の途上で温かい食事を取ること、緊急でどうしても必要な物品を購入しなければならない…」

こんなメッセージを読んで考えること。それは仕事で何かに追われていて深夜まで取り組まなければいけない必要が生じるとしても、少なくとも家がある、寝るところがある、食事がある、命を取られることはない。人の置かれている状況と比べて自分の方が優れている、という考え方ではなくて、何というか、ウクライナで命を危険を冒して今もこの瞬間にも逃れている人たちのことをイメージすると、自分の置かれている“当たり前のように感じてしまう”状況がどれだけ恵まれているのか、ということ。

それを毎日考えてみると、仕事で抱える不満や思わず言いたくなること、そういったものが自然と収まっていく効果があることを感じています。

[ロシア法律]裁判所を訪問する人たちの裁判所における規則 / [Russian law] Court rules for people visiting the court

今回は、最近のロシア法律のアップデートについてのニュースをチェックしていて、ロシアにはこんな規則があるのか…という興味から調べてみた内容を書いたものです。以下のリンク先の記事をベースにしています。

Совет судей утвердил Типовые правила пребывания посетителей в судах с учетом замечаний Минюста (advgazeta.ru)

裁判官評議会は法務省の意見を考慮し、「裁判所を訪問する人たちの裁判所における規則」を承認した、という。裁判所にやってくる人たちの服装を含めて、裁判所での然るべき振る舞いを定めた規則が制定され、この中には総則、裁判所への訪問者の入場の組織、セキュリティ対策、裁判所を訪れる人の責任、裁判所への立ち入りを禁止する物品のリスト例の4つのセクションから成り立っているようです。

果たして日本の裁判所での振る舞いを定めた規定はというと…インターネットで裁判所のウェブサイトを検索してみたものの、以下のように注意を促すものが存在するのみかな、と思われます。きっと今のところはこのレベルのガイダンスで十分なのかもしれません。

見学・傍聴案内 | 裁判所 (courts.go.jp)

ふむ、ロシアでは何でこんな規則が制定されたのだろう?規則というのは何らかの理由があって整備されてゆく、というのが一般的と思うのですが、この規則もそのようです。詳細は下記のリンク先にある記事に経緯が説明されていました。

https://www.advgazeta.ru/diskussii/ugolovnoe-delo-v-otnoshenii-lidii-golodovich/

2018年7月、サンクトペテルブルクのネフスキー地方裁判所において、弁護士のリディア・ゴロドヴィッチ氏が民事事件の証人を入廷させようとしたものの拒否されました。この証人は半ズボンをはいていて、「裁判所における行動規準」によるとその服装が相応しくないことからでした。この弁護士は証人を中に入れる許可を得るため、弁護士は裁判所議長の応接室に押し掛け、そこで秘書が非常ボタンを押したために弁護士は手錠をかけられ、警察署に連行されたということです。結果として、権威を代表する人に対する暴行の罪、あるいは暴行をするという脅しに対する刑事事件の罪で起訴されて有罪となり、20万ルーブルの罰金支払いを命じられる、という結果になっています。

この2018年時点では、裁判所での服装に関しては規則として制定されていなかったため、この事件を経て今回の規則策定の検討が始まったことは確かのようです。そして、この規則は裁判官と裁判所職員の身辺の安全を向上させるなど、司法に関する体制と安全を確保するために作成されました。

この規則の中では、裁判所庁舎への入館を拒否する根拠が明確に説明されていて、特に身だしなみが公衆衛生の要件を満たしていない人、スポーツやビーチ用の服や靴を履いている人、膝より上のショートパンツを履いている人、人間の尊厳を傷つけるような服や靴を履いている人、社会や裁判所に対する明らかな敬意の欠如を示すような服や靴を履いている人、本人を特定できないような服装をしている人がその対象となっています。

広大なロシアでは地域によって気候も異なることから一律にルール化することは難しい要素もあるのかもしれません。(例えば、暑い夏の期間、多くの市民が夏の普段着(短パンや薄手のTシャツなど)で裁判所に来るロシア南部地方)

記事の中には興味深いコメントがありました。

”弁護士のマルティン・ザルバビャン氏は、法廷における行動規則の問題に対する統一的なアプローチを開発することは、非常に重要かつ意義深い取り組みであると指摘しています。「裁判所訪問者の適切な行動について話すのであれば、そのようなルールは普遍的かつ統一的であるべきです。統一されたルールは、裁判所の公の秩序を乱すことを防ぐだけでなく、司法が行われる場所での振る舞いに関する透明性は、市民の権利を保障する一種の保証となるからである。劇場がハンガーから始まるのであれば、司法制度は裁判所組織と訴訟手続き遂行のためのルール確立から始まるのです」と弁護士は言う。”

ハンガーから始まる - ロシアでの劇場に入れば、必ずГардероб(読み:ガルデェローブ、意味:クローク)があります。冬になると顕著ですが、来場者は必ずそこで上着を預かってもらいます。係員は預かった上着をハンガーに(フックにかけることも)かけて番号のついた預かり札を渡して…と、この光景が繰り返されています。それは徹底されたルール。それと同じように司法制度も普遍的なルールをそろえて始めるべきである、と。

余談ですが、ロシアで生活してみて良い印象を持ったことの一つに上着の取り扱いがありました。カジュアルなカフェやレストランは別ですが、どのオフィスでも一般的なレストランでも、必ず入口のすぐそばには上着をかけるコーナーがありました。ロシア人の友人の家にお邪魔した時も玄関を入ったらすぐの場所に必ず上着を置く場所がある。靴を脱いで部屋の中に入るのも然り、外と中とで区別していることは衛生的にも、マナーとしてもきっと良いことなのではなかろうか、と。また、ずっと以前にアメリカに住むウクライナ出身の方のところに遊び出かけたときに印象的だったのは、「アメリカの友人を家に招く時には、(靴を脱ぐことをお願いしていても)どうしてもそのルールを理解せずに家の中に土足のまま入ってきてしまう人がいる…。その場で言えない時には仕方がないので我慢して、後で部屋の中を掃除するしかないです…。」ということでした。文化が異なる背景を持つ人たちが共に生活することにはこんなところにも難しさが生じるのだな、という気づきを得た経験でした。

Бедность за порог / 貧困ラインを越えて

ここ最近、過去にファイルしていたロシア記事を整理していて見つけた興味深い記事の紹介です。情報元は2020年1月17日発行のРоссйская газета(直訳:ロシア新聞)に掲載されていた記事。2020年1月15日にプーチン大統領が行った年次教書演説に関するもので、これはすでに4年前のもの。今更…という声が聞こえてきそうですが、昨今の日本で議論されていることと似通った点を感じたのでした。なお、できる限り調べたものの一部誤訳の可能性もある点をご了承いただければ幸いです。

なお、大統領の年次教書演説の概要はJETROのサイトに分かりやすくまとめられていましたのでそちらをご参照することをお勧めいたします。

https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/01/0738c2bc42877464.html

この年のプーチン大統領の演説での重点課題の一つとして、国民の実質所得の停滞に向けた解決策が挙げられていました。2020年1月1日から、一人当たりの所得が最低生活費を下回る世帯に対して、3歳から7歳の児童に毎月給付金を支払うことを提案。これには、ロシアという国を持続させるためにも人口の維持を支える政策が重要であることが演説の内容からも伺えます。

Послание Путина Федеральному собранию. Главное

«Судьба России и ее историческая перспектива зависят от того, сколько нас будет. Сегодня нас почти 147 млн человек. Но мы вступили в очень сложный демографический период — семьи сейчас создает малочисленное население девяностых годов. И показатель снова падает. Суммарный коэффициент рождаемости (количество детей, рожденных одной женщиной. — РБК) составил, по предварительной оценке, 1,5. Для нашей страны этого мало. Для сравнения: столько же было в 1943 году, то есть во время Великой Отечественной войны. Существующие сейчас негативные прогнозы не могут нас не настораживать. Наша обязанность — к середине наступающего десятилетия обеспечить устойчивый рост населения».

「ロシアの運命とその歴史的展望は、私たちの人口の数がどうなるかにかかっている。現在、私たちの人口はおよそ1億4700万人近くいる。しかし、私たちは人口統計上非常に困難な時代に突入した。家庭は今、90年代の少ない人口を生み出している。そして、その指標は再び低下している。合計特殊出生率(1人の女性から生まれる子供の数、RBC)は、事前の推計では1.5であった。これはわが国にとって十分ではない。比較すると、1943年つまり大祖国戦争中も同じ水準であった。今存在しているネガティブな予測を私たちは憂慮せざるを得ない。我々がすべきことは今後10年の半ばまでに持続可能な人口増加を確保することである。」

ロシア大統領直轄の経済評議会メンバーである経済専門家グループ責任者、エフセイ・グルヴィッチ氏によれば「貧困人口のかなりの部分が数人の子供を持つシングルマザーであり、手当を支払うことは出生率を上向きに促す可能性がある。」という説明からも給付金の支払いがロシアという国家存続に繋がる重要な施策であることが理解できます。

現在の任期の初めに、プーチン大統領は2024年までに貧困レベルを半減するという目標を設定したものの、実際にその実現は当初予定のようにはいっていないようです。

関連記事:”Кудрин допустил снижение уровня бедности вдвое раньше 2030 года”

演説の前日、国会議員のグループは、収入が最低賃金の2分の1未満の個人に対して所得税を免除する提案を提案。この案について、会計検査院のアレクセイ・クドリン長官(当時)は、個人所得税の支払いを取り消す代わりに補助金の支給により貧困層の人々をサポートすることを提案した。「とても低い給与に対する課税を低くすることは貧しい人々にとって直接に価値を感じられないものですが(もちろん、いかなる課税の削減は誰からも歓迎されますが)、この場合、貧困との闘いについて話しているのであれば、私は家族の一人当たりの所得に基づく補助金と、それに基づく適切な補助金の配分がより効果的であると考えています。」

⇒ 今年、日本でも低所得世帯への給付金が支給されますが、所得税の減税か補助金の支払いか効果的な方法は何か、という点についての議論やどの国でも同じように議論が交わされているようです。

Rosstat(ロシア政府の統計機関)によると、2019年には賃金の最低と最高の差が13倍に縮小した。 2013 年にはこの比率は 15.8 倍、2009 年には 14.7 倍でした。労働に対する報酬の不平等の縮小は、最低賃金、公務員の給与の引き上げ、および一連の産業の発展の結果です。専門家は賃金の格差が更に縮小することを予測している、とのこと。

公式統計によると、現在、賃金格差が最も高いのは養殖業(28.8倍)、科学活動(19.3倍)、IT(17.6倍)で、最も低いのは自動車生産(7.1倍)と繊維製造業(7.2倍)である。モスクワでは、最も賃金の高い労働者の10パーセントが33万7,800ルーブルを受け取り、最も賃金の低い労働者の10パーセントが2万6,000ルーブル。その差は16.4倍である。最低賃金(11.2千ルーブル)を労働者の1.2%が受け取り、最大給与(50万ルーブル超)は0.1%。最大の割合の従業員は33.9千〜4万ルーブルの給与を受け取ります (9.7パーセント)、5万〜6万ルーブル(8%) および 60千~75千 ルーブル(7.4パーセント)と続きます。

VTsIOM(”全ロシア世論調査センター”。ロシアで最も古く、最もよく知られた世論調査会社) によると、現在、国民の 14 パーセントが現在の経済状況に満足しているという。

回答者の半数以上 (61%) が「平均的」、4 分の 1 が「悪い」と評価しています。ロシア人の回答者のうち52%が自国の経済状況を「平均的」、29%が「非常に悪い」と考えており、14%が状況は改善したとのこと。

「個々人の経済状況に関しては、国民の 78 パーセントが自分自身は貧困層の人間だとは思っていない、という結果が出ている。これを「主観的貧困」というのだ。

と締めくくられていました。

⇒ これは皮肉のこもった表現に思えてならず苦笑いしてしまいますが…”主観的貧困”とは、自分自身が貧困に陥っていて困っている、という主観的な意見に基づく貧困だと理解しています。それを、「私は貧しい人間ではない。」という主観的”非”貧困の答えをもってそれを主観的貧困であると断言し、それが国民の78%にも上る…これをどのように捉えてよいのかは分かりません。富が上位の一握りの人々に偏り、大半の人々は苦しい生活を送っているのだとすれば、必ずしもこの記事の作者の意図するところは外れていないのかもしれません。

⇒ 言い換えれば、自分の現在の最低レベルであったとしてもあるもので満足している、ロシア人の素晴らしい特質なのかもしれません。明らかに西側諸国、日本にはモノが溢れています。モノを手に入れてあまり長続きすることのない幸福感を味わうのか、モノがなくても今あるものから幸福感を味わうことができるのか?人の幸福感はそれぞれ異なるため優劣をつけることはできませんが、金曜日ともなればモスクワ郊外に向かう車列の渋滞や電車の人々。ダーチャで週末を家族やペットとゆっくり過ごし、家庭菜園や家の手入れを楽しむ。そして再び元気を得て月曜からの仕事に戻る…そんな素朴な時間の過ごし方の中に、これまでとは違う幸福感の在り方も知ることができたモスクワでの生活でした。

参考資料:貧困から社会的排除へ 指標の開発と現状

サーシャ・スカチレンコ氏の”あまりにも奇妙で滑稽な”事件を見て思うこと / Thoughts on the “so bizarre and ludicrous” case of Sasha Skochilenko

つい最近日本のニュースでも取り上げられていましたが、ロシアの芸術家サーシャ・スカチレンコ氏がスーパーマーケットの値札を反戦メッセージに取り替えて、”フェイクニュース”を広めた罪で禁固7年の刑を宣告されました。逮捕された2022年4月11日以降の彼女の身に起こったことをまとめたドキュメンタリーがあります。(制作:https://www.currenttime.tv/)

私自身は、日本でもロシアでも実際の裁判所で公判を体験したことがないので、実際の雰囲気を自分の言葉で語ることができません。このような若い女性が戦争反対に声をあげたことで緊迫した状況が伝わってくる動画はきっと我々の知らないロシアの一部を見て取れる貴重なものだと思います。

楽しく過ごすレストランでの美味しい料理を堪能したり、高級なホテルのバーでお酒を楽しみながらの談笑、そんな駐在生活で楽しむ日々を過ごすその隣り合わせで繰り広げられているこんなドラマが。毎日のあっという間に過ぎ行く、忙しくも楽しくもあったロシアでの駐在生活も、実はプーチン大統領の手のひらの上で遊ばれているのでは…そんなことを冗談半分に思ったこともありますが中らずと雖も遠からずなのかもしれません。

2023年4月13日付で掲載されていた彼女のインタビュー記事を読んでいると、人生にとって何が本当に大切なことなのかを、不自由の無い自由を享受しているであろう私たちの多くにとって考えさせられる内容が述べられていました。

«Есть ощущение, что развязка будет неожиданной». Художница Саша Скочиленко дала «Вот Так» интервью из СИЗО, в котором сидит уже год

私は人生の中で正しい道を選択していたことも分かりました。それは、親しい関係づくりに多くのことに力を注いできたことです。自分の人生を創作活動に捧げ、多くの場合それを無償で行い、生活するのも大変で何とかやり繰りしてきたけれど、そのすべては人々からかつてないほどの助けと愛の形で自分に返ってきた。

(拘留される前までの)外での生活では、私は過去数年間…自分に何が起こっているのかを考える時間がまったくありませんでした。ここでは自分の人生を考え直すための時間がたくさんありました。たとえば、有名なミュージシャンやアーティストになることをいつも夢見ていたけれど、いざ有名になってみると、これは人生の中で全く重要なことではなかったことが分かりました。それは大概わずかな成果でしかない終わりの無い道で、どこにも通じていません。 世界のすべての名誉は、自由、愛、親しい友情に取って代わることはできません。

…希望のない真っ暗な憂うつの中に生きている人々の中には、人生の価値を — 自分のものも他人のものも — もはや何も感じず、もはや理解していない人もいる。何のために横の繋がりを築かなければならないのか理解できないし、どうすれば横の繋がりを築くこともできない。これが多くの問題の根源であるように私には思える。

インタビュー記事より翻訳

法廷での彼女の最終意見陳述の全文が以下のサイトに掲載されています。

https://zona.media/article/2023/11/16/o-da-zhizn

https://en.zona.media/article/2023/11/16/yes-life

最近、書棚にあった「収容所群島」(著:ソルジェニーツィン)の2巻まで読み返したところですが、時代は変われど今のロシアで行われている裁判は — スカチレンコ氏が”такое странное и смешное(あまりにも奇妙で滑稽な)”と表現した — この作品に描かれているソ連時代のそれと大きく変わっていないのではないでしょうか。少なくとも昔と違うのは、この彼女の最終意見陳述にあるように、”彼女が逮捕されていなかったら、彼女したことは(彼女を通報した)一人のおばあさん、レジ係とスーパーマーケットの警備員のみが知るところであったところが、(メディアを通して)ロシア国内と全世界が知ることになった”、ということかもしれません。もし興味ある方がいらっしゃれば、是非ともこの「収容所群島」を手に取ってみることをお勧めしたいです。

同じ情報を人は自分の見たいように見て、聞きたいように聞くという事実 / The fact that people see the same information the way they want to see it and hear it the way they want to hear it

テレビを見ていないので、ニュース動画は専らYoutubeで流れてくるものを見ることが多いですが、ニュースで目につくのは西側のメディア。日本の専門家が解説している動画もそのほとんどが欧米と同じ論調。ロシアに否定的な見方が主流です。

一方で、ロシア国営のTass通信, РИА НОВОСТИ, RTを見ると目にするのはロシア側を擁護する内容。

「ヨーロッパの軍隊はロシアに侵攻する準備をしている」

「ウクライナ軍はドネツクの平和に暮らす一般市民を攻撃した」

「世界は西側諸国の罪と過ちのために長いこと代償を払わなければならない」

パッと見るだけでもそんなタイトルが目に飛び込んできます。

以前に見たビデオでは、ロシア国内でもボランティアたちが兵士のために暖かい衣服をミシンで縫っている様子が映し出されていました。彼女たちの内心は分かりませんが、駆り出される兵士のために出来ることを行い、闘いに勝利するために国のために皆が貢献しましょう、という国民の意識を高揚する目的もあるのでしょうか。

一方で、西側メディアでは兵士たちが約束された手当がいまだに履行されていないことや、お粗末な訓練について不平不満をぶちまけている様子を映し出しているものがあったのを覚えています。きっとその一つ一つの情報は正確なのだと思います。しかし、それらが映し出しているのは全体の中でのわずかな一部。でもそれが全てだと思いたい。そんな風に自分たちの意識の中で勝手に想像がふくらみ、それが思考の中で徐々に、あたかも事実であろうと確定してゆくのだろうかと。

人は自分の見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞く。何が正しい情報で何が間違いであるか、その理解をするのがますます困難な時代になっている気がします。以前にモスクワで働いている時、一スタッフが言っていたことを思い出します。「きっと、昔から今見聞きするような凶悪犯罪は存在していたはず。いまはIT技術が進んだことで、以前には見聞きしなかったことを簡単に入手できるようになった。そのために世の中が悪くなったように感じるんだ。」といったことを言っていました。素直にその通りに賛成はしませんが、言えることは、Youtubeでもロシアの兵士がウクライナ側の攻撃で倒れていく様子が毎日のように配信されているという事実。いまこの同じ時間に別の場所では戦争が起きていて、兵士が倒れていく様を撮影し、それがすぐに世界に広まっている…そんな時代に生きているということは確かだと認めざるをえません。

情報を取ることは大切ですが、常にその内容を吟味すること、自分の感情の向くままに内容を解釈をしてしまわないことの重要性を認識させられる日々です。

(参考情報)

Донбасс. Геноцид. 2014-2022

「ドンバス。ジェノサイド。2014~2022。」きっとこのサイトをずっと眺めていて、読み込んでゆくと、知らずのうちに自分の思考がロシア政府の意図するようにコントロールされてしまうのかもしれません。(不快な画像も含まれていましたので、閲覧にはご注意ください)

“Украина за 30 лет столько не сделала”.

РИА НОВОСТИの中で一点興味深いものがありました。この記事が発行された日付を見つけることができなかったのですが、「半年の間にマリウポリでは新しい集合住宅が22棟建築された」ようです。この記事のタイトルにもあるように、アナトリーという住民は「ウクライナ政府はこの30年間、何もしてこなかった」と強く訴えている様子です。今では、学校はロシアのシステム“Дневник.ру”と連携されていて、親は子供の成績、授業のテーマもオンラインで把握することができるとか。記事の写真を見ると綺麗なアパートが建設されている様子が分かります。もしウクライナが再びマリウポリを奪還するのであれば、再びこの場所で砲弾が飛び交い、アパートは破壊されるのでしょうか…

記事の最後では、

Все мариупольцы, добавляет она, хотят поскорее забыть пережитый ужас. И надеются, что их город не просто быстро восстановят, а сделают еще лучше.

РИА НОВОСТИの記事より

「マリウポリの全ての住民は、経験した恐怖をすぐにでも忘れたい…そして、自分たちの街がすぐに元通りになるだけでなく、さらに良くなることを望んでいます。」— という住民の言葉で結ばれていました。

この同じ事実を、もしウクライナを支持するマリウポリの住民が語るとどのようになるのでしょうか…。

ロシアの会計の世界にもウクライナ戦争の影響が…? / The impact of Ukraine war on the world of Russian accounting…?

ロシアで主にビジネスパーソンを対象としているニュースメディア、コメルサント(ロシア語: Коммерсантъ, 英語: Kommersant)の中で、シルアノフ財務大臣のインタビュー記事が掲載されていました。(以下の翻訳は、原則Google翻訳を利用したものですーGoogle翻訳の素晴らしさ!なお、一部の誤った翻訳を修正していますが、私の訳に誤訳が含まれていることに起因する問題については責任を負いかねますのでご了承ください)。

この記事によれば(2022年10月24日発行)、

「アントン・シルアノフ財務大臣は、国際財務報告基準 (IFRS) のシステムがビジネスを行う上で依然として必要であると考えています。彼によると、ロシア企業自身が IFRS を放棄しないよう求めており、財務省はこの立場を支持しています。

RBC(とのインタビューで、シルアノフ氏は、「国際社会によって認められている一般原則、規則」があると述べました。特に、企業の活動は通常、国際的な報告基準に従って比較されます。 「企業の株式・債権の発行、購入、売却の際には評価が必要であり、これは通常、国際的な報告基準に従って行われます。企業自身がこの機会を閉じないように求めています」と彼は言いました。

大臣が説明するように、IFRSを放棄するという考えは、「西側との関係悪化を背景に」生じました。 「IFRSは決して私たちの主権を侵害するものではありません。私たちはこれまでと同様にグローバルシステムの基準と座標にいます。したがって、この場合、「害を与えない※1」という原則が最も正しいのです」と、アントン・シルアノフ氏は考えています。

金融市場国民評議会(NSFR)のアンドレイ・イェメリン議長は、IFRSに基づく財務諸表の作成を銀行自身の裁量に任せることは理にかなっていると述べた。 8 月末、NSFR と全国証券業協会は中央銀行に提案を送りました。」

※1 “生命医学倫理の4原則”の1つを指すものと理解しました。

参照記事リンク:https://www.kommersant.ru/doc/5632360

原文はこちら。

Минфин не планирует отказываться от МСФО

Глава Минфина Антон Силуанов считает, что система международных стандартов финансовой отчетности (МСФО) по-прежнему нужна для ведения бизнеса. По его словам, российские компании сами просят не отказываться от МСФО, и Минфин эту позицию поддерживает.

В интервью РБК (こちらも主にビジネスパーソンを対象とするニュースメディアの一つ)господин Силуанов заявил, что существуют «общие принципы, правила, которые признаны мировым сообществом». В частности, деятельность компаний обычно сравнивается по критериям международной отчетности. «При размещениях, покупках, продажах компаний нужна оценка, которая делается, как правило, по международным стандартам отчетности. Сами компании просят не закрывать такую возможность»,— рассказал он.

Как поясняет министр, идея отказа от МСФО возникла «на фоне противоречия с Западом». «МСФО нисколько не ущемляет наш суверенитет. Мы по-прежнему находимся в общемировой системе стандартов и координат. Поэтому принцип “Не навреди” в этом случае самый правильный»,— считает Антон Силуанов.

Глава Национального совета финансового рынка (НСФР) Андрей Емелин говорил, что подготовку отчетности по МСФО имеет смысл оставить на усмотрение самих банков. В конце августа НСФР и Национальная ассоциация участников фондового рынка направили свои предложения Центробанку.

【記事の中に出てくる団体】

Национальный совет финансового рынка 金融市場国民評議会(と訳しました)

https://rosfinsovet.ru/

Национальная Ассоциация Участников Фондового Рынка 全国証券業協会(と訳しました)

https://naufor.ru/

(参考)ロシア中央銀行:Financial Market Development Strategy

https://www.cbr.ru/about_br/publ/onfinmarket/

【РБКからのシルアノフ財務大臣のインタビュー記事より】

— Минфин опрашивал российские компании, нужна ли им отчетность по МСФО в текущих условиях. Какая реакция получена от рынка и как вы сами считаете, нужна ли такая отчетность сейчас?

— Есть общие принципы, правила, которые признаны мировым сообществом. У нас же не только недружественные страны есть, но и страны-партнеры. Деятельность компаний сравнивается по критериям международной отчетности. При размещениях, покупках, продажах компаний нужна оценка, которая делается, как правило, по международным стандартам отчетности. Сами компании просят не закрывать такую возможность. МСФО — это система учета, которая необходима для ведения бизнеса как внутри страны, так и за рубежом.

— Откуда вообще изначально возникла идея отказа от МСФО?

— Скорее, на фоне противоречия с Западом: все, что не российское, подлежит отмене. Это имеет смысл, если себе не вредить. Например, сегодня используем рейтинги только российских рейтинговых агентств, отказались от использования западных оценщиков. МСФО нисколько не ущемляет наш суверенитет. Мы по-прежнему находимся в общемировой системе стандартов и координат. Поэтому принцип «не навреди» в этом случае самый правильный.

参照記事リンク:https://www.rbc.ru/economics/24/10/2022/63529d159a7947efb82a59eb#chapter_7

より詳細情報が載っている記事はこちら。

Силуанов высказался против отмены МСФО в России

この記事に掲載されていますが、「ロシアでは1998年にIFRSへの移行を開始され、2012年以降にはすべての「公的に重要な」企業による連結財務諸表の作成にIFRS適用を義務付ける法的要件が導入されている」ということです。「今年の8月に財務省はIFRSを適用する必要性についてロシア企業に調査を調査を実施しました。関連する政策の見直しを求める声が高まっていることもあり、同省は市場の意見に関心を持っていた」とあります。大臣は、IFRSからの逸脱は、結果としてロシア企業への不利益となる、という立場のもとでこのインタビューに答えています。

その他、コメルサントの記事の続きでは、

「National Payment Council(日本語にどのように訳してよいのか分からず、英語でこうであろうという字を充てています。この組織は非営利組織で、ロシアの決済システムの関係者の活動を束ね、国の決済システムの安定性と継続的な発展を保証することを目的としているようです。)の理事長であるAlma Obayeva氏によれば、

”今、ESGのために時間を費やす意味があるものではありません。また、ロシアの銀行が現時点でバーゼル規制に従うのは無意味だと思います。アメリカの銀行にとっては称賛され、ヨーロッパの銀行にとっては非常に難しく、私たちには全くもってそぐわない基準を適用するのはなぜでしょうか?”」といったコメントもありました。IFRSだけではなく、ESGやバーゼル規制に対する批判的な見方が有識者の中にあることが伺えました。

今の戦争の展開が今後どうなるかは誰にも分かりませんが、再び自由に国境を越えたビジネスが円滑に行われ、同じ基準のもとで企業が活動する…そんな風に世界が再び一つになる時代が来ると信じています。

政府に従うことと神様に従うこと/ Obeying the Government and or God

今は政治と宗教の関係性について盛んに議論される時代となっていますが、ロシアの宗教といってすぐに思い浮かぶのがロシア正教会(РПЦ – Русская Православная Церковь )。そして、そのトップに君臨するのはキリル総主教。ウェブサイトを検索すると、キリル総主教とプーチン大統領との蜜月ぶりを書いた記事はロシア語でも日本語でもよく書かれていて、両者の関係がどれだけ深いものかが容易に想像できます。Youtubeのロシア語による動画でもキリル総主教を批判するものがたくさんヒットします。私自身、個人的に多く利用している報道番組、Current Timeでも過去の動画でキリル総主教とプーチン大統領との関係性を特集した動画がありました。実際のところ、どの情報が本当に正しいのかを完全に判断することは困難で、あくまで私の感じたままに、この文章を書いています。(誤訳が含まれる可能性もあります、その点は予めお詫び申し上げます)

以下の特集動画では、総主教の座についてからの10年間の彼の歴史を物語っています。この時代にキリル総主教のもとでロシア正教会が担う役割が強力となったこと。ロシア正教会がロシアにおける政治的組織となり、クレムリン(ロシア政府)にとって精神的なお役所(духовная канцелярия)となったことことが語られています。キリル総主教といえば、プーチン大統領の擁護者となり、公の場面では大統領の決定を支持してきたため、その決定による結果の責任を分かち合ってきたこと。「教会は政府とは分かたれているもの。ー それはロシア正教会のことではない。」この動画の中でも、ロシア正教会が喫煙を罪とみなしている中、キリル総主教の莫大な資産の一部はタバコの商売で稼いだものであることを暴いている記事が紹介されています。また、メルセデス、トヨタランドクルーザー、キャデラックなどの高級車を所有していることなどは他の多くの動画でも紹介されている内容です。

動画:0:52-9:01

キリル総主教は、ロシア世界のコンセプトを広めるための”プロモーター”のような役割を担っていて、総主教になった最初の年には頻繁にロシア世界を宣伝し、ウクライナを何度か訪れてこの世界の範囲を広めようとしていたようです。今となってはウクライナ正教は、ロシア正教会とたもとをわけており、これは(キリル総主教の前の総主教であった)アレクセイ2世の時代には考えられなかったこと。これまでは密月の関係で、プーチン大統領と同じ方向を向いていたところ、今ではお互いに分裂(расколь)がある、と言います。

これからお互いがどのように責任を取り合ってゆくのか、どんな結末が待っているのでしょうか・・・。時が明らかにしてくれることを待つことにします。

良識のある一般市民であれば、以下の動画のように感じるのが普通なのではないか…と思うのです。「教会というのは金色の円屋根でもなく、高級車や高級時計でもない。政治が愛国主義を駆り立てるために宗教を利用していることは好きになれない。テレビではプーチン大統領が宗教上の祝日に教会に出かけたことを映し出している。プーチン大統領がどこに行ったのかなどどうでもよい。彼の行う政治に関心がある。それであっても、プーチン大統領がキャンドルを立てる様子が…」

動画:10:03-10:25

昔、モスクワ中心部にある救世主ハリストス大聖堂を訪れたときのこと、中にいたスカーフを頭にかぶった女性に「なぜあなたたちは同じ神を信じているといいながらロシアとウクライナは争っているのでしょうか?なぜ?東洋の日本から来た人間からすると不思議なのですが…」と尋ねると、その信仰心が強いように見える女性曰く「政治は別よ」と一蹴されました。「平和になると思いますか?」と聞いてみると、近くにいた男性がぶっきらぼうに「当たり前だろ」という口調で口を出してきました。どうもそれ以上は会話を続けるべきではない雰囲気が漂い始めたのでその場を去りましたが・・・。

ところで、この大聖堂がある場所は、ソ連時代には市民プールだったようです。今の様子しか知らない私にとってはとても想像ができません。ロシア生活時代に交友のあった当時を知る年配の女性からは、「知ってる?あの教会がある場所は昔プールだったのよ。私も小さい頃はそこのプールに行ったのよ。」と言って懐かしんでいました。

ニューヨークタイムズ紙に面白い記事がありました。タイトルは「プーチンの野心の中心にいるロシア正教の指導者」。

https://www.nytimes.com/2022/05/21/world/europe/kirill-putin-russian-orthodox-church.html

この記事の結びの部分がまさに真実を語っているのではないでしょうか。

Some say he has no choice if he wants to survive. “It’s a kind of mafia concept,” Mr. Chapnin said. “If you’re in, you’re in. You can’t get out.”

彼(キリル総主教)は、もし生き残りたいのであればプーチン大統領の側のグループに留まる他ない。「ある意味、マフィアの世界のようなものだ。もしあなたがマフィアグループの中にいるならば、その中にいるしかない。もう出ることができない。」

どんな大変な時でもちょっとした喜びや美しさに気が付く心を持つことの大切さ / The importance of having a heart to notice a little joy and beauty in any difficult time

キエフを逃れてウクライナ西部に避難している友人から届いた動画からの一場面。あちらでも春がもうすぐそこまでやってきているようです。カメラのピントが合っていればもっと良かったのですが…

今週の月曜日。長らく連絡を取っていなかった友人からボイスメールが入っていました。モスクワにいたときには、いつも陽気な姿しか見たことがなかったウクライナ人の彼の声は疲れていて、暗い声で「先週、キエフから何とか電車で脱出してウクライナ西部の町にやってきたところだ。キエフはロシア軍に包囲されたと聞いていて、現時点では今のところキエフを脱出するのが困難なようだ。キエフの若者たちは最後まで戦って街を守る用意が出来ている。事態は非常に深刻だ…もし武器を持たない一般市民がこのまま脱出できないとなると多くの市民が犠牲になってしまう…。」とのこと。その後…久しぶりに直接会話をすることができましたが、逃れた町はキエフに比べればずっといいけれども、ここでも爆撃があり、空襲警報が鳴る度に地下に避難してはまた地上に戻る…その繰り返しだ、と。

その後、受け取った動画には、「こんな非常事態だからこそ、喜びや、美しさに気が付く心を持つことがとっても重要だ、ほら見てごらん」と言って、今にも咲きそうなつぼみを付けた花の様子を送ってきました。

今はまだ平和な日本に住んでいて、日頃抱える問題がありますが、自分の住まいを突如として捨てて逃げなければならない、これほどまでに大変な状況の中でも逞しく、逆にこちらを明るく、励ましてくれています。同じ事象をどのように捉えるかで物事の見方はポジティブにもネガティブにも大きく変わるもの。今見えている目の前の一つ一つのことを前向きに見るだけで景色がすっかり変わるかもしれません。彼とのやり取りからまた一つ学びました。

「どんなものでもよいので、気持ちが明るくなる写真とか動画を送ってくれ!」という彼の言葉に応えようと、自分自身も仕事の合間に身の回りの自然の美しさや動物たちに目を留める機会になりました。在宅勤務の休み時間には家の近くを自転車で走ってみると、梅も花をつけています。風も暖かく感じられます。冬には聞こえてこなかった鳥のさえずりも。春もすぐそこに。

他国と比べると日本の有難みが分かってくる ー 混沌としたベラルーシと比較して / Compared to other countries, you can see the value of Japan comparing to the chaos of Belarus

人が物事を判断する時、自分の知っている情報や、慣れ親しんだ環境を基準にするしかありません。この真実は駐在生活でよく学習した点の一つです。どんなに自分が経験が経験を重ねてきたからといって、どんなに多くを知っているからといって、新人スタッフのためになることをしてあげようと思って行動しても、それは相手にとってその時点では迷惑でしかないことも。その”迷惑さ”に有難みを感じてもらえる時期がいつやってくるのか、あるいは一生「面倒くさい人だったな」で終わってしまうのかは誰にも分かりません。折れずに続けられるかは、自分を信じれるかどうかにかかっていそうです。また、自分がどんなにたくさんの実務経験を積んで、ロシア企業での実務の実態を知っているからと思って行動しても、上司や日本の本社はそのような現場の事情ではなく、もっとロシアの域を越えて幅広い情報や、さらに高い視点から長期的な視点で物事を考えているケースだってあります。

そんなわけで、日本で生活していれば、文句言いたいところはたくさんあるけれども、世界に比べると、日本という国は今でも世界に比べるとずっと立派な国なのだ、そんなことをベラルーシのニュースを見ていて改めて感じました。マスメディアは一部を大きく見せる傾向があるかもしれず、この様子が全地で起こっているわけではないと思います。それでも、こんなことが起こっている国が他にあることを考えると、日本で生活していて日頃感じてしまう不満も考えすぎることなく、時として沸き上がる私たちの怒りを分散させることに役立つのかもしれません。

報道番組”Current time”(Настояшее Время)より(ビデオ 8:42~)

ロシア語で、Абсурд(アプスールドゥ=ばかげたこと)。英語のAbsurdと多少発音は異なりますが全く同じ意味です。とりわけ5つのばかばかしい理由でベラルーシ市民が逮捕されたことが取り上げられていました。ルカシェンコ大統領への抗議行動のシンボルとして掲げられる白赤白の旗。今ではこの色使いをしたものは、政府に反対する過激主義者として扱われ処罰されるという事件が起きているとのことです。

1.家の住所のプレートを赤と白で作成した家主が逮捕

通常、ロシアでも、道を歩いていれば必ず、通りの名称や通りの番地を示すプレートが掲示されています。ベラルーシのこの住民はこのプレートを赤と白で作成したようです(9:09~)。警察はこの行為を、家の主は正式に許可されていない抗議活動を、白赤白の旗をプレートの形で表示した̚かどで処分。約400ドルの罰金が科せられました。

2.娘の誕生日に花束をプレゼントした母親が350ドルの罰金を支払った(9:50~)

「これは花束の色が何色だったかは、容易に想像がつきますね。」とのこと。今のベラルーシでは花束の色を何色にするかも注意しなくてはならないという状況に。

3.赤と白のラインの飾りが入ったズボンを履いていた若い女性が拘束(10:10~)

一人の若い女性は、カフェから自分の車まで歩いているところを警察に拘束され、拘置所で過ごしたうえに罰金を科されたという。警察に「一体何の罪があって捕まえるの?」と尋ねると「つまり、自分のズボンについて何も言うことはないのか?」と答えが返ってきたとのこと。今では、どんなに赤と白の色合いが好きだとしても、家を出る前には自分の服装の色合いをよく観察して外に出る必要がありそうです。ベラルーシでは、白と赤のソックスを履いていた人が、その装いでもって反政府のデモ行動を行ったと見なされて逮捕されることが生じているようです。

4.ロシアでも有名なお菓子のパスチラによって年金生活の女性が罰金を科された(10:42~)

この女性は抗議活動としてパスチラを白、赤、白に色で作ったかどで罰金を科されたという

5.LG製のTVが入っていた白、赤、白の彩りの段ボールケースをバルコニーの窓に置いた男性が逮捕

窓辺に置いていたことで抗議活動に参加したと見なされ、15日間の拘束となった。(10:58~)

この5つのケースに続いて、ニュース番組内では”ばかげた”罪状で自由を奪われた人たちのケースが続いています。

上記のいずれの場合も、抗議の意図があって意識的に行った行為であろうことから、今の時世にこのような行動をとること自体が相応しくなかったのかもしれません。ただ、このようなことが理由で拘束され、罰金を科されるという理不尽な世の中が存在する、ということについて、日本に住んでいる感覚からすると想像がつきにくい事態です。

翻って今の日本。今はコロナのために旅行にも自由に行けず、外で飲み食いを自由にすることも憚られる時期。ストレスが溜まらないと言えばうそになります。そんな中でも、政治は回り、野党は元気に政権を批判し、国民は自由に首相に愚痴を言う。政府からの指示に従わない飲食店。日本はまだまだ捨てたものではありません。物事をポジティブに、あるいはネガティブに捉えるか、ほんのちょっとした考え方の違いから見方が良くも悪くも変わる。世界を見て経験すると、自分自身の幅もずっと広がりそうです。

世論調査によるとロシア人の3分の1が自分たちを貧しいと見なしているという / A third of Russians in the poll called themselves poor

Public Opinion Foundationの調査結果によると、ロシア人の3分の1は自分たちを貧しいと考えており、市民の3分の2近くが自分たちは平均的な収入である、と評価しています。

調査によると、回答者の64%が自分の収入は平均的であると考えていて、33%は自分が貧しいと考えており、1%だけが自分自身を金持ちだと考えています。自分を貧しいと評価した人は、この貧しい状態は10年以上前(12%)からで、いつもこのように暮らしているか、5年から10年前(それぞれ7%)にこの状態になったと答えました。

貧困の理由の中で、回答者はまず、賃金の低下(8%)、価格、関税または退職の上昇(それぞれ7%)、失業(5%)を指摘しています。また、このグループの20%は、3〜5年で現在とほぼ同じ貧困生活を送ると確信しており、6%は生活水準の大幅な向上を望んでおり、7%は答えるのが難しいと感じています。

調査で指摘されているように、自分は金持ちや平均的な収入の人だと思っているが、かつては貧困生活を送っていた人は、一生懸命働いた(10%)、働き始めた(7%)ことで生活水準を向上させることができたと答えた。 )、より良い給料の仕事を見つけました(5%)。

ロシア人のほぼ半数(45%)は、人の幸福は主に国家によって確保されるという原則に基づいて社会を構築すべきだ、と考えており、38%は自分たちの努力に依存していると考えており、16%は答えるのが難しいと感じています。市民の半数以上(52%)が、ほとんどの場合、人は貧困を克服し、本当に望むのであれば彼らの幸福を大幅に改善できると確信していることが明らかになり、40%は、強い願望があっても、ほとんどの場合、貧しい人々には機会がないと答えました。財政状況を大幅に改善し、8%が答えるのが難しいと感じました。

11月13〜15日に、18歳以上の回答者1,000人を対象に、携帯電話と陸上の電話番号をランダムにサンプリングして、全ロシアの電話調査を実施しました。統計誤差は3.8%を超えません。

参照:https://www.audit-it.ru/news/personnel/1025395.html

なお、上記は記事を直接Google Translateでオリジナルのロシア語記事を日本語に翻訳したものを翻訳されたものに近い状態で掲載しています。ロシア語と英語間の翻訳レベルに比べてロシア語と日本語間の翻訳レベルはまだまだ劣る、という実感がありましたが、今回こうして翻訳してみると、十分に内容を理解できるほどの高いレベルであるという印象です。AIの力もあるのか、翻訳のレベルが上がっていっていることを感じました。

果たして日本の貧困層はどうなのでしょうか、数値の計算方法の根拠を把握していませんが、厚生労働省の統計によれば、平成27年(2015年)時点では15.6%とのこと。そして、子供がいる大人が一人の世帯の貧困率は50.8%。離婚率も高いロシアでは一人親世帯は多く、女性でもバリバリと働いている人を多く見かけてきましたが、やはり親や祖父母の支えというものが無くしてはそれも成立しない気がします。私がモスクワで働いていた時の経験では、子供を持つ女性スタッフの大半は母親や祖母といった身近な存在の支えに頼って仕事を続けていたように思えます。

参照資料:厚生労働省の統計

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seigo_g_171005.pdf