この前の 日曜日に利用したタクシーにて、出会った運転手との会話が非常に深いテーマとなりました。なかなかこんなことを語り合える人に出会えることは少ないのではないかと思って、記録に留めておくべく会話したことを思いめぐらしながら書いています。
今年の冬は、ようやく先週からマイナス気温が続く冬らしい光景になったばかりで雪もまったく降っていない、不思議な冬。「今のモスクワの冬は、誰にも予想がつかないよ。」との話をよく耳にすることが多い気がします。
さて、運転手は40代半ばくらいだろうか、私が携帯のアプリで地図上で指定した住所の位置が間違ってしまい、電話で謝りつつ正しい住所へ来てもらいました。
「ごめんなさい、間違えてしまって。」「なになに、まったく問題ない、大丈夫だ」- そして出発。
走り出して数分くらいだろうか、「今日はよい天気ですね、ようやく冬らしくなりました。」という話をすると、少し沈黙が続きます。あれ?どうもさっきは陽気な感じで話を容易に始められそうだな、と思ったのだけれど若干とっつきにくい様子だろうか。ー すると、「雪があればもっとよいんだがね。雪があれば暖かく感じるんだ」という回答が帰ってきました。
そのうち、「モスクワはどうですか、私は長いことモスクワで仕事していて変化をみていますが、モスクワは良くなったと思いますか?」と尋ねると、(大概は、街はきれいになっても生活は一向によくならない、という文句を言う運転手がほとんどなのですが)
「街は良くなっているけれども、ガソリンも地下鉄もバスもどれもこれもが値上がりしている気がするよ。生活コストが高くつくようになってしまった。・・・ただし、すべてはその人の見方次第。何事も前向きな気持ちで物事に接すれば前向きな結果が返ってくるし、逆に何でも批判的に接しているとそれが自分に返ってくるんだ。」ー なかなかこんな前向きな回答を発言できる人はそういないのではないでしょうか。
「私たち日本人は、どうも我慢強いのだけれども、ストレスを内側に溜め込んでしまう傾向があるように感じています。その一方で、ロシア人は外に怒りを発散することが自然で、それだけ上手にストレスを外に発散できているのではないでしょうか?この点、私たちも見倣う必要があるのかもしれない。」と言うと、
「確かに我慢しすぎるのはよくないけれど、それを周りに発散してその人はOK。でもそれによって生じる周りの問題はどうだ?わめいて、それによって君の怒りを ぶつけられた人がまた次の人に向かって同じことをする。それが回りまわって自分に返ってくるんじゃないか?同じ物事に我々が出会ったとして、その状況は変わらないとしても、自分の今の行動次第でその先に起こる将来を変えることができるんだ。あなたが怒りをぶつけたい。それでも、それを自分のところでそのネガティブな行動をストップさせる。そうすると、それによって次の人が招いていたであろう行動をストップさせることができる。それによって将来を変えることができたことになるんだ。」 ― この言葉は深いです。本当にその通りだと思います。
「本当にそうですね、そして、頭の中で分かっていてもどれだけそれを行動に移すことが難しいことか…。深いです。皆がそのように行動していれば世の中はきっと良くなるに違いありませんよね。」そんなことが車の中での一貫したテーマでした。
今自分が行動を変えることで、その先で待ち受ける結果を変えることができる。自分の行動を受ける相手が私自身の行動によって行動を変えてくれる。つまり私が変えることができる。自分自身がどのように行動するか。
「確かに深いテーマだけど、いたってシンプルだろう?」
ほんとにそう。いたってシンプル。けれども、いかにこのシンプルなことを自分の行動に移すことが難しいことか、それを私自身も含めて毎日身の回りを観察する中で感じています。
聞いてみると、27年間、大学の公開講座に通って講義を聞いており、自分自身で聞いたことを振り返って熟考しているようです。