同じ情報を人は自分の見たいように見て、聞きたいように聞くという事実 / The fact that people see the same information the way they want to see it and hear it the way they want to hear it

テレビを見ていないので、ニュース動画は専らYoutubeで流れてくるものを見ることが多いですが、ニュースで目につくのは西側のメディア。日本の専門家が解説している動画もそのほとんどが欧米と同じ論調。ロシアに否定的な見方が主流です。

一方で、ロシア国営のTass通信, РИА НОВОСТИ, RTを見ると目にするのはロシア側を擁護する内容。

「ヨーロッパの軍隊はロシアに侵攻する準備をしている」

「ウクライナ軍はドネツクの平和に暮らす一般市民を攻撃した」

「世界は西側諸国の罪と過ちのために長いこと代償を払わなければならない」

パッと見るだけでもそんなタイトルが目に飛び込んできます。

以前に見たビデオでは、ロシア国内でもボランティアたちが兵士のために暖かい衣服をミシンで縫っている様子が映し出されていました。彼女たちの内心は分かりませんが、駆り出される兵士のために出来ることを行い、闘いに勝利するために国のために皆が貢献しましょう、という国民の意識を高揚する目的もあるのでしょうか。

一方で、西側メディアでは兵士たちが約束された手当がいまだに履行されていないことや、お粗末な訓練について不平不満をぶちまけている様子を映し出しているものがあったのを覚えています。きっとその一つ一つの情報は正確なのだと思います。しかし、それらが映し出しているのは全体の中でのわずかな一部。でもそれが全てだと思いたい。そんな風に自分たちの意識の中で勝手に想像がふくらみ、それが思考の中で徐々に、あたかも事実であろうと確定してゆくのだろうかと。

人は自分の見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞く。何が正しい情報で何が間違いであるか、その理解をするのがますます困難な時代になっている気がします。以前にモスクワで働いている時、一スタッフが言っていたことを思い出します。「きっと、昔から今見聞きするような凶悪犯罪は存在していたはず。いまはIT技術が進んだことで、以前には見聞きしなかったことを簡単に入手できるようになった。そのために世の中が悪くなったように感じるんだ。」といったことを言っていました。素直にその通りに賛成はしませんが、言えることは、Youtubeでもロシアの兵士がウクライナ側の攻撃で倒れていく様子が毎日のように配信されているという事実。いまこの同じ時間に別の場所では戦争が起きていて、兵士が倒れていく様を撮影し、それがすぐに世界に広まっている…そんな時代に生きているということは確かだと認めざるをえません。

情報を取ることは大切ですが、常にその内容を吟味すること、自分の感情の向くままに内容を解釈をしてしまわないことの重要性を認識させられる日々です。

(参考情報)

Донбасс. Геноцид. 2014-2022

「ドンバス。ジェノサイド。2014~2022。」きっとこのサイトをずっと眺めていて、読み込んでゆくと、知らずのうちに自分の思考がロシア政府の意図するようにコントロールされてしまうのかもしれません。(不快な画像も含まれていましたので、閲覧にはご注意ください)

“Украина за 30 лет столько не сделала”.

РИА НОВОСТИの中で一点興味深いものがありました。この記事が発行された日付を見つけることができなかったのですが、「半年の間にマリウポリでは新しい集合住宅が22棟建築された」ようです。この記事のタイトルにもあるように、アナトリーという住民は「ウクライナ政府はこの30年間、何もしてこなかった」と強く訴えている様子です。今では、学校はロシアのシステム“Дневник.ру”と連携されていて、親は子供の成績、授業のテーマもオンラインで把握することができるとか。記事の写真を見ると綺麗なアパートが建設されている様子が分かります。もしウクライナが再びマリウポリを奪還するのであれば、再びこの場所で砲弾が飛び交い、アパートは破壊されるのでしょうか…

記事の最後では、

Все мариупольцы, добавляет она, хотят поскорее забыть пережитый ужас. И надеются, что их город не просто быстро восстановят, а сделают еще лучше.

РИА НОВОСТИの記事より

「マリウポリの全ての住民は、経験した恐怖をすぐにでも忘れたい…そして、自分たちの街がすぐに元通りになるだけでなく、さらに良くなることを望んでいます。」— という住民の言葉で結ばれていました。

この同じ事実を、もしウクライナを支持するマリウポリの住民が語るとどのようになるのでしょうか…。