会社のコスト削減と職場の衛生管理のさじ加減 / The delicate balance between cost-saving and hygienic management

とある、いたって庶民的なスーパーマーケットにて。野菜は自分で袋に詰めて重さを計測し、計測器から自動で出力されるラベルを袋に貼り付けてレジに持ってゆきます。トマトでも異なる種類が隣同士に置いており、こちらも分からなくなることがあります。レジでは何も言われずに通してくれますし、また、レジで測ってくれるお店では、「このトマトはどっち?」と客であるこちらに尋ねてきて、こちらが戻って確認してくることも少なくありません。なんともこのあたりのいい加減さが好きです。

コストを削減しようとすると、使い捨てのカップやフォーク、スプーンなどが目に付くものです。メンテナンスも不要で、使用後はゴミ箱へ。衛生的にもよく、決して悪くありません。しかし、毎日、従業員がプラスティックのカップを取り、ウォーターサーバーから水をぐいっと飲み、そのまま捨てる。ランチタイムにフォーク、スプーンが使用されては捨てられてゆく。それらが一日に繰り返される光景を目にし、ゴミ箱がプラスティックの山になってゆくのを見るのは切ないものです。そんなわけで全て購入停止。カップはマイカップを持参すること。フォーク、ナイフ類は会社で備品とし、それを皆で利用すること。そんな取り決めとなりました。必要なときのためにプラスティック製品を保管していますが、方針を変えると、それはそれとして上手くゆくようです。

直接関係のない話しですが、昔、大学の教授が言っていたこんな言葉が頭に残っています。「ロシアは一周遅れで世界の先を行っている。」

例として挙げられていたのが、ビンに入った牛乳。世界的に紙が主流になっている中、ロシアでは(教授の時代はソ連?)ビンがいまだに残っていたとか。その後世界が環境に意識を向け始めてリサイクルのビンに目を向け始めたとき、ソ連ではすでに一周遅れで世界に先駆けてビンが主流であった、ということでした。皮肉なのでしょうが面白いですね。

今回テーマにあげるのはペーパータオルナプキン。これも決して高いものではありませんが、毎月それなりの金額と量を購入して利用しています。ロシアに来て感じたのは、紙の文化。日本では会社でも家庭でも布製の布巾で台を拭き、洗って再利用するケースがあります。新入社員の頃、勤務していたオフィスでは毎朝ベテランの女性が布巾で全員の机を拭いてくれていた文化があったのを思い出します。小学生の頃には、学校では必ずハンカチとティッシュを持参するように、と教育を受けて育ったものです(あくまで私の経験に基づくものですが)。各家庭や状況によるので判断はできませんが、机の上を掃除する、というのは外部委託先の掃除担当者が行い、我々のようなオフィススタッフの行う仕事ではない、という意識もあるのでしょうか、オフィス内に机を拭くための布は、掃除道具を入れた部屋に収納されており、何かさっと拭く必要がある場合には何でもペーパータオルです。

ロシアの家庭でも紙ナプキン必ずといってもよいくらい備え付けてあるのではないでしょうか。はて、私が日本にいた時にこれほど紙ナプキンを購入したものだろうか?と振り返っても購入した記憶がほとんどありません。会社でも何かと会社の紙ナプキンを使用して洗った手を拭くことに抵抗を感じていました。自分のハンカチを利用すれば紙の消費を押さえることができるので、会社のコスト削減につながると思うからです。

ところが、インターネットで衛生に関するテーマでハンカチやペーパータオル、ハンドドライヤーに関する記事を読んでゆくと、ペーパータオルが一番衛生的だという。よく考えてみると、ハンカチは使用した後、塗れたままでポケットに突っ込み、またあとでそのハンカチを使用する。傍から見ればハンカチを持参していて素晴らしいと思えるかもしれないけれど、衛生面でみたらばい菌が繁殖しつつあるハンカチで洗った手を汚している行為とも言える。そんな観点からみれば、一度だけ使用して捨てるペーパータオルは一番清潔感がある。― そんなことを今になって認識して、自分自身の長年の固定観念の怖さ、当たり前のことでもハンカチがよいのだ、と思い込んでいるとそれを疑わずに調べることをしない怖さを感じました。そして、コスト削減と職場での衛生維持のバランスの取り方、その単純に数値化できない難しさに思いを巡らしたテーマでした。

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ロシアのモスクワにある日系企業の管理部門にて長く勤務した後、現在は日本で働く会社員です。モスクワでロシア人と一緒に激動の日々を過ごした中で当時悩み、もがいていた管理業務の情報、体験談を少しでも多くの方々と共有したい、との思いがきっかけとなりブログを始めました。今はロシア、ウクライナの友人たちと連絡を取りながらロシア語の勉強を続け、ただただ平和な世界が来ることを願う日々です。

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