ロシア勤務で感じるMBOシステムの欠陥 / The defect of MBO system in my job career in Russia

この週末、街の中心部ではデモ行進があったようで、至るところに警察官が立ちゆく人々の動向を見守っている様子がうかがえました。夜もすでに21時を回っていましたが、このような随分と古めかしいモデルの警察車両が路肩に夜遅くまで止まっていました。管理を担当する身としては、この週末の警察官の動員により、一体どれだけの人件費負担がモスクワ市にかかるのだろう…と思わずにはいられませんでした。(休日の出勤日は通常勤務時の2倍の賃金支払い義務が発生)

今の会社で、ロシア人従業員のMBO(Management by Objectives目標管理)システムを構築しましたが、MBOシステムの根本的な弊害は、KPIが主な評価対象となり、その裏に日々起こるあらゆる日常業務が考慮されていないことだと考えるようになりました。きっと、日本のように人が定着し、ノウハウも蓄積されており、特段の問題もなく日常業務が滞りなく回る体制になっているのであれば、KPIをモニターしてゆけばMBOシステムは目論見通りに回るのでしょう。しかしながら、ロシアの企業で現場を管理してきた経験からすると、常に何かが起こる。スタッフも一定の期間で転職をしてゆき、スタッフの入れ替えが起こる。それが現実です。週次計画を立てても、自分のために時間が取れるのは皆が帰宅した終業後、ということも多々あります。スタッフも日常業務で起こる出来事に想像以上時間と労力を取られることがあります。このような現状を踏まえた時に、評価制度の運用を管理する立場として、KPIのみが部下の評価基準となってしまう、この問題を一層感じています。

世の中にはあらゆるMBOシステムが存在し、コンサルティング会社によって提供されていますが、評価システム自体は、言葉が悪いですが、何だってよいと思います。どんなに素晴らしい内容のMBOシステムを作り上げたところで、運用する人間が正しく運用できないのであれば意味がない。むしろシステムはシンプルであればあるほどよいのではないでしょうか。そして何よりも大切なのはそれを運用する人のMBOシステムに対する理解力です。

私自身は以下のように考えており、これをロシア人スタッフにも定敵に会話するたびに訴えているところです。

自分の人生における芯をもとう

一般的に容易に想像できることは、何千人もの正社員を抱える会社では、全ての社員の評価を適正に確認して相応しい評価をつける、そんなことは無理です。自身の上司が評価をプラス(マイナス)につけても、その上のライン、さらにその上のラインでの相対評価にて評価が下がることもあれば上がることもある。その一つ一つに対して「不公平だ、おかしい、私は過小評価されている」といったフィードバックを細かく指摘して、私は納得しない、と言い張ってもそれがかける労力ほどに良い結果に繋がるのかどうか・・・。個人的な意見では、人間が作り上げた制度、人間が管理するものに完全なものなどなく、したがって評価制度に完全な公平さがあるわけがなく、おかしいと思えることはあって当然です。評価は自分と直属の上司のコントロールが効かないところでどうしても動かざるをえない部分もあり、そんなものに一喜一憂して何になるのでしょう?

ここロシアの現地法人では、規模が小さいがゆえに直接の上司の評価がそのまま直接部下のボーナス・昇進に響く度合が高いことは事実です。部下は「納得できない。この評価はおかしい、私は過少評価されている!」と、一つ一つの評価にとりわけ注目するのは分かります。そのため、慎重に評価を熟考すべきなのは事実です。それであっても、昇進可能なポジションは限られています。どうしても違う部門であっても同じポジションのスタッフ同士で相対評価をする必要がでてきます。ボーナスとして支払える額も限られているために全員に満点をつけるわけにはいかない、というのがマネジメントとしての本音です。過小評価されている、というのは彼・彼女が自分自身を過大評価しすぎていることも否めないと思いますが・・・。

そんな中でも、被評価者に対して伝えたいのは、評価について過度に意識することがないように、自分の人生における価値基準を持とう、ということ。自分の人生における大切なことを持とう。そうすれば世の中に見られる不公平さや理不尽さに対して ― この評価制度についても ― やり場のない怒りを開放するのに役立つのではと考えています。そうは言ってもなかなか理解してくれる人がいないのですが…。ただし、この私のスタンスは自分の価値観が会社や上司の考えと相反することがあるために、局面に応じては注意が必要であろうと。それはある意味目先の評価を犠牲にすることになり、もしかすると将来に評価される可能性がある、ある意味会社の出世を願う人にとっては謝った考え方であるのかもしれません。

上司と定期的に会話をしよう 上司はきちんと部下に1対1ミーティングでフィードバックをしよう(私の経験上、Weeklyベースでのがベスト)

不公平なMBOシステムに少しでも公平さを与えるための努力が常に求められます。目標に関して上司と会話する機会が無く、半年(一年間)ごとの上司との面談で詳しく議論する時間をとるだけとすれば、もはや面談時間は大して意味がないものと言えます。そうなってくると、上司と部下の仕事以外での人間関係や、付き合いの度合いなどが評価に作用される事態も生まれてくるのでしょう。人間なので仕事以外の部下に対する感情が評価に与える影響、これはどうしても生じてしまうはずです。

目標に対する上司の希望、要求と達成状況をきちんと1対1で語り合う場を設けることが非常に重要です。私は毎週部下と定期的にKPIについて語り合う時間を、たとえわずかとしても自分の部下と設けることが大切だと考えています。決して毎週のはじめ、おわりに全員と行う義務はありません、一週間の中で日時をずらしてゆけば自分の負担にもならないと思われます。

ロシア人マネジャーの中には「いつも部下と近くに座って一緒に仕事をしているのだから仕事内容は分かっている。目標の達成状況だってクリアだ。なのでOne-on-one meetingなんて必要ない」という人もいます。しかしながら、目標に対して真剣に議論する場を個別に設けることは非常に重要です。時に厳しいことを言わなければいけないのに、皆のいる場では言えませんし、お互いの意見をぶつけ合うことも必要です。私自身、自分でできる努力を一生懸命にしていたものの上司の反応は芳しくなく。後から上司からは「自分の優先順位とXXXさんの優先順位は違うので・・・」と言われてしまいました。定期的なフィードバックは重要です。

会社以外の大きな枠組みで、もっと広い分野で自分自身を捉えよう

会社で上司のお気に入りで、社内政治をうまくできて評価されているからといって、それが他の世界でも通用するはずはありません。でも一方で、その重要性をよく認識することも大切だと思います。それをあからさまに否定する人もいるのでしょうが、これもやはり人間が運用するシステムであるがゆえに、その側面を理解して行動することも必要ではないかと考えています。

そんな中でも、大切なのは会社という小さなコミュニティの中だけで自分を捉えることなく、汎用的に通用するスキルと経験を持とう。そんな風に定期的にロシア人部下に言い伝えているのです。が、どうしても目の前のこと、自分の所属するコミュニティの中での自らの位置づけに目を奪われる傾向が強いのが人の常なのかもしれません。長年同じ会社で一つの部門を管理しているという自負が強すぎるがゆえに、こんな小さなコミュニティの中だけで自らの位置にこだわってしまう人がいるように感じられます。

給料が低い、と文句を言うのであれば、適正に自身を評価してくれる会社へ転職するのがよいのでは?と思ってしまいますが、日本と比べて転職がいたって普通に行われるロシアであっても、就職活動をすることはエネルギーを要することであり、そう簡単ではないのかな、とも思うことがあります。

最終的には直接の上司が、部下の日常業務で発生する種々の課題に対してどれだけの理解力を持てるか ― どれだけ時間と労力を要しており、どれだけ期のはじめに設定したKPIに影響を及ぼすのか ― この理解がすべてではないでしょうか?KPIはある種、挑戦。一方で日常業務で発生することはルーティン業務。しかし、それ無くしては挑戦もできない。目立たなくても非常に重要なルーティンです。日常業務に時間を割かざるをえないがゆえにKPIの進捗が滞ってしまう。KPIだけを見れば満足できない結果ですが、上司が部下の業務を理解しているのであれば、どうして目標に対する進捗が芳しくないのか、上司は理解してあげるべきです。そして、ふさわしい目標管理の着地点を一緒に見出すべきではないでしょうか。もちろん、部下ができることをしておらずにさぼっていないのであれば、の話です。

Author: Author

ロシアのモスクワにある日系企業の管理部門にて長く勤務した後、現在は日本で働く会社員です。モスクワでロシア人と一緒に激動の日々を過ごした中で当時悩み、もがいていた管理業務の情報、体験談を少しでも多くの方々と共有したい、との思いがきっかけとなりブログを始めました。今はロシア、ウクライナの友人たちと連絡を取りながらロシア語の勉強を続け、ただただ平和な世界が来ることを願う日々です。

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *