ロシアの冬、”人間力”との闘い / Battle for “Humanity” in Russian winter

業務効率化の目的でIT機器を探しに訪れた電気屋街にて。堂々とTOSHIBAと名乗ったお店の中にはacer、Dell、LenovoなどのLaptopが並んでいました。お店の看板からTOSHIBAは取り外すべきではないだろうか?

ロシアの冬。

ただでさえロシアでの生活は行動範囲が限られているのに、それに輪をかけて制限が与えられる。雪が降って解けて凍った足元をよちよちと歩くのも一苦労。夏は10分でゆけた距離が時計を見ると15分以上かかっている。太陽の日差しも浴びること機会も少なくなり、何だかいつも眠い気がするしだるい。なぜだか分からないけれど、冬になると人も怒りの沸点が下がってしまい、ちょっとしたことでも火がついてしまう。そんなこんなで皆早く春の訪れをイライラしつつもうずうずとしながら待ち遠しく焦がれている。

といっても冬のロシアは汚い部分も一時的に白の世界で覆われて、公園も川も全く違った様子を見せてくれるのはとても好きですが、今回のテーマは主に人に関して。

冬を過ごして、いかに基本的なことがとても大切なことか学んでいます。よく寝て、健康を保ち、病気にならないこと。それに尽きます。

毎日の仕事量が多く、やるべきことに追われる中でなかなか仕事を切り上げることは難しいのが事実。でも、明日のことを考えると明日はまた明日で闘わなければならない。でも今の仕事を途中で終えるのはダメ。なのでやる。でもそうすると帰れない。実際帰れない…。そうなると業務内容そのものを見直し、効率的に働く必要が出てくるので今度は体のケアだけではなく、テクニカルな面でも取り組みが必要となってくる、そんなわけですべては一緒になっていて切り離すことはできないですね。身体が強靭であっても、24時間という有限のものは誰もが同じであり、さすがに寝ずに仕事を続けることは不可能。やはり休息が必要です。

まず身体があって、次に業務改革。身体が元気であればまず自分の気持ちをコントロールすることも容易になる。眠い、だるい、体調が悪くて気持ち悪い…そんなことでは集中力も続かず、イライラしやすくなる。身の回りで起こる大多数の問題は、怒りのコントロールができなくなった時に発生するものが多いように感じています。それは心身のどこかにストレスを抱え込んでいることが原因ではないでしょうか。自分の人間力を高め続ける。限界の無い挑戦。

決して睡眠が最善の解決力ではないものの重要なポイント。心配事があれば今度は熟睡できなくなるので「さあ、よく休んで眠りましょう!」なんて言っても全く説得力がないのですが。

かつて、4:30起床で生産性Upを、といった類の本を読み、これだ!と思い実践したことが一時期ありました。実際に行うことは大変難しく、むしろ生産性ががっくりと落ちてしまいました。ミスも連発。ハウツー本は、「どのように」の技術面を中心に記載していますが、大切なのは「なぜそうすることが必要なのか」という本質を常に考えることが大切だと、かつて何十冊もそのジャンルの本を買い込んで読み漁ったあと、実際に取り組んでみてすべてが決してうまくいかなかった経験も踏まえて学習しました。例えば、4:30に起きること、何時間勉強したか、何時間机に向かっていたか、何冊本を読むのかなど、それ自体を達成すること自体が目的となり、本来の大切な本質を忘れてしまっていたことがあります。あとは、あらゆるハウツー本に手を出しているとき、それはきっと自分に自信が無いから、読んで自分は成長した気分になる、それに浸っているだけであると経験から考えています。もっと自分の経験から学んできた自分にふさわしい方法に沿って、かつ常に自分にもっと合った方法がないか試行錯誤し続けてゆくことが必要なのでしょう。

よい睡眠をとるためには、とくに冬は長めの休息が必要。4:30起床は無理。何よりもよい睡眠を。それと共に高い集中力を。その中で可能な業務効率化を。そして何よりも人間力の向上を。そもそも人間力、という言葉自体が多くの意味を包含していて形容が難しいです。

モスクワでビジネススクールの無料セミナーへ / Visit to the free business school seminar in Moscow

訪れたビジネススクール開催による無料のセミナーにて。みな熱心に聞き入っており質問も頻繁に飛び交う、アクティブな時間でした。

この冬のシーズン、ie business schoolというスペイン発のビジネススクールモスクワ校が主催する無料のセミナー“IE Insider Day – Moscow”があったので出かけてきました。購読しているロシアビジネス紙の広告メールを見て、おっ、こんなのがあるんだ、面白そう、行ってみようと思い立ち申し込みを完了。ieがInternet Explorerのことと完全に間違った認識でもって訪れたのは赤の広場のすぐ横にあるビルオフィスの一角。一体m2単価どれだけの金額を払っているのだろう…というのが最初に頭に思い浮かんだ言葉。

後で知ったのは、このセミナーは実質学校の生徒集めのための広報活動が主な目的であることと、この学校は世界でもTop10にランキングするような大変著名なビジネススクールであること。(参考URL https://www.ie.edu/business-school/)

集まっていたのは50人くらいだっただろうか、中には小学生の女の子から中学・高校生くらいの男の子までも親と一緒に。開始前から軽食と飲み物が用意されていてそれまで時間を過ごした後、部屋に案内されてセミナーが始まった。

講師の方はアメリカから来ていたGoogleに勤務する、このビジネススクール卒業生。講師がアメリカ人ということもあってか、質疑応答も含めてすべて英語で行われた。

今回参加したテーマは“Harnessing the power of Big Data”

自分の書いたメモの字があまりにも汚すぎて判読不能なのが残念なのだが、

・今Online上にあるデータの90%はここ2年の間に作られたデータ

・Big dataの80%ほどは体系立ててきちんと分析されていない

(この情報の正確性への責任は負いかねますのでご了承ください)といった導入から始まり、なぜこれからの世の中Big dataが重要であるのか、それをどのように活用してゆけるのか、具体的に彼女が学生時代に作ったというオンライン上で利用できるシステムのモデルを見せていただいた。内容自体はとても引き込まれるもので参加してよかったと素直に思う。

一番面白かったのはここからで、「さて、それではなぜ私たちのビジネススクールに留学するのが良いことかぜひ説明させてください、さあ、卒業生の皆さん前に来てください!」と司会の女性が元気に後ろに陣取っていたスクールを卒業してロシアのビジネス界で活躍されている元生徒たちを紹介。

ここから第二部が始まり。

ロシア第一位のSberbankでマーケティング部門で活躍しているという方、その他の方は具体的な会社名を聞かなかったがいずれもIT関連の専門を生かして活躍されているようだ。留学は10か月ほどスペインに行き勉強するようで、皆さんはどれだけ学校の環境がよいか滔々と語っていた。学校の紹介Movieを観たけれど実際に本当に素晴らしい環境。時間がふんだんにあった学生時代にもっと勉強しておけばよかった…と何度思ったことか、そして今は勉強する意欲が非常に高いのに、どっぷりと毎日を勉強につかるための時間がないというギャップ。人によってロシアに戻る人、どこか別の土地で仕事を見つけてその土地に残る人もいるらしい。ただ想像するに、外国企業は外国人(この場合はロシア人)を雇うために自国の人間ではなく、VISA、雇用許可などの手間をかけてでもロシア人を雇うわけで、そこまでしてでも自分を雇う価値を企業に認めてもらうことは困難な道であるのは確かだろう。

この部屋を出ると、セミナー前に滞在していた空間に戻り懇親会の開始。再び軽食とコーヒーなどをいただきながら卒業生やスクールスタッフとの交流が始まった。一人の参加者は、もう何度か参加しているようであった。少し経緯を聞いてみると、元IT業界にシステムエンジニアとして勤務。環境を変えたかったのだろうか、会社を辞めてしばらく海外旅行に出たようだ。仕事はまた見つかるものと考えていたら、どうにも見つからず数年無職という。「この学校のセミナーテーマは面白いので何度も来ているんだ」と言って食事や飲み物をがっつりといただいている様子。見ていると周りとのコミュニケーションもなく、う~ん、タダメシを食べに来ているだけなのでは、と思ってしまった。ほぼ当たりでしょう。このビジネススクールは毎週のようにこういったセミナーを開いているらしく、ロシアにとどまらずグルジアやアゼルバイジャン、カザフスタンといった旧CIS国家でも。そのすべては生徒集めのための広報宣伝活動。そしてその中にはこういった人も混じっているんだろうな…。

別の参加者は、なんと同じビジネスセンターに入っている別の企業に勤めるスタッフでこれは驚いた。「いつもコーヒー飲むところにお昼の時間帯にはいるだろうから、またビジネスセンターで会おうや」なんて言われて笑顔で別れた。

留学するには金銭的にそれなりに余裕のある家庭しか許されないのだろうか、身なりだけでは全く判断ができないので、金銭的なゆとりについては分からないが、少なくとも教育熱心な親の方の様子や若い子たちが自らの将来を考えてスタッフの方にあらゆる質問を浴びせている熱心な様子、週末にそんな世界をのぞくことができて、有意義な朝の時間を過ごすことができました。

ロシアの車両保険 / Car insurance in Russia

高齢のおばあさんと犬の微笑ましい後ろ姿。本日の日中に散歩した公園にて。

ロシアでも日本同様、交通事故を起こしてしまった時・事故をもらってしまった時の保険は欠かせません。ただし、日本のように対人・対物賠償保険無制限、というのは聞いたことがありません。ロシアの保険に関する基本的な情報についてまとめてみました。 

ОСАГО (обязательное страхование автогражданской ответственности) 

オサゴ/Osago 日本でいうところの自賠責保険。車を運転する場合は、必ずこの保険加入が必須。この保険は自分自身ではなく、相手側の車両、相手ドライバーの被害を補償するもの。総額は500,000RUBで、相手方の車1台あたり最大120,000RUB、相手の健康被害については一人あたり最大160,000RUBと制限が課されているようです。 

この記事を書いている現時点で、Osago無しでの運転が発覚した場合の罰金は理由により500~800RUB(約800~1,300JPY)。ロシアのビジネス紙”Vedomosti“の記事によれば、Osagoを敢えて購入しないドライバーも存在すると。それはこの低い罰金が理由であり、罰則を厳しくする必要がある、と書かれていた。 

参考URL :

https://www.vedomosti.ru/finance/articles/2018/09/07/780253-osago

ДСАГО  ( Дополнительное страхование автогражданской ответственности водителя.  )

ディサゴ/Dsago この保険は上記のOsagoの保険適用上限を上回る部分をカバーするための任意保険。概ね1M RUB(約1.7M JPY)の保険をかけているのが一般的、と聞いています。周りのロシア人に尋ねると(尋ねた人数も少ないので信憑性は高くない)加入している人は決して多くない印象でした。「必須ではないこと、保険購入額が高いから」という。 

モスクワのようなメガロポリスで、ベンツ、BMW、レクサスといった高級車が日本とは比較にならないほど多く走っている場所では、修理にかかるコストを想像すればこの保険は必須ではなかろうかと思えてなりません。この保険はOsagoの保険加入期間と一致してなければなりません。複数の保険会社があらゆるプログラムを販売していますが、私の知る限り、Osagoとは別の保険会社でDsagoを後日購入しようとすると拒否されたことがありました。一つの会社で両保険加入が必要です。

КАСКО 

この保険は自らの車両にかける保険です。この単語自体が省略形ではないようでその言葉の通り、Cascoと呼びます。主に、事故による自分の車が被った損害と盗難(угон)、この2つが対象で、いずれかあるいは両者を選択するCascoを購入することになります。保険金額に制限はないようですが、保険加入時の対象車両の価値を考慮して決めることが一般的のようです。 

さて、街を歩いていると事故のケースを日本にいた頃よりも見かけます。先日は目の前で、路肩に止めていたTaxiが後方に止まっているTaxiを完全に見落としてか、しっかりと後ろ向きに突っ込んでいました。それぞれのTaxiから二人のカフカス系のドライバーが出てきて熱くなっていましたが、その後は知りません。ぶつけた側のドライバーがまるで「お前も悪い!」とでも言わんばかりの論調で言い返している、その感覚はなかなか理解できるものではありません。

業務効率化とリスペクトのはざまでもがく / Struggling between work efficiency and respect

深夜近い地下鉄駅「Парк победы(Victory park)」にて。空間の広がりの中に一人で立っていると不思議な感覚に。

ステレオタイプで申し訳ないのだが、ロシア人はやたらと立派なオーバーな言い回しで、そして少々冗長な言い回しをする人が多い気がする。といってもあくまで日頃接するロシア人スタッフとのコミュニケーションを通しての評価でしかないのですが。

それは恐らく、ロシアでは立派な詩や物語などを人前で朗々と、抑揚をいっぱいにつけて語る文化がある(ように思える)ことと関係があるのではなかろうか?きっと子供の頃からそのような場面が用意されているに違いない。テレビを観ていると、子供が聴衆の前で語る場面、それを大きな拍手でたたえる様子、(観光名所でお金目当ての目的もあるのだろうけれど)若者が大きな声で身振り手振りで立派に詩を語っている場面、先月に訪れたロシア人の友人の結婚披露宴では、新郎新婦に向けて新婦の姪にあたる小学生の女の子が立派な口調で素敵なお祝いの言葉を朗読していた。

上の立場になればなるほどに発する言葉の重要性、その言葉の持つ重さを十二分に感じる一方、日常ビジネスにおいてはむしろ逆で、“演説”や“物語”を書くのはもういいから…立派な言葉はいらないからとにかくシンプルなメールと会話を心がけてくれないか、といつも請願する日々。

また、時々かかってくるこんな電話。受話器をとって「Hello」と応えると、自動音声が流れ「あなたには、ロシア連邦第XXX条に定められている通り、(間が少しあった後に)無料の法律相談を受ける権利があります。」と。いちいち堅苦しい法律の文言を最初に持ってくるな、と言いたくなり自動音声にそんなこと言っても意味がないので仕方なくそのまま受話器を戻します。

Dear XXX

相手一人に対してメール送信の場合、誰にメールを書いているのか容易に分かるため、Dear XXXという書き出しはカットしてよいと考えています。社内ビジネスメールはいかに相手に早く的確にポイントを伝えることができるか?が重要で、メールだけ見ればドライな人に見えてしまっても、それは直接のコミュニケーションの温かさでカバーできると考えているのですが、世の中どうもそう上手くいかないようです。社内全員に向かって「これから私は一人に対してメールを出す場合、メールの書き出しに名前を入れるのを止めます、効率的に仕事をしたいからです。皆さんも私に対してメールを書く際にはXXXsan、は一切不要です。効率的に業務をしてゆきましょう。」とメールを書いたものの、受け入れられませんでした。今でも。名前を書いてメールを書くことはとても重要なことなんだ、と。人に対するリスペクトが足りない。あなたが私に名前無しでメールをしてきたら(つまりリスペクトをしていない証拠)、私も宛名無しで返事します。名前を入れてメールを書きだすことは大切です、とスタッフの一人に言われてしまいました。

業務効率化、これは正しいはずですが、そこから人への敬意を表すことを外すことはあってはならないのだ、と学習しました。今では相手の名前を入れてメールを書いています。といっても、次第にいつかはこちらの考えている意図も分かってくれるはず、日頃の態度で相手への敬意を示しつつ、それと共に徐々にメールの効率化に向けてじわじわと密かに努力中です。といっても相手の名前をカットすることは今後もないでしょう、今のところは。一つのことを全く異なって捉える、ほんとに人は深いです。

ロシア人スタッフが言うことを聞いてくれない? / If Russian colleagues don’t listen to me?

モスクワ市内にあるマクドナルド内にて。大きなタッチパネルでオーダーしています。カードで支払いを終えて、レシートに印字された番号がカウンターのモニターに表示されると自分の注文したものが準備できた印です。日本よりもずっとキャッシュレスが進んでおり、大変便利です。とある方がおっしゃっていましたが「情報統制国家になればなるほどキャッシュレス機能が発達しているのだ」と。カード使用履歴から人の行動がすべて把握できるので、確かに指摘の通りかもしれません。

自分の思い通りに物事が進まないとき、ロシア人スタッフが自分の考える通りに行動してくれないとき、どれだけそれを許容できるか、これはもう一生のテーマでしょうね…。

役職からすれば、自分の立場はロシア人スタッフよりも上。彼らは私の指示に対して、こちらが要求するとあればすぐに回答を出すべき。まだ出来ていません、という回答は許されるものではありません。実際にそう言いたくなることも多いですが、そう言ってしまうと決してうまくゆきません。

ロシア人という国民性はかつての帝政ロシア時代、現代においてはPutin大統領のような強い権力者がいて彼らが出す命令に従ってただ行動することを好む。自分で考えることをしたがらない、という話を耳にすることがありますが、それでは自分自身が弱弱しいから部下は従ってくれないのか?いや、むしろ、上司が頼りなくひ弱な人であれば誰がこんな上司についてゆきたいと考えるでしょうか?上司はリーダーシップを発揮するにしても、サーバントリーダーであるにしても部下を導いてくれるという意味で強力な人であるべきなのは万国共通のはずです。

ロシア人スタッフだって色々考えています。それががっかりするレベルであるとしても考えています。もっと考えてくれ!と言いたくなるとしても、根気よく自分が彼らのモデルとなって行動してゆくこと、そして一人でも多くの“フォロワー”をロシア人スタッフの中に作り上げてゆくことが大切なんでしょう。しかしながら、そんなに悠長にスタッフの成長を待っている時間がないのが事実なのですが、それでも一歩ずつ着実に階段を上がってゆきたいです。

長く使用している来客用のカップ、お菓子の出し方、器の変更ができるのではないか議論したことがありました。そんな小さなことでもいざ観察すればもっと違うデザインの器にして印象を変えることができること、自分がお客さんの状況であればどんなお茶の出し方をすると喜ぶだろうか、他社ではどんな風に来客のゲストをもてなしているだろうか、考える要素はいくつかあるでしょう。そのようにちょっとしたことでも、日頃目にする当たり前の日常のことでも考えるよい機会になるのではないか、そう訴えたかったのです。しかし、今でも時に言われるのですが、「XXXsanはあのときお茶の出し方云々どうしようもないことを話すだけで1時間は使った、なのにもっと大切な給料の話にはほとんど時間を割いてくれないじゃないの!」と。言葉足らずでも、もっとお互いの意思疎通がまだまだ必要なようです。

一般的に、世の中のハウツー本では、スタッフが言いたいことを言える雰囲気作りが大切と言われます。その通りです。でも、本当にそれが行き過ぎると今度は皆が疲弊します。みんなが自分に発言力があると思い、思い思いのコメントを言い続け、マネジメントが下す決定にも反対を言い出すようになるとどうでしょうか、収拾がつかなくなります。どこかでバランスが必要です。お互いに自分の持つ「限度のある自由」を理解すべきです。私も「みんなもっと声を大にして自分の意見を述べてくれ、ウェルカムだ」と言いますが、その一方で私自身の意見はすでにあるわけで、彼らに意見を述べられたところで自分の意見と相違した意見が大半を占めてしまうと、今後は自分を苦しめることになります。

社長がYesmanで固めることはよろしくない、社長に言葉を申すような人を周りに置くことが大切である ― これがハウツー本で見る多くの意見だと思います。しかし、自分でマネジメントをしてゆくと、むしろYesmanで固めることの効用も分かってきます。私としては、むしろそれは一つの正解であろうと考えるようになりました。Yesmanで固めることがなぜよくないのか?人間は弱いので自分だけの考えではぶれてしまい正しい回答を見いだせないこと、Yesmanも自分の意見に同調するので誤った方向に会社と社員を導いてしまう可能性があるからでしょう。そんなときに自分に意見をしてくれる人間がいるのは確かに重要です。

しかし一方で、リーダーが全員を正しい方向へ導ける能力を持っているとき、国や会社が非常事態の状況に陥っているとき、有能な独裁者に先をまかせて何が悪いでしょうか?(独裁が危険というのは、どんなに多くの素晴らしい独裁者としても、最後まで正しい判断のもとに民を導く力が限られているからだと思います。)そんなとき、独裁者は自分の周りにいるYesmanを使って迅速に自分の意思を実現させてゆきたいと考えるのが自然でしょうか。

話が脱線しましたが、自分の考える通りに進まないとき、どれだけ自分自身が怒りを抑えられるか、まずはそこがスタート。そこでポロっと以前から潜在的に溜め込んでいた不満を口から出してしまうか、嫌味のたっぷり詰まったメールを書いて送信してしまうか、本当にそこがすべてと感じています。スタッフを評価する際に気を付けるべき「ハロー効果」。どんなに頭で分かっていてもいざというときにはそれが如実に、無意識に表れてしまう、その事実も感じています。マネジメントというのは大変目に見えにくい、数値化しづらい、何とも形容しづらい人間力を試される一種の特殊能力なんではないか、そうも思えてきました。

さて、日系企業という、ロシアでは外資系企業にあたる会社であるがゆえにロシア人スタッフはより自由を感じて自由な発言を行うこともあるのかもしれませんが、この自由な発言が出てくるというのは国にしても会社にしても、成長していることの証拠といってよいのかもしれませんね。

ロシア人スタッフとのコミュニケーション―具体性を / Communication with Russian colleagues – “Concreteness”


信号待ちの歩行者。救世主ハリストス大聖堂(Храм Христа Спасителя)を向こうにみて。ここ最近はプラスの気温も続き、長く積もっていた雪もだいぶ解けてきています。路上は今度は氷となってかわり、足元が非常に危険な日々です。

私自身は根本的に同じ人間であるという観点から、ロシア人であろうと日本人であろうとマネジメント方法に本質的な違いはない、と自らの実体験からこのように考えるようになっています。各自が育ってきた環境=文化が染み込んでいるため、その外面にある皮膚のようなものは変わることはありませんが、ケガをすれば同じ赤い血が流れるように、嬉しいこと悲しいこと、泣きたいとき声を張り上げて怒りたいとき、心の中は同じのはずです。

コミュニケーションのスタイル

ふと自らを振り返ってみると、自分がスタッフに話す内容は具体性に欠ける傾向にあると気が付きました。よく言われるように、日本ではハイコンテクスト文化が一般的であるがゆえ、それが染み込んでいるのだと思われます。むしろ、ロシアに来る前はそれが当たり前のことでしたので…。そして、具体性のある指示、会話がいかにビジネスとして基礎であり、大切なことであるかも学んでいます。

「倉庫業者との関係改善を図るように」

この指示は、仮に彼らが要望する価格アップを100%受け入れて相手に喜んでもらうこと?相手の会社のマネジメントと会食に出かけて交流を図ること?こちらの価格値下げを飲んでもらって、コストダウン達成により倉庫業者とのビジネス面で我々として価格改善を達成すること?一体何を図るように指示されているのか、分からなくなります。

一方で、この文言を受け取った側は、会社の置かれている状況や日頃からの上司、同僚との会話から何を要求されているのかを掴む努力が必要なはずです。むしろ、この文言で部下が動き、こちらの意思を遂行できるようにするのが一番の理想でしょう。これを目指すことは間違いないです。ただ、残念ながら今時点では私の周りにそんな部下はいません…。今日も、日本人駐在員に関するビザについて一つのシンプルなことを理解するのに30分以上もかかりました。ひたすら喋るロシア人スタッフの怒涛のような会話をせき止めるのに一苦労、会話よりも絵で会話することをがお勧めです。

過去に上記の指示をスタッフに出した時、考えられるいくつかの案を出され、あなたはどれを希望しているのか教えてくれないか?と言われた際には、今会社が置かれている状況を踏まえて自分で考えられる方法で必要な選択肢を取って行動することがお前の仕事だ!と怒りのこもったメールを書き連ねたことがありました。今考えると、こちらの言わんとしていることはわかりますが、指示を出す内容としては不十分で、非があることを認めざるをえません。

具体性のない指示=具体的なゴールを自らが描けていない

「円滑に業務引継ぎを行うこと」、「全社的に最善の形となるようにプロジェクトを進めること」、「お互いにとって最善となるような~」、こういったフレーズは綺麗なプレゼンテーションの文句となるでしょうが、実際の業務をマネジメントする時に連呼していたらその先には失敗があるような気がします。という自分が失敗をこうして重ねてきました…。

自らが聞こえのよい言葉を並べてロシア人スタッフに指示をしているとすれば、それは自らの中に具体的に目指すゴールのイメージが描けていない、ということに間違いありません。具体的なイメージを持った上で、自分はXXXのような形を描いているんだ、ここにもっていくために今抱えている問題を解決するために一つ一つ取り組んでいこう、そのためには~、と具体的な指示を与えることがマネジメントとして必要なことなんだと学んできました。

「なぜ私の業績評価がBではなくてCなんですか!?」

これも同じで、そもそも自分の中に明確に定義があるのか、厳密な定義づけは実際には難しいので、そうであれば自らが考えるBのイメージを定期的にスタッフに伝えてきただろうか、そう考えるとやはり自らがイメージをクリアに持っている必要がある、そう学習させられます。

さらには、課題に取り組む過程で出てくる想定外のアイディアを受け入れる準備ができていること。最終ゴールは、当初は自分のイメージしたゴールだったとしても、さらに別の人との協働により生まれるベターなアイディアを取り入れて行ける、考えていなかったサプライズを楽しめる、そんな人間としての大きさを持てるようになること、それが一生のテーマですね。先は見えませんがそんな風になってゆきたいです。今後も具体性を持った指示を出すためにも、スタッフへの指示には十分具体的か、Something like thatといった人によって異なったレベルの理解をしかねない言葉を避けること、業務の責任、Deadlineを明確にしているかなど、振り返ればいたって当たり前のことを身に沁みついてできるようになっているのか?毎回自らを客観的にみてゆくことにします。そして、分かっていても具体性をもったマネジメント実践のためには意識が必要であること、日頃から実践してゆくことの大切さを皆さんにもお伝えしたいです。

これらの点は国の違いは一切関係なく、世界共通のことなんですね。

[給与計算]出張旅費の計算 / Salary calculations : Business trip


前回の有給休暇の計算例に引き続いて、今回は出張旅費の計算式の一例を書き出しました。

出張旅費の計算

計算式は

過去12か月分の所得合計 / 過去12か月の勤務日数(カレンダー日数ではありません)

となります。

分母にあたる日数には、病欠(Sick leave / больничный)や有休休暇、他の出張にでかけていた際の日数はカウントされません。ボーナス取得も含まれる所得合計(分子)と分母の日数変動に応じてこの平均給与金額は毎月変動することになります。

貼付の画像はあくまで計算例です。額面100,000RUBのMonthly salaryをもらっているスタッフが1月に3日間の出張に出かける場合にはこの画像にあるように昨年12か月分のデータを用いて、現時点での一日あたりの平均給与を計算します。

最終的に計算された一日あたりの平均給与に出張日数を掛け合わせ、そこから源泉所得税の13%が差し引かれた金額がスタッフの口座に振り込まれる、というわけです。

日本と社会主義 / Japan and Socialistic state

本日18;30のモスクワ中心部から西側にあるFilyovskiy parkにて。モスクワ川が完全に凍っていました。いつも冬はここにきて市内の喧騒から離れ、遠くに車の行き交う音が聞こえるも静寂の中に身を置き、凍った川の上を歩くのを楽しんでいます。自然の偉大さを感じる瞬間です。

ロシア人の友人、タクシー運転手、ジムや仕事上で出会う方々との会話を通して彼らの持つ日本についての印象はなんだと思いますか。あくまで私の経験上ですが、主に以下の点です。

・原爆投下、そして、なぜ原爆を投下したアメリカとこうも仲良くやっているのか理解ができないという言葉(北方領土については、認識はありますし、日本に返却するなど論外、という思考は感じますが、こちらから訊かない限りほとんど会話にあがることがないように感じます)

・サムライ、Wabisabi(この名前のチェーン店をモスクワ市内を歩いていると見かけます)、天皇、ハラキリ、神道、日本食の美味しさとその健康への良さ、といった日本の伝統文化

・工業製品(車、電化製品)の品質の高さ(「ロシアは宇宙船、武器は作れても、一般市民に必要な車を作る能力がない」と自虐的な言葉も)。最近はSUMSUNG、LG、Hyundaiなどの韓国製品に圧倒されています。

・フクシマ(原子力発電所の爆発)とツナミ(ロシア語でもツナミ(Цунами)と同じ発音の言葉)

・規律を守る基準の高さ(日本に行ったことがあるロシア人の印象として、日本人が電車に乗るための列を必ず守ること、エスカレータやリフトに乗る場合も順番を守ることに驚きを隠しません。フクシマの際にも人が列を守って配給を待っていた、あの様子にも大変感銘を受けている様子をいつも感じます)

・街や公衆トイレの綺麗さ(これもロシア人の旅行者からよく聞きます、もちろんウォッシュレットも高い評価です)

・アニメ、ヤクザ、ムラカミハルキといった現代の日本固有の文化

といったところでしょうか。

今モスクワに住んでいて、今の日本とロシアを比べる時に「日本は世界でもとりわけ成功した社会主義国家だ」という論調に同感してしまうことがあります。日本人の“規律を守る”というのは美徳で大変貴重な特質ですが、あらゆる状況においても全員が規律通りに動いていたとしたら世界での国も企業の競争力もそがれてしまい沈みゆく一方です。間違っても規律を破ろう、というわけではありませんが、過度に規律を作り、それに人々が何が何でも従おう、それから逸脱する人間を排除してゆく社会になった時にその国や企業の将来の危うさを感じます。常に周りに自分を合わせること、目立たないように人と違う行動をすることを躊躇すること、その良さが行き過ぎると害に変わってしまう、そのバランスの難しさ。

日本が誇る“おもてなし”、あるいは年ごとに強化されてゆく内部統制システム。本来の目的を見失っていないのか?おもてなしする側もされる側も、内部統制を強化してゆく側も対応をする側も、両者がなんだか疲弊してしまうような過剰な状況になっていないのか?

そんな観点で日本を観察するよい機会となっています。

さて、ロシア人は会社のスタッフを見ていても抜け道を探り出すことに長けているのでは、と感じます。会社の規律を作っても、そうきたか…ちょっと待て、といいたくなるような行動に出てきて逆に尊敬してしまうことも。そんなしぶとさがあるからこそ国が混沌としていても、RUBの価値が対ドルでかつての半分以下になったとしても国が成長できるのかもしれません。逆に、今の日本はがつがつ行かなくてもそれなりの生活を送れる、まさに理想の社会主義国家となれる土壌が備わった、高いレベルにいるのかもしれません。どれだけその成功が各人の自己犠牲の上に成り立っているのかを考える必要もあるはずですが。

今、もしレーニンが生きていて日本を観たら何という言葉を発するのでしょうかね。それにしても、今のロシア人の若者の間では現在5月9日に戦勝記念日に行っているパレードがかつてはロシア革命記念日の11月7日に行われていたことも知らない人が増えているようです。スタッフに話を分かりやすく伝えようとソヴィエト連邦時代と今のロシアを比較して伝えても「XXXsan、私たちはソ連時代を知らないので何が言いたいことかよく分かりません。」と言われてしまいました。

ロシアの勘定科目一覧 / Russian account chart

ロシア人の経理スタッフと会計仕訳の話をすると、勘定科目名称ではなく、番号で仕訳の説明をされることが多くあります。

「お願いだから勘定科目で話してくれるかな?」といってもどうにもうまく理解し合えないことがあります。結局自分で勘定科目を理解しなければならないようです。そうはいっても、こうしてひも解いてみるとまだ完全に理解できていない部分も実際に多くあります。

今回、自分なりにまとめた主要な勘定科目表(Excel file)をアップロードしました。今後はできる限り詳細についても触れてゆきたいと考えています。

File link:Russian-Accounting-chart

試行錯誤のロシア人マネジャーの育成 / Russian staff managers development – trial and error

最新型モスクワの地下鉄車両にて。週末の朝にパシャリ。ここには写っていませんが、タッチパネル式の所要時間も表示してくれる乗換案内や携帯を充電できるUSB端子まで付いています。


ロシアの会社で駐在員として働くことの任務の一つに、現地スタッフの育成が含まれるはずです。そして、そのためにはロシア人マネジャーの成長がとても重要なファクターになると体感しています。

結果をすぐに求められること、スタッフを大事に時間をかけて育てる余裕がない中で、どこまで自分でやるべきなのか、どこまで口を挟まずに許容できるのか、その加減を見極めることに苦労しています。毎回が試行錯誤の連続です。

例えばロシアに自社商品を輸入して販売するために必要な、EACと呼ばれる認証。どの法律に基づき我々の商品が認証を得ることが要求されているのか、認証を得るためには何をすべきなのか、必要な商品カテゴリーは何か、所要期間はどれくらいか、輸入後に認証期限が切れてしまった商品を販売し続けても問題ないのか、など多くの質問が出てきます。そこで、「EACについて日本側も(ロシア人の)営業スタッフも日頃会話していれば分かる通りチンプンカンプンなので、理解を深めるために勉強会をしよう、そのための説明資料を作ってくれる?」とロシア人マネジャーに話したとします。

全くEACの理解がない日本のことを考えると、こちらはそもそもEACとは何か?というテーマから入って資料を作りたいと考えます。昔はГОСТというロシアの認証取得が必要であったが、今ではEAEUと呼ばれるユーラシア関税同盟が発足し、そこが定める認証が要求されるようになった…といったくだりです。一方、ロシア人マネジャーは、認証を得るために必要となる具体的なオペレーションフローだけに注目した説明書を作成するかもしれません。最初からお互いの考えるストーリーの共有をしておかないと、後で根本的に作業をやり直す必要もあるかもしれません。もちろん、こちらとしては、ロシア人マネジャーにこちらが考えるレベルでの広い視野で、日本側のことも踏まえて資料作成をしてもらいたい、それが普通だろう、と考えかねません。しかし、私の経験上はそう上手くいくことはまずありませんでした。(いや、今もスタッフと「こらっ、お前が何とかしてくれや。頼むで。」と格闘中です)

そのようなわけで、まずこちらで骨組みを作り込み、それに合わせてロシア人スタッフに内容を詰めてもらいます。そうすると、自分の望んでいるレベルに内容が近づきます。それは自分の望んでいるものであり自分もうれしいです。しかし、次に別のテーマでも同様の必要が生じたとき、再びこのプロセスを繰り返したとします。それがまた次も同様です。それは、マネジャーというよりも、ただのオペレーターの育成にすぎません。

XXX san、ドラフトを作成したのだけど見てもらえますか?XXX sanの指摘はいつもありがたく自分の資料内容をよりよくするのに貴重です、ぜひ今回もチェックしてください。」

そんな言葉はうれしいですが、自分の上司が最後はチェックしてくれるので“ある程度”納得できるレベルで作成すれば大丈夫、という意識がロシア人スタッフに根付いてしまうとどうでしょうか、いつまでたってもロシアの会社が自立できない、いつまでも日本人の上司がいるから彼/彼女に任せておけばいいでしょう、となってしまうかもしれません。

私にはロシアに進出している外資系企業での勤務経験がないため比較できませんが、日本の企業ならではの独特の慣習もあるはずです。そのような“ノウハウ”も把握した現地人マネジャーが定着してくれることは現地の会社の成長にとって重要なポイントに違いありません。

どなたかがおっしゃっていたフレーズをいつも思いめぐらしますが、マネジメントはキャンバスのサイズを決めて、そこの絵のドラフトを描き、それを部下に渡すこと。部下(この場合はロシア人マネジャー)はその範囲で自分の好きな色を使って絵を完成させることだ、と。つまりは、我々が何だかきれいな曖昧な言葉で、自分で具体的な完成イメージを持たずに「頼むで。」と言ってもダメなんですね。キャンパスのサイズ、絵の構図を自分で決めること。それは少なくとも駐在員の責務であると。というよりは、今自分がいるポジションの責務であると考え、それが出来るロシア人スタッフがいればその人に取って変わってもらってもよいのでしょうね。

まず、自分自身が具体的な完成形のイメージを持った上で具体的な指示を出すこと。しかし、それをずと続けることは危険であるということ。ロシア人マネジャーが自分の意図通りに動く“オペレーター”となってしまっていないだろうか?と問いただすこと。徐々に彼らのフリーで動ける範囲を広げてゆき、行く行くは自らのアイデアを出し、提案を出し、考えられる解決に向けた現実的な選択肢を持ってきてくれるようになっているか、そうなった時には、彼らの成長が大変微笑ましくなる瞬間になるはずですね。そんな瞬間がどれだけ増えるだろうか、それを目標にして日々ロシア人スタッフとギャーギャーやっています。