着任時に学んだ先輩社員からの教え / What I learned from a superior when I started working in Moscow

着任したときに先輩社員から教えていただいた教え。今でも思い出すことがあります。シンプルですが、仕事をするうえで大切なことを学びました。

1.言葉遣いに気を付けること。

これは自分自身の口癖でもあったのですが、着任したばかりの頃は、会話の中で「ぶっちゃけ」という言葉を乱発していました。「そのような言葉遣いは今後は止めたほうがよいよ。きちんとした日本語を話すように気を付けるように」と。管理部門を取り仕切る役割を担い、他社の上の立場の方々とやり取りが増える中で、会社の代表ともなる立場の人間が砕けた日本語を恥じることなく使うのは、ビジネスパーソンとして論外であり自覚を持つように、という意味であったと思います。現在、少々フォーマルなビジネス番組でも、会社の役職についている年配社員の口からもまれに聞くことがあります。そんな時、当時先輩社員に言われた言葉を思い出します。実際、聞こえのよくない言葉だなぁ、と。この教えは海外に赴任したからとりわけ必要、ということではなく、自分が日頃から利用する日本語の正しさを意識することの大切さを学ぶきっかけともなりました。一方で、相手のために丁寧で正しい日本語を書こうとするあまりに、結局何が言いたいのか相手に伝わらないということもあります。何度か読み返してからようやく、「もしかして、この人は自分にこれをしてほしいのか?」と。また、会話していても、「XXXってこうだったらいいんじゃないかな、どうかな」「いや、自分はかくかくしかじかのためこう思います。」と回答。…でもなんだか相手は腑に落ちない様子。…あれっ、つまり、これは自分の意見を尋ねられているのではなくて、「XXXはこうしてください」という指示なのかもしれない、と後から気が付くことも。なぜ直接指示してくれないのだろう…と思いますが、それは相手の気遣いなのかもしれません。綺麗な日本語≠分かりやすい日本語。相手を意識して使う日本語≠仕事で必要となるはっきりとした伝わりやすい日本語。それらの正しい使い分けの難しさ。言葉って難しいと感じるばかりです。

2.本社からの依頼と現地スタッフからの依頼が重なる時には、何よりもまず現地スタッフの対応を最優先すること

これは全てのケースに当てはまるわけではありません。ここでいうポイントは、本社からの依頼は多少締切に余裕があることが多い。一方で、スタッフからの問い合わせは喫緊の問題である場合が多い。また、本社の場合には、関係者の中には着任前に顔を合わせたことがある知り合いも少なくない場合もある。そうすると、こちらの都合も多少考慮に入れてもらえるであろう。そうであれば、期限を守ることが難しい場合には、まず本社には待ってもらい、現地スタッフからの依頼を先に解決すること。その結果、現場で起こり得る問題を未然に防ぐことにもなりますし、現地スタッフからの信頼を得ることもできます。特に着任したばかりの頃に、いかに早く現地スタッフからの信頼を得られるかは重要だと思います。これは私自身が最初の頃に失敗してしまった経験ですが、現地スタッフに仕事で認めてもらうことは、率先してロシア語で会話をしたりメールをすること、ロシア文化を積極的に学んで話題を振ったりしながら相手と親しくなることではない、と考えています。言葉はあくまで手段の一つでしかなく、真に仕事が出来る人は言葉はつたなくとも、意思決定、資料のまとめ方、ダメなことはダメと言える意思表示(たとえ説明がたどたどしくとも)などからスタッフにはっきりと伝わります。人は結局仕事ができるか、できないかで判断され、ロシア語ができるか、ロシア文化を好きかどうかはその次の問題だと思われます(といっても、ロシアの管理部門の仕事をするにあたっては、ロシア語ができることは大いにメリットがある、という事実に間違いはなさそうです)。親しみのあるスタッフの笑顔の裏で、相手はどのように私自身を評価しているか、その本当の顔を意識し続けたいものです。

日本というものがロシアでも高く評価され、日本人や日本の文化製品に対する敬意も高いことを考えると、むしろ、私たちはもっと日本という国や文化に高い誇りを持ち、もっと自国の文化を知ることが重要である、と考えさせられました。例えば、歌舞伎。ロシアに行くまでは全く関心もありませんでしたが、一緒に旅行したロシア人から「絶対に行きたい」と言われ、なんとかチケットを予約・購入。初めての歌舞伎があれほどまでに面白いとはかつては考えもしませんでした。入って1時間くらいで途中退散かと思っていたら、気が付けば(5時間くらいでしょうか)、最後まで満足に楽しんだ時間となりました。