人材採用時に感じる”何か”と折り合いをつけることの難しさ / Difficulty in reconciling with “something” that you feel when hiring new staff

採用活動をしていると、採用担当として「この子は頑張っている、ぜひ採用して仕事を通じて成長してもらう機会を与えたい」という気持ちが芽生えるのは自然のことと思います。ただし、面接の部屋に応募者が入ってきた時、面接の部屋に入った時に腰かけている応募者を見たときに”何か”を感じる時にはやっぱり”何か”理由があります。

ロシアでの勤務時代、色々な若い女の子たちがやってきて(管理部門には女性スタッフの応募が多いために自然と女性スタッフばかりでした)面接をしている中、面接で自己アピールする姿を見ると、「なんだか、今すぐには仕事を任せることが難しいかもしれないけれど、もし自分がここでこの女性に働く機会を与えれば、きっとこの子の将来にプラスとなるかもしれない。」と思うことがありました。なにもやましい気持ちはなく、純粋に職を得ようと頑張っている姿を見てそう思うのですが、会社は営利目的で成り立っていることをまず忘れないようにしたいと思います。

会社の規模が小さい間は、とにかく戦力となる人材が必要となる。頑張っている人たちにチャンスを与えることは必要だけど、それは今ではなくてもよいのかもしれない。会社としてしっかり基盤が整っているのであればまだしも、まだまだこれからという時には、しっかりと基盤を急いで整備しなければならない。小規模の会社にはそれなりの正解があります。これは日本でも全く同じと思いますが、日本と海外で違うのは、日本人である自分自身が就職希望者のロシア人と対峙すると、同じ日本では分かるであろう言葉以外の部分のものを判断から見落としてしまう可能性がある、ということ。ロシア人のベテラン社員からは「最終的な判断は日本人マネジメントだけではなく、私たちロシア人も判断させてください。」と言われていました。それは正しい意見であったと思います。実際、駐在員が中心となって採用を進め、周りのロシア人マネジャークラスの意見を求めずに採用を決めた場合の結論は、悪い人材を採用してしまったケースが多かった印象を持っています。

私が後から振り返って、採用を失敗してしまったなぁ…と反省するのは、”何か”がどことなく引っかかった人であったように思えます。面談ではそれほど気にならなかったけれども、後々見てゆくと感情のコントロールがうまくゆかずに周りと上手く溶け込めない人。面接でプレゼンをしてもらうのですが、どうも物悲しく疲れてしまっている人。その人曰く”知識も経験も十分にある”という自己中心的で、小さな会社なのに周りとのコミュニケーションを取らずに自分の世界にこもっている人。後で聞いたところでは、母親が連れてきた父親が3人変わっていて家庭の中で大変な思いをして人生を過ごしてきたということでした。彼女は人を信じる、ということが無かったように思えます、仲間というものから外れていていつも周りを信じることなく一人で何かと闘っていたような、そんな人でした。社内の新年パーティーの時には一人で寂しそうな姿で会場を後にしていった姿を今でも忘れられません。逆に彼女からすればいつも食事も抜きでずっと朝から晩まで仕事しかしていない私の姿を、寂しそうなかわいそうな人、と思われていた可能性は高いのですが。(余談ですが、私の職場の経理スタッフの女性たちは、前日に最後まで残って残業していた女性が翌日も一番に来て仕事をしていると、後からやってきた同僚は「エレーナ、なんでもういるの?まさかオフィスに泊まったの!?」なんて冗談を言い合って笑っていたものです)

ロシアで正社員採用の場合の試用期間は会社代表者、支社トップ、経理責任者といった重要なポジションのスタッフの場合は6か月、それ以外の一般社員の採用の際は3ヶ月。特に3か月の試用期間でその人の人間性やスキルを見極めることは困難です。当時の知り合いの会社では、3か月経過してからは豹変し、とんでもないことになってしまった、と嘆いていました。それでも、3か月間で”何か”違うな、と感じることは可能です。その時に大変悩ましいのは、「このスタッフはベストではないけれど、今ここでこのスタッフを採用しなければ人が足りない。でも、このスタッフを今採用すると、後で何かあった時には面倒なことになりそうだ…」その葛藤です。採用する場合には絶対に欲しい人材と出会うまでは採用してはいけない、という人事のアドバイス本を読んだことがあります。現実の世界では、小規模の会社では、頭では分かっていてもなかなか思い描くようにはいかないことも多々あるのが真実ではないでしょうか。

社員は、「退職します」と辞職願いを出してから2週間で会社を去る権利がある。会社側はこの突然の連絡を受けて、急いで採用活動を行う必要が生じる。そう簡単に人は決まらないものです。退職するスタッフとの関係が良好であれば、退職する時期をもう少し待ってもらったり、退職した後でもサポートしてもらったり。その後も電話で連絡取り合ったりして過去のことを尋ねるケースもありましたが、なかなかすべてのケースでそう順調にゆくとは限りません。小さな会社で人の数をぎりぎりで乗り切っている会社にとっては、突然の退職→大急ぎの採用活動→採用者が見つかるまでの欠員部分の仕事を他のスタッフの協力のもとでカバーする、これらの流れが毎回大変でした。

日頃からどれだけ仕事が属人的にならないことを避けられるか。会社のルールを整備し、文書化しておくこと。採用時には注意すべき点を漏らさずにステップを踏むこと。勤務しているスタッフとは良好な関係を築き、いざという時には協力してもらえること、人材紹介の会社と定期的な連絡を取り合い、良好な関係を保って自分の会社の雰囲気や必要とする人材を理解してもらう努力など。日頃からの総合的な努力が常に求められていることを、突然の”災害”が起こった時にどれだけ準備ができていたかを知ることになります。毎日一つ一つの自分が行う仕事にきちんと向き合ってゆくことの大切さを知る機会にもなると思います。こう伝えている私自身が出来ていたとはとても言えず…当時の反省点を共有し、どのように次にいかすことができるのか、同じ場面に遭遇する人にとって同じ失敗をしてもらいたくない、という気持ちです。やっぱり採用はとても難しい。